ADHDでも大丈夫。家事や仕事がうまくいかない人に役立つ「段取り力」とは?
家のなかは散らかり放題で、料理もやる気はあるのに失敗ばかり。子どもにあたりちらしたり、衝動買いして後悔したり、仕事をすればミスや忘れ物だらけで、いいかげん自分がイヤになる……。こんな問題で悩んでいる人は、自分を責める前にADHD(注意欠陥・多動性障害)の可能性を疑ってみたほうがいいかもしれない。
最近、モデルの栗原類さんが自身の「注意欠陥障害(ADD)」公表するなど、最近はメディアでもよく取り上げられるようになり、発達障害に対する理解が深まってきた関係で、自分がADHDであることに気づく大人が増えている。特に女性の場合、育児や家事などADHDの人にとってハードルが高いことの負担が大きく、日々の苦しみを誰にも理解されないまま生きづらさを感じている人も多いという。
そういう人が少しでも楽に安定した生活を送るための具体的なノウハウを紹介している本が『「大人のADHD」のための段取り力』(講談社)だ。著者は1997年に『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を上梓し、日本ではじめて本格的にADHDを紹介した医師の司馬理英子さん。
「段取り力」というと、物事を順序立ててテキパキこなすことをイメージするかもしれないが、このタイトルの意味は少し違う。本書ではADHDの特性である「目の前のことしか見ていなくて失敗する」点に注目。その前後で「何をしておけばうまくいったのか」という点を洗い出し、それぞれの点と点をつなげることを「段取り力」としている。
その段取り力を身につけるためには、(1)時間の管理、(2)ものの管理、(3)プランニング、(4)記憶の補強、(5)(気持ちの)持続力、の5つの課題をまず意識すること。
「いきなり5つの課題なんてムリ」とハードルが高く感じられるかもしれないが、その後に続く具体的なアドバイスはとてもわかりやすく、誰でもすぐに真似できるものばかりだ。
ADHDの人によくありがちなのは、最初はやる気満々で目標を立てるのだが、頑張り過ぎて気が散ったり、途中で限界を感じたりして中途半端に終わること。そして理想の結果が出ないと自分はダメだと思ってしまう。そこをまず変えるためには、完璧を目指さないことだ。本書では、75点ぐらいできれば上等! と思って、ゆるめの目標設定にすることを薦めている。そのうえでやるべきことは、それぞれの家事に当てる時間を書き出して平日と週末のスケジュールをざっくり作ること。「いつか使う」はないと思って不要なものを処分すること。ADHDの人は「短距離ランナー」なので、部屋を1カ所ずつスペースで区切って短時間で片付ける習慣を身につけること。家事も仕事でも、一気にすべてをやろうとすると続かないので、やるべきことを細切れにして途中で休憩を入れることも大事だ。また、料理は好きだけどうまくいかない人は、最初に材料がそろっているか確認する。献立は2週間ぶんをざっくり決めて買い物の日を決める。あらかじめ材料がそろっていて調理するだけの市販の食材宅配サービスを利用するのもいいだろう。
ADHDの人は失敗したときにくよくよしやすい傾向がある。感情のコントロール法やストレスを解消する方法までカバーしている本書を読めば、今まで自分が苦しんできた原因と対策を冷静に考えることができるはずだ。文=樺山美夏
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