収入がないと何も言えないの? 専業主婦の葛藤を描いた話題作の著者に聞く

—これまでのほのぼのとした育児ブログとずいぶん違う印象の作品ですが、「ふよぬけ」を描いたきっかけは何なのでしょうか?
構想自体は6年前くらいからありました。
よく実話かと聞かれるのですが、この話は私の経験や日頃考えていることをもとに話を構成したセミフィクションです。なので、完全に実話ではないのですが、似たような体験をしてきました。夫から心ない言葉をかけられたり、納得がいかないけど言い返せなくて辛かったりしたときに、いつか描いてやろうと思って心に溜めていたことを吐き出した作品です。
「ママの求人」さんから連載のお話をいただいた時、最初は家族の楽しいエピソードを依頼されたのですが、私からこの構想を形にしたいとご提案したのがきっかけです。
実際に連載が始まると、ネタを出しているときなんかは当時のことを思い出したりして、けっこうつらかったですね。白髪が増えて美容師さんに指摘されたり(笑)

—大きな話題になったのは堀江貴文氏のリツイートがきっかけでした。その時のことを教えてください
「ママの求人」にアップ後、自分で作品に対する皆さんの反響が見たくてツイッターを見ていたら、堀江さんが「これはひどい」とツイートされていたことに気づきました。それに対して作品のコメントがたくさんついて、今までにないくらい話題になっていてびっくりしましたし、インフルエンサーの力ってすごいなと純粋に感動しました。
私のフォロワーさんは、ほとんどが育児中の女性だったのですが、その枠を超えて男性にも読んでいただけるようになったのは堀江さんのおかげだと思っています。
同時に、私に対してもいろいろな反響が届くようになりました。おもしろいと思ったのが、「自分もそうです」とももこに共感する方がいらっしゃる一方、夫つとむに共感し、「主人公はワガママ」「甘い」など、ももこの考え方や生き方について批判する方も相当数いたことです。
この作品で出てくる夫・つとむは、悪者ではありません。ひたすら自分が正しいと思う道を、疑いを持たずに真面目に生きている人なんです。だから、つとむに共感する人がたくさんいらっしゃることにも納得感がありました。

—印象的なエピソードがたくさんある作品ですが、特に思い入れのある箇所があれば教えてください。
家族を舟に例えて、ももことつとむが話し合う場面です。これは実際に我が家で起きた夫婦喧嘩が起きた時、夫が例えた話です。
つとむは、仕事が好きじゃない人。でも家族のために働くのが自分の役割だと思っているので、一人で家族に対する責任を全部背負って、ボロボロになりながら毎日仕事に行く。
だから、「自分が犠牲になっているおかげで家族が生活できているのに…」という思いが強いんですよね。

一方ももこは、好きなことを仕事にしようと努力していた人。仕事に対する価値観が根本的に違う。どっちが良くてどっちが悪いという話ではないのに、それぞれの立場で色んな感情が湧いてきて、ややこしくなるんですよね。

こういう衝突は結構多くのご家庭でもあるのではないでしょうか。
この言い争いを機に、ももこの気持ちが振り切れて、行動に移していく場面になっていきます。
—ゆむいさんご自身は、現在は実際に扶養を抜けられているとのことですが、何か変化はありましたか?
もともと、高校生から絵の仕事がしたい、絵でお金を稼ぎたいという気持ちがありながらうまく稼げず、親か夫の扶養に入ってきました。なので、「やっと!」という気持ちが大きいですね。
子どもの頃から親からは「どうせ女は一人で生きていけない」「波風を立てずに生きていくのが一番」と言われ、美術教師からは「絵で食べていくなんて無理」と言われながら育ったので、「できたじゃん!」と思っています(笑)
夫には及ばないですが、とにかく前向きに毎日過ごせています。

本当は、夫婦は稼ぐお金の額に関わらず対等であるべきだと思いますが、私はやっぱり自分が完全に夫に養われていることで、言いたいことを封じられてきたので、今ようやく言い返せるようになったな、と感じています。
「扶養から抜けたいと思っていたけど、お金の問題じゃなくて、自信が持ちたかったんだ」ということにこの作品を描きながら気づいたんです。なので、作品の中でも大切なメッセージのつもりで描いています。ぜひ見ていただきたいです。
—読者の方に、何か伝えたいことはありますか?
一番描きたかったのは、働くことで自信を取り戻した一人のママの姿です。
私はこの作品で専業主婦という生き方を否定するつもりは全くありません。
でも、もし今くすぶる気持ちを持っている方がいるのであれば、一歩踏み出す後押しができればいいな、と思っています。
それから、舟の話で出てくる「二人で自由になる」という表現もキーポイントで、妻だけでなく夫も、様々な抑圧から解放される手段を考えるきっかけになればと思います。
今小学1年生と幼稚園児の子どもがいますが、この子たちが大きくなってこの本を目にすることがあったら、その時には「こんな時代があったんだー」と思えるように世の中が変わっていてほしいですね。
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