ついついあれこれ言いたくなってしまう…! だけど子どもの心には残らない/子どもに本当に伝わる言葉がけ(5)

#育児・子育て   
うちの子がうまくいく言葉がけ

『子どもに本当に伝わる言葉がけ』5回【全8回】


子どもが話を全然聞いてくれない…。そんな悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
教育関連の著書多数、「小川大介先生の子育てよろず相談室」でもおなじみ、過去6000回以上の相談を受けてきた教育家の小川大介さんは、実際に親御さんから「遊び優先で、宿題をなかなかやらない」「注意しても、右の耳から左の耳へ抜けていき、同じことを何度も言っても変わらない…」といった相談を非常によく受けているそうです。

小川先生によると、子どもへの言葉がけのポイントの9割は「子どもを観察すること」で、あと1割が「言い方を変えること」と語ります。
子どもとの関わり方を見直すことで言葉がけのポイントが見えてくる、小川大介著『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)から、「ついついあれこれ言いたくなってしまう…! だけど子どもの心には残らない」をお送りします。

※本作品は小川大介著の書籍『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』から一部抜粋・編集しました

「どう言えば動いてくれるか」は子どもの状況によって異なる

親御さんたちと話していると、「どんな子どもでも、すぐに動いてくれる言葉」を探し求めている方が、少なからずいらっしゃるような印象を受けます。

でも残念ながら、そんな魔法のような言葉はありません。何を言えば動くか、動けるかというのは、タイミングや子どもの内面といった、子どもの側の状況によって異なるので、誰に対しても一律に有効な言葉というものはないからです。

身近な例で言えば、子どもにあいさつをきちんとしてほしいと思ったときの関わり方。その子の中にすでに「あいさつはちゃんとしたほうがいい」という知識があるなら、朝のあいさつをしても返事がなかったとき、親が「あれ?」と言うだけで、「おはよう」と言い直すことができます。

一方、あいさつの必要性がよくわかっていない子には、「相手と目を合わせて、『おはよう』って言うと、お互い気持ちがいいよ」などと説明する必要があるわけです。

言葉がけの本を読んで言葉のストックを増やすのはもちろんよいことですが、その中のどの言葉が、わが子に効果的なのかは、それぞれのご家庭で探っていただくしかありません。

でも、難しく考えなくて大丈夫です。ああしよう、こうしようとあらかじめ作戦を立てるより、「今日は素直に言うことを聞いたな」と思ったときに、「どうしてだろう?」と理由を振り返るようにするのが近道です。うまくいった事例から「うちの子がうまくいく言葉がけ」の経験をどんどん増やしていくことがコツです。

あれこれ言う回数を半分に減らしてみる

「なかなか言うことを聞かない」と口にしがちな親御さんの特徴の1つは、子どもにあれこれ伝えすぎている、ということです。

あれこれ言う回数を半分に減らしたうえで、「今、ママ/パパが言ったことの理由はわかってくれてるかな?」とか「いつからやろうと思った?」などの問いかけをはさむようにすると、子どもの聞いてくれ方がずいぶん変わります。

あれこれ言う回数を減らしたほうがいい1つ目の理由は、人はあれこれ言われると防御態勢に入ってしまうからです。

たとえば、上司や知り合いがお決まりの昔自慢を話し始めたら、「ああ、またその話か」と聞き流してしまうことがあるかと思います。それと同じで、注意や指示を何度も繰り返されると、子どもはスルーする態勢に入ってしまいます。言えば言うほど心に残らなくなるのです。

もう1つの理由は、あれこれ続けて言われると、1つの話を聞き終えても、また次の話が耳に入ってくるので、自分事としてじっくり考える時間がなくなるからです。

たとえば来客があるので部屋を片付けてほしいという場面。「5時にお客さんが来るからそれまでに片付けなさい」という伝え方では子どもがすぐに動いてくれず、親御さんが5時間際に「早く!」と子どもを再度急き立てるパターンになりがちです。

そうではなく、「5時にお客さんが来るよ」で一度話を切って、「片付けにどのくらい時間がかかりそう?」と問いかけをはさむと、子どもはそこで初めて自分事として考え始め、「何時までだっけ?」と聞き返してくるようなことがよくあるのです。

伝えたいことがあるならば、まずは子どもに聞きやすい態勢をとらせてあげることが大切です。あれこれ言う回数を減らすのも、聞きやすくする方法の1つです。

Profile

小川大介
(おがわ だいすけ)
教育家。見守る子育て研究所 所長
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書・監修多数。

著=小川大介/『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)

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