三男の「パパについていきたい」宣言!現役Jリーガーが子連れ単身赴任へ/大久保嘉人 現役Jリーガー主夫(1)

#くらし   
 三男の橙利君がまさかの「パパについていきたい」宣言!?

『俺は主夫。職業現役Jリーガー』1回【全6回】


2021年11月に引退を発表したサッカー界のレジェンド大久保嘉人さん。サッカー人生に終止符を打つ場所として選んだのは、プロとして一番最初に所属したチーム・セレッソ大阪でした。
2021年1月にセレッソ大阪に移籍が決まり、単身赴任での大阪入りをすぐさま決意。 「パパは大阪で一人で暮らすからね」と話をすると、三男の橙利君(9歳)がまさかの「パパについていきたい」と宣言する予想外の展開! 家族全員が仰天したものの、三男の決意は揺らがず、本当に息子を連れてのプロサッカー選手&主夫という二足のわらじ生活がスタートして――。

大久保嘉人著『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』(講談社)から、「三男の「パパについていきたい」宣言!現役Jリーガーが子連れ単身赴任へ」を紹介します。

※本作品は大久保嘉人著の書籍『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』から一部抜粋・編集しました

TEAM OKUBO


引退まで考えたシーズンの終わり、突然決まった古巣復帰と単身赴任

一番最初に引退を考え始めたのは、2020年の7月か、8月くらいやったかな。どこかと試合した後、ホテルの部屋で「もうやめよかな」ってずっと考えてた

けど、やっぱ波がある。やめようと思うときと、やっぱもうちょっとやろうと思うときと。ケガでの離脱もあったし、点を取れてないシーズンなんて初めてやったから。波があるってことはまだやりたいってことかなって思ったり、けど「引退」って言葉はずっと頭から離れなかったね。

憲剛さん(中村憲剛・大久保が3年連続得点王に輝いた川崎フロンターレ在籍時の盟友。2020年シーズンをもって現役を引退した)から電話がかかってきたのは、ちょうどやめようと思ってた時期やった。10月に入ってからだったと思う。

「今シーズン限りで引退をする。もう決めた」と憲剛さんから告げられて、驚いた。けど、それを聞いて、「じつは自分もちょっと引退を考えてるんだよね」と、俺の気持ちを伝えてみた。そしたら

「何言ってんだよ。まだ、お前はやれるよ。だから絶対やめるなよ

って言ってくれて。

「ああ、そんならもうちょっとやろうか」って気になった。

その後すぐやったと思う。セレッソからオファーが届いたのは。
セレッソは、俺がプロとして一番最初に所属したチーム。22歳で最初にセレッソを離れたときから、「最後はセレッソでやりたい」って気持ちがずっとあった。それはただ自分が勝手に思ってただけなんやけど、どこのチームに移籍するときもずっと抱えてた思い。

そんな、特別に思い入れのあるチームからのオファー。

「やろう」

即決した。

まさかの三男「パパについていきたい」宣言

 三男の橙利君がまさかの「パパについていきたい」宣言!?

年内に契約がまとまって、長男の碧人には先に言った。次男・緑二や三男・橙利の小学生チームはすぐにしゃべってしまうから、ギリギリまで黙っていた。
1月の上旬に移籍の発表があって、1月22日からチームが始動するから、前日の21日に大阪に行くことになった。

「パパは大阪で一人で暮らすからね」

それを伝えたときやった。橙利がいきなりこう言い出したのは。

「俺も行く」

家族のみんなが耳を疑った。

「は? おまえ何言ってんの」

けど、誰も本気にせんかった。理由を聞いたらね、なんて言ったかな。「パパと行きたいから」やったかな。

俺は「いいよ」って答えた。こんときは俺もなんも考えとらんかった。「いざ行くってなったときには〝やっぱり行かない〟って言うやろな」って思ってたから。っていうか、それを期待してた。俺は。
緑二に「おまえも来たい?」って聞いたら、「いや、俺はいい」って。

嫁の莉瑛も「絶対に無理だし、一時の感情で言ってるだけだから、そのうちコロッと変わるだろうね」と思ってたみたいやね。

ところが、1週間経っても2週間経っても、まったく意志が揺るがない。俺がキャンプインしても、大阪に戻ってきて、いよいよシーズン開幕だってなっても気持ちが変わらない。その頃になってようやく、俺も莉瑛も本気で驚き始めたというか、準備を始めなきゃいけないんだなっていう実感が湧いてきた。橙利の本気が親を動かした形やね

それにしても意志が固かったな。本当に来るのかよってマジびっくりした。 兄弟たちも「おまえ、マジで行くの?」って言ってたし、莉瑛も周りの人に「橙利くん、本当に行くの?」って相当聞かれたらしい。チームの関係者とかもみんな驚いてたけど、反対する人は誰もおらんかった。

うちの子どもたちの性格をサッカーのポジションで例えるとね、長男の碧人はディフェンスタイプ。センターバックやな。
もともとやさしいんやけど、大きくなって、よりいろいろわかるようになって、母親の莉瑛を助けてる。で、弟たちの悪いところを指摘する。キャプテンとまではなりきれてないけど、「おまえら、そんなのもできねえのか」みたいな感じで上から、あ、後ろからか。指示を出す。けど責任感はそこまで持ってなさそうな感じ(笑)。

次男の緑二は中盤。ミッドフィールダー。器用だし、周りが見えてるし、なんでも要領よくこなせる。
三男の橙利はマジのワントップ。FWっていうか、ゴリゴリのワントップ。
四男の紫由はまだわからんね。楽しみやけど。んで、莉瑛は監督。

みんな俺に似てるとこあるんやけど、一番似てるのは橙利かなー。わかんない。チャレンジするところとか、あんまり考えないで飛び込むところとかは俺に似てるかも。
今回の「一緒に行きたい」発言がまさにそれ。多分、あんま何も考えとらん。

結局、橙利の「絶対行きたい!」って気持ちは最後まで変わらなくて、ダメって言うかなって思ってた莉瑛も反対しなくて、学校の年度も途中やけど、3月14日にこっちに来ることになった。

橙利は大阪来るの、すげー楽しみにしてたみたい。普段、莉瑛の言うことなんてあんま聞かんけど、「言うこと聞かないと大阪行けなくなるよ」って言うとちゃんとやる、みたいな感じやったらしいから。びっくりやわ。

俺も役所に行って、橙利の学校に出す書類の手続きとかして。ほかのことは莉瑛が全部やってくれました。

===
まさかの展開に家族も驚きながら、連れていく決意をした大久保嘉人選手。
子どもの気持ちを尊重する姿勢、私たちにもたくさんの学びのポイントがありそうです。


著=大久保嘉人/『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』(講談社)

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