家事力ゼロだったJリーガーが息子と二人暮らし。料理、洗濯、掃除、宿題…現実はやることいっぱい/大久保嘉人 現役Jリーガー主夫(2)

#くらし   
 三男の橙利君にとっては、大阪での二人暮らしが「いい経験」になるはず

『俺は主夫。職業現役Jリーガー』2回【全6回】


2021年11月に引退を発表したサッカー界のレジェンド大久保嘉人さん。サッカー人生に終止符を打つ場所として選んだのは、プロとして一番最初に所属したチーム・セレッソ大阪でした。
2021年1月にセレッソ大阪に移籍が決まり、単身赴任での大阪入りをすぐさま決意。 「パパは大阪で一人で暮らすからね」と話をすると、三男の橙利君(9歳)がまさかの「パパについていきたい」と宣言する予想外の展開! 家族全員が仰天したものの、三男の決意は揺らがず、本当に息子を連れてのプロサッカー選手&主夫という二足のわらじ生活がスタートして――。

大久保嘉人著『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』(講談社)から、「家事力ゼロだったJリーガーが息子と二人暮らし。料理、洗濯、掃除、宿題…現実はやることいっぱい」を紹介します。

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セレッソ大阪に所属が決まり、単身・大阪へ行くつもりだった大久保選手。三男の橙利くんが「俺も行く」と言い出し家族は驚きます。最初は「やっぱりやめる」と言い出すのではと思っていた大久保夫妻ですが、三男の意志が固かったこともあり、その意志を受け入れることに。橙利くんは学校の年度も途中だった3月14日に大阪へー。
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※本作品は大久保嘉人著の書籍『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』から一部抜粋・編集しました

不安はなかった、何も考えてなかったから

俺は「来たいならいいよ」って感じやった。大変にはなるだろうけど、一人より全然いいから。橙利がおってくれたほうが。

橙利も何も考えてなかったと思うけど、俺もマジでなんも考えてなかったね

自分がやるべきこととか整理もしてないし、学校のことや行事のこともまったく頭になかった。普段の生活と同じで、普通にやればいいと思ってただけ。

でも実際に生活し始めてみたら、ご飯もそうやけど、洗濯も掃除も大変。あと宿題も。「どうにかなるやろ」って軽く考えてたけど、現実はすげーやることいっぱい。弁当もあるし、学校のこともあるし、「うわ、こんなことまで。そうや、あったんや」って思いましたね。

橙利のサッカーの送り迎えとかも、毎回ではないけどできるときはやってる。こっち来て、中学校ぶりくらいに自転車乗ったわー。家の周りにもサポーターの人多くて、自転車乗ってるときにあいさつされたり(笑)

でもね、なんも考えてなかったからよかったんやと思う。逆に。やらなきゃいけないこととか考えてたらイヤになるし、「大変だから来るな」ってなってたかもしれん。

俺は一人だとさみしいんですよ。一人で飯とか食うの苦手やし、友達で誰も行く人がおらんかったら、碧人(長男)を誘って二人で行ったりする。碧人なら話も合うしね。

横浜の家はいつも騒がしいくらいににぎやかで、にぎやかというよりむしろ、すげーうるさい。男4人兄弟。莉瑛は大変だろうけど、俺はめちゃくちゃ楽しい。だから家族と離れると物足りなくて、単身赴任だったら絶対さみしかっただろうなと思う。一人やったら、ずっとシーンとしてるし。橙利がおるだけで全然違う。いてくれてよかった。

そんなんだから、橙利と二人暮らしっていうのが現実的になっても、不安なんてまったくなかった。むしろちょっとワクワクしてたわ。
料理とかほとんどしたことないけど、何作ろうかなーとか。俺が作ったご飯を橙利が食べるって考えると、どんどん楽しくなってきたんよね。

9歳の挑戦、これは絶対いい経験になる

 三男の橙利君にとっては、大阪での二人暮らしが「いい経験」になるはず

橙利の成長を考えてもワクワク感があったね。俺が現役の間に二人で暮らすなんて、まさかと思うやろ?
のちのちね、橙利はこのことを一生覚えてるだろうから。これはマジでいい経験。こんなタイミングじゃなきゃ絶対できんから。

この経験で橙利が何をつかむのか、それを考えると楽しみで仕方ない。
まあ俺もなんやけど、橙利も、横浜におったときは家で何もせんかった。だから一人じゃ自分のことも何もできんかった。

でも今はやらないとダメやから、自分でいろいろやるようにさせてるし、だんだんやれるようになってきたな。
水筒に水を入れたり、学校の準備したり、サッカーの準備して一人で行ったり。

「レベル低っ!」って思うかもしれんけど、今まではそういうのもできてなかったから。めっちゃ大きな進歩や。

家族と離れて暮らすってこともそうやし、横浜から大阪に来て大きく環境が変わるってことも、いい経験や。まだ小さい橙利にとって、関東から関西へってのは、海外に行くくらいの大きな変化やと思う。文化が全然違うから。

俺は中1のときに親元を離れた。橙利は9歳、小3の終わりに家族の元を離れて、これから何がどう変わっていくかな。まあ俺はおるけどな。

あいつね、大阪に引っ越してきたばっかの頃、寝てるときにトイレ4回くらい行ってたんよ。横浜でも一緒に寝てたから、もともとトイレが近いっていうのは知ってたんやけど、「こいつ4回も行くのか」って思って。

2段ベッドの下段に一緒に寝てて、橙利が壁側。俺を通り越していかないとトイレに行けないし、トイレしたいときってわかるんよね。ちょっとムズムズしてるから。
「トイレ行きたいけど、眠いし、面倒くさいから行かない」。多分そんな感じやろうけど、漏らすかもしれんやん?漏らされたときには俺、無理だから。洗濯とか。

だから起こして「行け!」って。それ夜中に4回やってたんすよ。

しかもね、今は夜でも一人でトイレに行けるようになったけど、最初はね、慣れない家で心細いみたいで「ついてきてほしい」って言うんよ。だから俺、トイレの前で立って待ってました。「寝る前に行けや!」って思いながら。

こっちに来て少し経ったくらいのときに莉瑛にも相談したかな。慣れない環境で不安だったのかもしれん。最近はだいぶ減ってきたからよかった。

家族の話とかしてると「ああ、会いたいなぁ」とか、たまに言うときはある。最初の頃は「帰りたいなぁ」ってさみしがったこともあって、「お前が来るって言ったから。これもいい経験だろ」っていうふうに言ってた。

最近じゃ、俺の遠征中にうちのおかんと二人で留守番してたとき、莉瑛が橙利に「大丈夫?」って電話で聞いたらしい。「横浜に帰ってきたいんじゃない?」みたいな。そしたら「いや、ないよ。これは俺の挑戦だから」って橙利が言ったらしくて。

帰りたい気持ちもちょっとはあるんやろうけど、橙利なりにそれは言っちゃいけないって思ってるんやろな。自分から言い出したことやから。

莉瑛や兄弟がこっちに来るときも、別れるときはもちろんさみしそうやし、頻繁に会ったら余計つらいっていうのは、橙利のほうがわかってる気がする。
遠征中の俺からの電話をすぐ切りたがるのも、もしかしたらさみしくなるからかもしれんなー。

著=大久保嘉人/『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』(講談社)

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