日本のパスタは唯一無二!イタリア人のマッシさんが語る、日本のパスタ文化への驚きと感動(5)

noteで驚異の95万PVを記録した「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」が話題の日伊通訳者、マッシミリアーノ・スガイさん。
日本の伝統料理からB級グルメ、チェーン店、コンビニスイーツ、冷凍食品まで。イタリアのピエモンテからやってきたマッシさんが、日本で出会った美味しい食べ物について綴った書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』は、食の感動体験をまとめた愛情たっぷりのエッセイ集です。
この書籍から、今回はマッシさんによる「日本のパスタは唯一無二」についてご紹介します。マッシさんの感動と驚きに満ちたエッセイを読むと、私たちがいつも当たり前のように食べているあの料理が、何倍もおいしく感動的に感じられるはず!
※本作品はマッシミリアーノ・スガイ著の書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』から一部抜粋・編集しました。
日本のパスタは唯一無二

イタリアの食事といえば、「パスタ」だ。イタリア人は毎日、毎食パスタを食べるものと思われがちだが、「違うよ。そんなことないよ」とも言い難い。パスタの種類とその作り方、そして食べ方は山ほどあって、同じパスタでも全く別の料理になる。だから、僕には「パスタを食べるプロ」だという自信があったが、日本に来たらアゴが外れるほどの考えられないパスタのアレンジに出会った。
日本でパスタについて驚かされることが数々あった。まずは日本でもパスタ料理が多く食べられていることに驚いた。日本人の口に合うらしく、毎日ではないけれども、パスタをよく食べることを知って、イタリア人との共通点だと感じてうれしくなった。そして、日本に来る前には発想がなかったパスタを見て、実はいまだに驚くことが多い。どんな日本風アレンジもおいしくて、ニコニコしながらペロッと食べてしまう。
最初に出会ったパスタには非常にカルチャーショックを受けて、食べる勇気が出るまで時間がかかった。スパゲッティーにしょうゆ、のり、大根おろしという今までの僕の人生では存在しなかった組み合わせのソースだ。
「イタリアにないものをパスタに入れておいしいの 」と思ってしまった。
オリーブオイルの代わりにしょうゆ、チーズの代わりにのりと大根おろしという発想は、イタリア人にはない。和食によく出てくる食材や味がパスタにも使えるなんて。半信半疑だったけど、なんとか勇気を出してみようと思い、よく混ぜてから食べてみた。
一口食べて、目ん玉が飛び出た。頭で考えていた「ありえない」というイメージから、「なんじゃこりゃ! おいしすぎ!」という気持ちになるまで、あっという間だった。涙が止まらない。感動しかない。しょうゆとのりと大根おろしは最高の組み合わせだということを、日本人はみんな知っているのか? パスタに合いすぎて、もっと早くに出会っていればよかった。塩辛さとパスタの食感はすばらしいマリアージュだった。パスタの国から来ている僕は、新しいパスタのアレンジに驚いて、日本はもしかしたらイタリア以上に”パスタ力”を持っているかもしれないと思い始めた。
イクラパスタ、サーモンクリームパスタ、かにのパスタなど魚介類のパスタは、大体イタリアでも食べられるけど、絶対イタリアにないパスタが日本では人気だ。それは何かというと、「明太子」を使ったパスタ。
そもそも明太子はイタリアにはない食材だ。ピリッとする味と食感がイタリア人の口に合うかどうかはわからない。僕も初めて食べたときは、敵と戦っているような感覚になったが、少しずつ慣れて、今ではいい仲間だ。明太子を使ったパスタは日本風味になっていて、日本人には人気だけど、実は僕は最初の頃は食べられなかった。舌がどんどん日本の食材に慣れてきて、明太子のおいしさや味の奥深さを知るようになり、今では大好きなパスタアレンジのひとつだ。
鉄板に乗っているパスタも非常に面白くて、いつもよりおいしく食べられる。パスタは熱いうちに食べないと伸びるから、鉄板焼きのパスタは最後まで熱々で食べることができて、ありがたい発想だ。鉄板の上に乗せることでちょっと焦げ目が付くのもいいポイント。イタリアでは、料理をあえて焦がして楽しむというアレンジは一切ないので、最初その焦げ目を見たときは、店員さんが間違えたのかと思った。今考えると、とても失礼な話だ。今では焦げ目のとりこで、焦げ目が付くように、鉄板焼きのパスタはあえて少し待ってから食べるようにしている。
熱々のパスタからサラダパスタまでバリエーションがありすぎて、知らないうちに日本でも毎日食べてしまう。また、日本人はやっぱりパスタが大好きだと思った商品はスーパーやコンビニのお弁当だ。トマト系のパスタがいつも必ず入っている。そして、コンビニはパスタの種類が豊富で、お昼すぎに行くともう完売している。
イタリアとの面白い共通点はパスタを食べられるお店の豊富さだ。イタリアンレストランも多いけど、日本の喫茶店、チェーン店、一般のカフェなどでも、いつでもおいしいパスタが食べられる。
来日した多くのイタリア人は、ケチャップを使ったパスタに驚くというより、文句を言い出す。イタリアでは生トマトやトマトペーストなどの食材を使って、甘みのないトマトソースで作る。ケチャップのような甘みがあるソースは、ジャンクフードを食べるときにしか使わない。日本のナポリタンは好きでよく食べるけど、ケチャップだけではなくソーセージにも驚いた。一般のイタリア人にはほぼ無理だろう。イタリアではミンチを炒めて混ぜるソースが一般的で、ソーセージはパスタに入れる食材ではないという感覚だ。
ほとんどの日本食を喜んで食べる僕にも、実は驚いて食べきれなかった食べ物がある。それは「あんかけスパゲッティ」だ。その理由は、パスタの食感とソースの味に慣れることができなかったからだ。好き嫌いがない僕にとっては、ラスボスで負けた悔しさだ。チャレンジしようと何回も思ったけど、勇気がなさすぎて諦めた。
自分とは合わなかった食べ物との出会いも重要で、いい勉強になる。とにかく、日本のパスタアレンジはイタリアに負けないくらい発想力に優れている。グラタン系のパスタも冷製パスタも存在していて、さらにアレンジと食べ方が面白くてワクワク感が半端ない。
イタリアと日本には「麺」というつながりがあるということも、ふたつの国がお互いにひかれ合う理由のひとつかもしれない。なんにせよ、日本でのすばらしいパスタアレンジの数々を、イタリア人が知らないのはもったいない。イタリアで日本のことを学ぶ教科書を作る際には、このことをぜひ載せてほしい。
筆者プロフィール
マッシミリアーノ・スガイ
1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。 日本食が大好きな日伊通訳者&起業家。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、日本在住15年。現在は石川県金沢市に暮らす。食と日本への愛を語り倒すTwitterとnoteが話題を呼び、メディアにも多数取り上げられるなど注目を集める。noteの「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」は95万回以上読まれた。
著=マッシミリアーノ・スガイ、挿絵=東麻マユカ/『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)
Information
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