子が生まれた瞬間から母になれる人なんていない!迷える「子育て民」に贈る深爪流・子育てエッセイ

#育児・子育て   

親になったら自分も成長できて、素敵な関係が築ける…。
そうだったら本当に幸せです。
でも、実際には「こんなはずじゃなかった!」の連続。

迷える「子育て民」に贈るエッセイ


そんな「こんなはずじゃなかった」派の私やあなたにおすすめしたいのが、Twitterフォロワー数19万人超えの「深爪」さん著『親になってもわからない 深爪な子育てのはなし』です。

働く主婦ならではの視点で、毎度クールで鋭い意見をつぶやく深爪さん。
お子さんとの距離の取り方もさぞかし上手そう。
そう思い込んでいたので、本書を読んだとき、正直びっくりしました。

本書に綴られていたのは自分と全く変わらない迷走する親の姿だったからです。
時には子どもに干渉し過ぎる、なんとしても子どもをレールに乗せたいと思い込んでしまう、育児や家事を背負いすぎて苦しくなる。
それは、どこにでもある日本の母の姿でした。

全てのエピソードに「子育て民」としては共感しかないのですが、特に印象に残ったのは「乳幼児の育児におけるストレスは『ちょっと目を離すと死ぬ』だが、小学生になると『ちょっと目を離すとサボる』にランクアップ」「子育ては『クイズ☆正解は20年後』」というフレーズ(さすが、ワードセンス抜群!)です。
子育て中の方なら、首が折れるほどうなずくのではないでしょうか。

よく、「男の人は少しずつしか『お父さん』になれないから、ゆっくり見守ってあげて」なんて話を聞きますが、「お母さん」だって本当は同じです。

産んだ瞬間から母になれる人間なんていないのです。
毎日、母乳やミルクをあげたり、抱いてあやしたり、四六時中オムツを替えたり、嘔吐物を始末しているうちに、泣きながら母になっていくのです。

子どもが学校に行き始めてからだって、順調とは限りません。
私がとても心に染みたのは深爪さんのご長男の不登校のお話。

世間では不登校の子どもを優しく受け止め応援する親の話ばかりが流れてきます。
でも、自分の子どもが学校へ行かなくなった時、本当にそれを冷静に受け止められる親御さんはほんの一握りです。

本書には、お子さんが学校に行かなくなった時の深爪さんの焦る気持ちが、正直に書かれています。きれいごとではない親の本音です。

この本は、「子どもを全員東大に入れました!」「のびのび子育てで子どもがこんなに素敵に育ちました!」という類の子育て本のようなカタルシスはありません。そういう本を期待したら、ちょっぴり違うかもしれません。

時々、「おいおい、深爪さん、それは違うんじゃない?」と思うような場面も出てきます。
でも、本当は99%の親たちはこんな風に迷いながら子どもと格闘しているんじゃないでしょうか。

子育てが究極の「答えのない問い」だとしたら、大事なのはその問いに向き合い続けること。そんな風に感じて、そしてちょっとだけ明日の育児の重荷が軽くなる。そんなエッセイです。

【著者プロフィール】
1971年生まれ。二児の母。コラムニスト。独特な視点から繰り出すツイートが共感を呼び、フォロワー数19万人超(2022年3月現在)。芸能、ドラマ、人生、恋愛、子育て、エロとジャンルは多様。主な著書に本書のほか『立て板に泥水』『深爪式 声に出して読めない53の話』『深爪流 役に立ちそうで立たない少し役に立つ話』(すべてKADOKAWA)

文=吉田直子

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