【実家じまい】松本明子さん 空家となった実家に大金を注ぎ込み…600万かけたリフォームも「価値ゼロ」「更地にするのに500万」

#くらし   
このまま実家を維持すれば、将来、子どもや孫たちに私と同じ苦労をかけることになる…。苦悩しながら維持してきたものの!

『実家じまい終わらせました! ――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』2回【全4回】


タレントとして活躍する松本明子さんは、香川県高松市出身。子どもの頃にお父様が購入した一軒家で育ったそうです。宮大工さんが手掛けた立派な家は、お父様にとって一生の中で最大の買い物で、松本さんにとっても思い出の詰まった場所でした。お父様の意向もあって松本さんが実家を継ぐことになりましたが、タレントとして活躍する松本さんの拠点は東京。高松の実家は空き家のままで、年間約27万円の維持費を払い続けていたそうです。売却のためのリフォーム代や家財の整理にかかったお金などを含めると、最終的に実家を手放すまでにかかった費用はなんと約1800万円…! 売却費用を差し引いても大赤字だったといいます。

実家の将来についてぼんやり不安があるものの、慌ただしい日常の中で、何もできていないという方は多いのではないでしょうか?  そういった方も、松本明子さんの体験談をきっかけに「早々に考えなければ」と思うかもしれません。

お父様が遺した高松の実家を継いだ松本さん。誰も住んでいない空き家ですが、電気・水道代、固定資産税、庭木の手入れなども含めると1年間で約37万円の出費に! そして2011年の東日本大震災を経験し、実家をいざという時の避難先にしようと、思い切って350万円をかけてリフォームしました。しかし、結局家族で寝泊まりすることはほとんどなく…。

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テレビ番組への出演を機に実家じまいを考えるように

実家をリフォームして4年ほどした2015年12月、実家の空き家問題を抱える芸能人を特集した「私の何がイケないの?」(TBS)という番組に出演しました。

放置された空き家は倒壊の危険があるだけでなく、放火のターゲットにされたり、大麻の栽培に利用されたりするなど、犯罪の温床にもなります。このため前年の2014年11月には周囲に危険を及ぼす可能性のある空き家の所有者には固定資産税を最大6倍にする「空き家対策特別措置法」が施行されています。当時は急増する空き家と、それにともなうトラブルに世間の注目が集まり、メディアも盛んに取り上げるようになった時期でした。

出演者の中に空き家の売却を考える方もいましたが、私の場合はリフォームをして間がなかったこともあって、そのときはまだ実家じまいは考えていませんでした。番組内では専門家の方に空き家管理のコツなどを伝授していただきました。

私が本格的に実家じまいを考えるようになったのは、それから1年余りあとのこと。2017年1月に「クローズアップ現代+」(NHK)に出演したのがきっかけでした。テーマは実家の片づけ。物だらけにしておくと、あとでどれだけ子どもや孫が苦労するか、収録に参加してよくわかりました。そして思ったのです。

実家の維持にはお金も時間も体力も必要。いざというときの避難場所にするつもりでリフォームまでしたけれど、このまま実家を維持すれば、将来、高松に縁もゆかりもない子どもや孫たちに私と同じ苦労をかけることになる。それだけは避けたい。だとすれば、父の言葉は重いけれど、やっぱり実家じまいをするしかない、と。

母が亡くなって10年。節目の年であったことも、そうした気持ちにさせたのかもしれません。実家に翻弄されているのを見ていた主人や義母が、「もう手放してもいいのでは?」と言ってくれたことも踏ん切りをつける後押しになりました。

でも、いざ実家じまいをすると言っても、築45年の家をそう簡単に売ったり、貸したりできるはずがありません。しかも高松の郊外です。どうしたものかと思い、マネージャーさんに相談したところ、逆に「これ仕事にしていいですか。明子さんの実家じまいの過程を追いかける番組ができないか、放送局に話してみます」と提案されました。

築45年の家をそう簡単に売ったり、貸したりできるはずがありません。しかも高松の郊外です


テレビでやれば、実家に興味を持つ人が現われるかも――。

そう思い、「お願いします!」と即答しました。

実家じまいをすると決めたからには、売るにしろ貸すにしろ、もう少しきれいで使いやすいほうがいいと思い、2回目のリフォームを行ないました。浴室のユニットバスへの改修、一部フローリングの増し張り(既存の床の上に張り増すこと)、電気設備の交換などです。

かかった費用は約250万円。前回分と合わせると約600万円になります。これに父から家を継いでほしいと言われて以来の維持費やら東京と高松の移動費やらの負担を加えると、すでに1700万円近い金額を誰も住んでいない実家に注ぎ込んでいました。

このあとも不要な家財道具を高松市に依頼して大型トラックで処分した際の金額等もかかっているので、最終的に実家のために使った費用は1800万円以上になりました。

「これのいったいどこが芸能界一のドケチなの?」と思わず自分に突っ込みを入れたくなります(苦笑)。

いまから思えば、もっと早く手放していれば、使わずに済んだはずのお金ですから、まったくもったいないことをしたものだと思いますが、やはり父から託されたという思いがありましたから、なかなか処分ということに考えが向かなかったのです。

バラエティー番組で取り上げた私の実家じまい奮闘記

2回目のリフォームが終わってしばらくした頃、マネージャーさんの営業努力で、「爆報! THEフライデー」(TBS)という番組が、空き家になった実家の処分に奮闘する私の姿をドキュメントで取り上げてくれることになりました。

番組のプロデューサーさんが九州のご出身で、やはり私と同じように実家の処分に困っていたことから、とても他人事とは思えなかったのだそうです。それを聞いて、同じような境遇にある人は、きっと日本中にたくさんいるはずと思いました。

番組の収録で、高松の不動産屋さんに査定してもらったのですが、「買取価格は築年数が古いので上物の価値はゼロ、土地の価値だけで200万円」と言われ、思わず絶句、倒れそうになりました。

2回のリフォームで600万円もかけたのにたったそれだけ? うそでしょ?

ショックのあまり言葉を失くした私に、さらに追い打ちをかける言葉が……。

「更地にすれば買い手はつきやすいですけど、費用は500万円ほどかかりますね」

ひょえーっ、ご、ごひゃくまんえん!? まさに、「なんじゃそりゃ!」です。

これは売れないかもと考え、香川県内に住んでいる親戚の人たちに聞いてみました。「実家を引き取ってくれませんか」と。でも、いいよと言ってくれる人は誰もいませんでした。

それはそうですよ。みなさん、立派なお家があるわけで、誰か住む人でもいれば別ですが、空き家にしておくなら、維持費がかかるだけ。何の得にもならないのです。

困った、どうしよう……。そんなとき香川県が運営する「空き家バンク」というサービスを知りました。空き家を貸したい、売りたい人が、物件情報を地方自治体が主体となって運営する空き家バンクのホームページに公開し、空き家を借りたい、買いたい人が利用できるようにしたものです。実際の仲介業務は、不動産業者さんに頼んで行ないます

藁(わら)にもすがる思いで、早速、利用することにしました。登録窓口のある高松市役所に行くと、空き家を登録するには事前に物件の現地調査が必要ということで、市に調査を依頼しました。調査員が実際に現地に足を運んで、建物や敷地、ライフライン(電気・ガス・水道・排水・その他)の状態をチェックし、写真に撮ります。

調査に立ち会ったのですが、外壁にヒビはないか、耐震性能はどうか、床は傾いていないか(ビー玉を転がしてチェックしていました)等々、非常に細かく調べていました。この調査で問題がなければ、写真付きの物件情報が登録になります。掲載料は無料です。

このまま実家を維持すれば、将来、子どもや孫たちに私と同じ苦労をかけることになる…。苦悩しながら維持してきたものの!


私は賃貸と売却の両方で登録しました。希望額は賃貸が月10万円、売却はせめてリフォーム代くらいは元を取りたいと思って600万円にしました。高松の不動産屋さんの査定200万円は、いくらなんでも安すぎると思っていましたし。

でも、それを見た高松市の担当者の方は、少し苦笑を浮かべながら、言ったのです。

「何年もかかかりますよ。いつ売れるかわからないです」

ひょっとして、私ってばおととい来やがれみたいな希望額を書いてしまった?と一瞬狼狽(うろた)えましたが、いまさら変えるのもなんなので、そのままにすることにしました。

密着取材を続けてきた「爆報! THEフライデー」が、ここまでの私の奮闘ぶりを放送したのは、この年(2017年)の7月のことでした。

反響はすごかったですね。いろいろな方から「実は私も……」と空き家になった実家の扱いで苦労している話を伺いました。テレビの影響はやっぱり大きいなと思いました。

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親に「実家を頼む」と言われてしまったらつい、頑張ろうと考えてしまうのは当然のことかもしれません。ですが、自分たちの生活やライフスタイルを犠牲にするのにも限界が…。それも自分だけではなく「相続」することにより、子どもや孫にも影響する問題でもあります。
「実家の行方」について親が元気なうちに話し合ったり、考えておく必要がありそうです。

松本明子さんが明かす「実家じまい」

松本明子(まつもと・あきこ)/1966年生まれ。香川県出身。82年に日本テレビ「スター誕生!」チャンピオン大会に合格したことがきっかけで、翌年、歌手デビュー。その後、元祖バラドルとして人気バラエティー番組「DAISUKI!」「進め! 電波少年」(日本テレビ系)などに出演し、明るく親しみやすいキャラクターで人気を確立する。現在は、バラエティー番組の他、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動中。こうした活躍の裏で、25年にわたり累計約1800万円を費やして高松市にある空き家となった実家を維持する日々を送っていたが、放置された空き家の危険性や物だらけの実家の問題などを取り上げたテレビ番組に出演する中で、実家じまいを決意。2018年に実家の売却と2トントラックで10回分の遺品整理を行なった。近年は、自身のしくじり経験をもとに、実家じまいの重要性をメディアで発信している。近著に『実家じまい終わらせました! ――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』がある。

※本記事は松本明子著の書籍『実家じまい終わらせました! ――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』から一部抜粋・編集しました

作=松本明子

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