いい街は自分の足で見つける。「孤独のグルメ」原作者・久住昌之さん流 面白い街の探し方

#趣味   
孤独のグルメ著者の久住昌之さん

仕事柄、さまざまな街に出かける機会があるという「孤独のグルメ」著者の久住昌之さん。散歩が大好きで、以前は東京から大阪まで25カ月かけて(!)散歩したこともあるそうです。そんな久住さん流の“街歩き”の楽しみ方を聞いてみました。

アーケードがシンボルの吉祥寺サンロード商店街。久住さんはその街頭からスッと待ち合わせ場所に現れました。
「生まれも育ちも三鷹なんで、若いころから何か買いものがあれば吉祥寺に来ていたんです。電車やバスは使わず、歩いて。歩くのが好きなんですよ」

今も三鷹の自宅から吉祥寺の仕事場に歩いて行くそう。仕事や旅行で地方に行けば10キロ歩くのは普通。そんな街歩きの中から「孤独のグルメ」をはじめたくさんの作品が生まれました。
「歩くのがなぜ好きか?と言われれば、結果的には出会い。面白いもの、人、店、風景が見つかる。そんな予想もしない何かに出会うのが散歩なんですよ」

コースやプランを決めたり、名所旧跡を訪ねるのは、久住さんにとって本来的な散歩ではないといいます。
「何でもない住宅街を歩くのが楽しい。『こんなデカい家に住んでいる人は何をしているんだろう』なんて思ったり。一番よくないのはこだわること。それしか見えなくなるから。面白いものは意外なところからやってくる。たとえば突然、道端にキュウリが1本、落ちていたり(笑)。用事があるときは見えないものが街にはたくさんあるんですよ」

ネットで情報を調べたり、あらかじめ口コミや評価をもとに飲食店を選んだりはしないそう。
「ネットでアタリをつけた店で食べるのは、流行のビリにつくということだからね。大事なのは自分で見つけること。自分が歩いて見つけるから楽しい。道端のキュウリだって、他人が撮影した写真ならただのキュウリでしょ? 自分の散歩で出会ったキュウリだから面白い」

「偏見を捨てて街を歩けば面白いものと出会える」と語る久住さん


言われてみれば「孤独のグルメ」でも、主人公・井之頭五郎とお店との出会いの多くは突然で偶然です。そんなスタンスで最近、ハマっているのが床屋さん。
「古い床屋ってだいたい店主が年配で常連さんもいるから、新規開拓する必要がないわけ。そんな店に突然、俺みたいな客が入ると『何しに来たんだ?』みたいな顔でギョッとされる。『切ってもらっていいですか?』と聞くと『ど、どうぞ』みたいな(笑)」

久住さんのヘアスタイルは坊主頭。「頭1ミリ、髭3ミリ」と頼めば失敗もないので、どんな店でも安心して髪を刈れるといいます。
「そうすると髪を刈っている間に話をするじゃない。床屋さんって長くやっているお店が多くて、街の人との接点も多いから、土地の歴史をよく知っているんだよね」

どんな街にも、視点を変えると新しい発見があるといいます。
「心をひかれるお店や道……こんなふうに街を歩くと、自然と自分の好みがわかるようになるんです。お店でも場所でも、気に入ったところが一つでもあると、街の風景も自分好みに見えてくるものですよ」

だから、どこがいい街か?という話に興味はないそう。「いい街は自分の足で見つける」ものなのだといいます。
「昔に比べて吉祥寺もチェーン店が増えたんですよね。個人商店の方が面白いのは確かなんだけど、チェーン店にはチェーン店の面白さもある。働く店員さんの中には将来、この辺で自分の店を出したいのかなと感じさせるような若者もいたり。だから面白い街を探したいなら、偏見とかこだわりを捨て、のんびり歩けばいろいろなものが見つかる。街の見方や歩き方、出会い次第ですよ」


くすみまさゆき●1958年、東京都三鷹市生まれ。1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ「孤独のグルメ」は10カ国で翻訳され、2012年にはテレビ東京系でドラマ化されるなど、国内外で愛される作品となった。街歩きに関する著作も多いほか、切り絵、音楽など多様な分野で活躍中。

撮影=武井里香/取材・文=長谷川一秀/撮影協力=吉祥寺サンロード商店街

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