「しつけがなってない」なんて簡単に言わないで…元保育士が実話をもとに描く『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』著者インタビュー

#育児・子育て   
 『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』より

小さな子どもがいる家庭にとって、今や必要不可欠な存在と言っても過言ではない保育園。子どもたちの笑い声、笑顔にあふれる場所ですが、時には思いもよらないトラブルが起こることも…。

保育園で起こるトラブルをはじめ、保育園の日常や育児について描いた漫画が注目を集めている、イラストレーターであり漫画家のたぷりくさん。インスタグラムのフォロワー数は8万人を超え、子どもを守るために奮闘する保育士の姿を描いた『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』で電子書籍化も果たしています。

まず、この『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』のストーリーをご紹介しましょう。
私立保育園で2歳児クラスを担当する、保育士歴5年の新見はる。子どもたちの笑い声、かわいい笑顔があふれるこの場所も、時にさまざまなトラブルへの対処が必要です。保護者との関係、セキュリティ問題など…何より預かる子ども一人一人にしっかりと向き合って保育をしていきたいのに、園のリーダーである園長は世間体や私欲に走るばかりで、保育士の要望に耳を傾ける気配はゼロ。そんな園長の采配では園の運営もうまく回らず、尻拭いするのはいつも保育士たちという日々が続いて…。

たぷりくさんは、自身も小学生のお子さんのママであり、子育てについて悩む親の一人。本作には、子どもとの関わり方についても描かれています。作品に込めた想いについて聞きました。


著者・たぷりくさんインタビュー

 『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』より

―たぷりくさんが保育士時代、もっとも心に残っているエピソードはありますか?

たぷりくさん「年長さんの担任をしていたとき、お友達のことが大好きだけど遊ぶときの関わり方がうまくいかず、お友達が遊んでいるものを壊してしまったり、行動が激しくて怖がらせてしまったり…というお子さんがいました。私も『こういうふうにしてみよう』と伝えたり、一緒にお互いの気持ちを考えてみたりしたものの、状況はあまり変わらず…。そんなときに、その子が『ぼくはみんなに嫌われているんだ』とぽつりと言ったんです。それを聞いて、そんなふうに感じていたこと、その子をサポートしきれていなかったことに、私はものすごくショックを受けました。
『こうしよう』とアドバイスしたことが、その子にとっては『間違っている』と、自分を否定されたように感じてしまったのかもしれないと気づき、これまでの関わり方を反省しました」

―それからは、どのように関わっていったのですか?

たぷりくさん「まずは自信を取り戻してほしくて、普段の生活の中で毎日コツコツと、些細なことでも認めてあげるところから再度始めました。そのこともあってか、毎日の活動や縄跳び・鉄棒といった運動に取り組む姿、元気と自信があふれる姿が見られるようになり、少しずつ友達に対しての関わり方も落ち着いてきたように見えました。不安やストレスで、その子自身も無意識に行動が激しくなってしまっていたのかもしれません。

 『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』より

私の言葉・行動次第で、子どもたちがいい意味でも悪い意味でも大きな影響を受けることを実感しましたし、認めてもらえることや達成経験を経て、その子がキラキラとした表情になって成長していくのはすごく嬉しかったです」

―現在は、小学生のお子さんのママであるたぷりくさん。保育士時代に多くの子どもたちと過ごしてきたと思いますが、育児や子どものことについて、親になって初めて知った、または気づいたことはありますか?

たぷりくさん「保育士時代には、保育士の知識と関わり方次第でうまく子育てできると思っていました。ところが、実際に自分が親になってわかったのは、どんなにお手本通りの声かけや関わり方をしても、子どもは思った通りにはなってくれないということでした。『親のしつけがなっていない』なんて言葉をよく耳にしますが、きちんとしつけをしているつもりでも、親の思惑通り完璧にこなす子どもはいないと思います。

子どもはそれぞれの個性を持って生まれてきますし、全員に一つの育児方法が通用するわけがないですよね。お母さんたちは、それぞれどうしたらいいか悩みながら子育てしているのです。その背景を知らずに、『あんなに泣かして』『親が子どもの言いなりだ』『しつけがなってない』と判断してほしくない…と思いました。親になって改めて子育ての大変さを実感したので、お母さんたちにはより一層、尊敬の念を持つようになりました」

 『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』より

―たぷりくさんが、この作品を通して読者に伝えたいこと、感じてほしいことは何ですか?

たぷりくさん「作中にもあるのですが、保育士さんの中には担任を途中で放棄できない、子どもたちを思うと辞められないという責任感から、辛い環境の中でも働き続け、心身を病んでしまう人も少なくありません。私自身もそうでした。けれど、心からの笑顔で、楽しく保育できることが子どもたちにとってもいいことだと思うので、時には自分自身を大事にすることを考えてもいいのではないでしょうか」

―これからどんな作品を描いていきたいなど、今後の作品の展望を教えてください。

たぷりくさん「保育園でのトラブルのお話をたくさん描いてきたので、今度は保育園での感動するエピソードや、熱意をもって保育する保育士のお話を漫画にしたいと思っています。保育園以外のお話も、もっと描いていきたいですね」

 『保育園トラブル モラハラ園長と闘います』より

―最後に、読者にひと言お願いします!

たぷりくさん「ブログやインスタグラムでも保育園でのトラブルをメインに描いていますが、本作のモラハラ園長のような先生は少数派で、それ以上に子どもたちを大事にしながら保育している保育士さん、園長先生がたくさんいらっしゃることは知っておいていただきたいです。一つの読み物として、私の漫画を楽しんでもらえたらと思います。」

取材・文=松田支信

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