ゲームや漫画に没頭する小4息子。「やめよう」と言ってもやめられません【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   
 

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第129回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小4の息子についての相談です。ご飯、お風呂、宿題、就寝など、次にやるべきことが始まるタイミングでいつも声かけをしますが、いつもゲームや漫画に夢中で、一向にやめてくれません。友達が遊びに来たなど、もっと面白そうなことがあればやめられますが、「宿題やって」「ご飯だよ」などの理由ではなかなかやめられず、今やるべきことに取りかかれない状況です。朝はパッと起きるのですが、すぐに漫画を読み始め、「ごはんだよ」と5回くらい言ってようやく食べ始める始末です。そしてテレビを見ながらボーっと食べるため、めちゃくちゃ時間がかかり、毎朝遅刻寸前。目先のことに没頭し過ぎて、周りの声が聞こえなくなっているような気もします。周りの状況に気づいて、今やっていることをパッとやめられるようになるにはどうしたらいいでしょう?(Yさん・42歳)

【小川先生の回答】

人が動くには「やりたい理由」が要る


何かやってる時に、それをやめて行動できる人になるには、その行動することが自分にとって意味があり、「その行動の先にある自分自身になりたい」という目的意識を持つことが必要です。友達が来たらやめられるのも、友達と遊ぶことが本人にとって意味のあることだからに他なりません。「やらなきゃいけないからやる」ではなく、「やりたいからやる」でないと、やはり人はなかなか動けないものなのです。

自ら勉強に取り組める子というのも、「クラスの中で上位でいたい」という欲求や、「解けたら気持ちいいからまた味わいたい」という思いなど、自分にとって意味のあることに感じられているから動けるのです。つまり、今やってるゲームが楽しくても、次のことにも意味があれば「ここらへんでいいや」と区切りがつけられるようになります。

ゲームの刺激に晒され続けると、感性が鈍ってしまう


そういった自分にとっての意味を見出すには、日頃から「自分はこういうことを発見できた」「こんなことを達成した」など、自分の中から生まれる喜びに積極的にアンテナを張っておく必要があります。ところが、今の息子さんの様子を伺っていると、それとは真逆で、非常に受動的な時間の過ごし方をされているように感じられます。テレビをダラダラ見ながらごはんを食べているというのが、まさしく象徴的。テレビという得やすい刺激をダラダラ受けて、「味わう」という人間の生物として一番大事なはずのところに喜びを感じられていません。

またゲームも、わかりやすい外からの刺激。その刺激に麻痺してしまい、自分の中から生まれる喜びに対して鈍感になってしまっていると考えられます。おそらく小さい頃は「これができた」という発見や喜びを持っていただろうし、それは本当は今もあるはずです。でも、外からの刺激が強過ぎて、気づけなくなっているのです。

デジタルデトックスで、鈍くなった感性を蘇らせる


味の濃い食事ばかり食べている人に、いきなり「昆布だしのわずかな旨味を感じろ」と言ってもわかるはずありませんよね。それと同じで、ゲームの刺激に慣れた脳に、「小さな喜びを感じろ」と言っても、それは無理というもの。感性を高めるには、ゲームの刺激を一旦体から抜くデトックスが必要になります。ゲームをやっている裏で、気づく力、考える力、面白いことを発見する力など、自分自身が成長するための感性が鈍くなっていくという事実を伝えたうえで、「今のあなたの脳の反応、体の状態は強い刺激に慣れすぎているから、生活を見直して健康的な体になる必要がある」ということをしっかり話し合いましょう。

アプローチとしては、「ゲームをやめろ」ではなく、「毎日ダラダラとゲームばかりやる、という遊び方をやめよう」という方向です。ゲームを思いっきり楽しむ時間と、脳や体をリフレッシュさせる時間とのバランスをとることがポイントになります。

「受動的な好き」と「能動的な好き」は全然違うもの


昔は社会の共通認識として、「ゲームは楽しんでもいいけど、やりすぎはダメ」という前提があったため、ある程度で歯止めがかかり、バランスがとれていました。ところが最近は、ゲームのデジタルコミュニケーションの価値がフューチャーされるなど、頭ごなしにゲームを批判するのはよくないという風潮ですよね。それは確かにそうなんですが、「ゲームが好きなんだからやらせてあげよう」と、ゲームをしている子を放置する親が増えてしまったのは問題といえます。その結果、バランスを崩して感性が鈍感になる子も増えてしまったからです。

実は「好き」にも2つあって、受動的に好きなのか、能動的に好きなのかで、全然意味が違います。ゲームをダラダラとやっている状態は、受動的に引きずられる喜びであり、それは外から与えられた喜びです。息子さんの好きなアクションゲームというのも、敵からの攻撃に反応して動く、まさに外からの刺激といえます。

いっぽうで、ボードゲームなど、戦略的なことや相手の考えを読みながらプレイするのは、非常に能動的。自分の発見や思考といった感性が鍛えられますよね。デジタルゲームでも、オンラインで他の子がゲームをしてる様子を観察しながら自分の戦略を立てたり、ゲームをしてない時間に頭の中でシミュレーションしたりなど、単なる反応刺激ではない遊び方ができる子は、感性も鍛えられます。

つまり、同じゲームでも参加の仕方次第、ということです。そのため、お子さんが受動的になっていないか、能動的に遊べているかを見抜くことも大事になります。息子さんの場合、ごはんを味わって食べることができてない時点で、かなり受動的に引きずられていると判断できます。強い刺激に慣れた状態の子に、「どうやったらやめさせられるか」と小手先で時間制限をしても響かないもの。鈍化した感性を蘇らせるというスタンスに立ち、「自分の心が動くものを大事にして欲しい」と語りかけていくことが必要だと思います。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『動く理由があれば、能動的に動く力は持っています』
朝パッと起きれるというということは、「一日がスタートしたら動くんだ」という、自分なりに納得してることについては、すんなり動けているということです。感性を磨き直せば、自分にとって意味のあることに気づけるようになるため、動ける理由もできると思いますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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