クラスの半数が受験!? 私立に行くメリット、公立に行くメリットが知りたい【小川先生の子育てよろず相談室】

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クラスの半数が受験!? 私立に行くメリット、公立に行くメリットが知りたい【小川先生の子育てよろず相談室】

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第125回のお悩みはこちら。

【お悩み】

夫と息子2人(小6と小3)の4人家族。都内在住です。夫婦ふたりとも公立中、公立高に進んだため、中学受験を意識していませんでしたが、1月になってクラスの半分の子が中学受験のために休んでいる、と長男から聞きました。中学から私学なんて考えたこともなかったのですが、令和はそれが普通なんでしょうか?出遅れてしまったようで、不安を感じます。長男は既に遅いですが、次男は現在3年生。長男と比べて勉強も得意なので、受験してもいいかと思い始めています。今この時代に、私学に進むメリット、公立に進むメリットを教えて欲しいです。(Mさん・38歳)

【小川先生の回答】

都内の私学進学率は25%。中学受験はあくまでも特殊な選択


受験シーズンになると、メディアなどでも中学受験の話題が多く取り上げられますよね。周囲でも受験する子が多い地域に住んでいたりすると、不安になる気持ちもわかります。でも実際には、都内でも私学に進学する割合は約25%。日本全体でみたらその割合はさらに低く、公立進学者のほうが圧倒的多数です。

メディアを見ていると、あたかもみんなが中学受験をしているように思ってしまいますが、それ自体が錯覚。ニュースが事件や事故などネガティブなことしか扱わないのと一緒で、「公立中学に進学しました」という大多数にとっての日常はニュースとして取り上げられないだけです。都内でも文京区や千代田区、港区など極端に受験率の高いエリアにお住まいのかたにとっては「受験するのが当たり前」と思い込むのも無理ないことですが、少し視野を広げてみれば、やはり中学受験は特殊な世界。中学受験がニュースになるのは当事者にとって強い関心があるからであり、記事にはならないところに実は本質があるという視点は持っておくといいと思います。

中学受験というのはあくまでも特殊なものであり、当然視するものではなく選択するものだという大前提を見間違えないようにしましょう。

子どもに合った校風や環境、充実した設備が魅力の私学


私学にも公立にもそれぞれメリットがあります。
まず私学は、学校の校風や方針が明確なので、ご家庭の子育て観や子ども自身が希望している方向に合った学校を選べるというのが一番の魅力。また、入学してくる子やその親たちが、ある程度同じような入試のハードルを越えて入ってきたという関係上、コミュニティとして安定していることも利点です。気質が重なりやすいため、想定外のことでトラブルになることも少なく、比較的穏やかに過ごせるため安心感もありますよね。あとは、設備面が整っている点も魅力で、特に付属校だと大学の設備を使えることもあります。ただしそのぶん当然お金はかかります。そして何より、入試のハードルを11~12歳で超えなきゃいけないという大変な苦労を伴います。得られるものが確かにある一方、負担とリスクも生まれるのです。

地域の教育を支えてきたのは公立。先生の質も私立に劣らない


いっぽう公立の場合ですが、公立での学習指導に不信感や不安感を抱いている方も多いですよね。「内申で縛ってくるような時代錯誤の先生たちがいそう」という声もよく耳にするし、実際そういう先生が未だにいる学校もありますが、実際は公立の先生たちもかなり努力されています。日本の地域の教育を支えてきたのは公立中学や公立高校、というのは厳然たる事実です。

東京の場合、私学進学者も多いため、「公立はどうなんだろう?」と不安に思われる方も多いですが、今は小中連携をはじめ様々な努力がなされ、指導内容もずいぶん進歩しています。ただ、荒れている学校と言われているところや、部活に過度に力を入れているような学校では、古い指導体質を残しているケースも。こればかりは、お住まいの校区の学校の質によるのでなんとも言えませんが、「公立だから不安」と一括りにするのは間違った視点ということは知っておきましょう。

成長に応じた適切な学習に取り組めるのも公立の魅力


そして公立の一番の魅力は、なんといっても14~15歳まで子どもが育っていく中で、高校受験に向き合える点。自分の意志で受験学習をするという成長を待てるところにあります。成長に応じた適切な学習をすることができ、親にやらされるのではなく、自分で判断して選択していくことができます。しかも部活との両立を通して、文武両道といわれる心身のバランスを備えた状態で高校生へと巣立っていけるのも魅力です。

中学受験の実現には、本人の適性、体力、家庭の支援力が不可欠


つまり、私立も公立もどちらにも良いところがあり、どちらを選んでもいいということです。ただ、中学受験を選択し、実現させていくためには、大きく3つの要素が必要になります。

1つは子ども自身の学習への適性。そもそも中学受験というのは、小学生の身には過剰で膨大な勉強を要求されるものです。学習が好きな子、得意な子というのは厳然と存在し、その子たちに有利に働くのは確かでしょう。2つ目は体力面。膨大な学習量をこなすには、やはり体力がある子のほうが有利になります。「早生まれの子は不利」と言われることもありますが、実際難関中合格者の内訳をみても、1~3月生まれより4~6月生まれの子のほうの比率が高く出やすいという統計上の事実もあります。体の差、成長の差という違いは、当然有利にも不利にも働きます。3つ目の要素は家庭環境として、中学受験を応援しきれる状況にあるかどうか。これは親の能力というだけの話ではなく、金銭的なことなど、条件面として支え得るのかどうかです。

本人の学習の適性、体力、家庭の支援力、この3つの揃い方によって中学受験が思い通りに行くかどうかの差が出てきます。本人ががんばれば結果が得られる大学受験とは、そこが大きく違います。子ども自身や家庭の状況によっても、中学受験を選択することが望ましいかどうかが違ってくるため、「周りに受験する子が多いから」という理由で選択することだけは絶対にやめてあげて欲しいですね。次男くんの場合は、勉強も得意ということなので、家庭の状況なども整うのであれば、受験を考えてもいいと思います。兄が公立だから弟も公立じゃなきゃいけないなんてことはありません。兄弟それぞれ特性が違って当たり前。地元の中学の評判や私学のメリット、お子さんのタイプ、ご家庭の支援力など、これらを総合的に考えて選んでいけばいいのではないでしょうか。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『私学と公立に優劣はなし。どちらを選んでも正解です』
中学受験はあくまでも特殊な選択。子どもの特性と家庭の状況により、選びたければ選べばいいというものに過ぎないので、受験しなかったことを不安に思わなくて大丈夫です。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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