がんばってたのに体調不良で試験を受けられず…。心折れた子どもにどう声かければいい?【小川先生の子育てよろず相談室】

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がんばってたのに体調不良で試験を受けられず…。心折れた子どもにどう声かければいい?【小川先生の子育てよろず相談室】

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第132回のお悩みはこちら。

【お悩み】

中1の娘がいます。前回の定期試験の出来が良くなかったので、「今回こそは!」とテストの2週間以上前から計画を立てて勉強に取り組んでいました。私もできることはサポートしつつ応援していたのですが、テストの6日前に娘が発熱。コロナに感染して3日間ほど寝込んでしまいました。解熱後も療養期間に入るため、当然テストは受けられませんでした。本人は「がんばって勉強した10日間が全て無駄になった」と心が折れてしまった様子。すっかりやる気を失ってしまい、テストの当日もずっとスマホをいじりながら時間を潰していました。コロナだから仕方ないとはいえ、不可抗力で何か心が折れるようなことがあった時、親としてどう声をかけてあげればいいのかアドバイスいただきたいです。(Nさん・41歳)

【小川先生の回答】

モヤモヤしたネガティブな感情を客観的に可視化する


それは大変でしたね。娘さんもがんばっていただけに、がっかりする気持ちが大きかったのだと思います。でもそのネガティブな感情をそのまま放置すると、嫌な気分だけが残ってしまい、マイナスのエネルギーになりかねません。なので、どういう点に対してがっかりしているのか、怒りを覚えたのか、納得がいかないのか、まずは話を聞いてあげることが大切です。

子どもだからおそらく「腹立つ」など雑な感情の言葉が出やすいと思います。それを「そうだよね。がんばったから腕試ししたかったよね」など、少し丁寧に、詳しく言い換えてあげましょう。そうやって本人が体感している感情を外に出して可視化していくことで、モヤモヤした形を持たないネガティブな感情から、コントロール可能な感情へと変わります。

努力した時間で得られたことを具体的に伝える


自分の感情をある程度本人がつかめるようになったら、次は気持ちの整理を手伝ってあげましょう。本人は「テスト勉強が全部無駄になった」と思っているようですが、決してそんなことはありません。がんばった10日間の取り組みの中でできるようになったこと、親から見て成長したと思う部分もたくさんあるはずです。それをちゃんと説明してあげましょう。「がんばったのに損した」みたいな気持ちになっていると思うので、ちゃんと得られているものがあるということ、がんばった時間にはとても価値があり、次に繋がるものなんだということを、しっかり伝えてあげることが大切です。

テストは学力を高めるための重要な機会


テストが受けられなくとも、そのためにした努力や成長は、確実に本人の力になります。でもテストが受けられなかったことは、やはり残念なことであるのも事実。なぜなら、テストというのは学力を高めるための重要な機会だからです。

学習したことを、テスト中にがんばって思い出そうとすることで初めて、記憶が定着するという効果も実証されています。また、わかってたつもりでも、いざ問題に向かうと解けないという壁にぶつかることもあります。そうやって自分の理解度が不十分だったことに気づくなど、テスト中に学ぶことが実はたくさんあるのです。この学ぶ機会が得られず残念だったというのは確かにその通りだねと、「残念さ」の中身を建設的な方向に言語化して伝えてあげたいですね。

そして学び損ねた分を家庭学習で補うことも必要です。そのためにも必ず後追いの試し受験はしてください。「これはできてる」「これは理解不足だった」ということを確認しながら、次のテストで結果を出していくためにどう勉強していくといいのか、勉強の工夫を探していくことこそ、テストを受ける意義です。

結果ではなくプロセスを褒めることが成長に繋がる


勉強をがんばったからこそ、テストで良い点を取りたかったという気持ちはわかります。でも、学習で大事なのは結果よりプロセス。テストでは点数がつくため、みんな結果だけ見て一喜一憂しがちですが、結果なんて後からついてくるものです。娘さんが10日間がんばったプロセス、その成長を褒めてあげてください。

結果よりもプロセスを褒めることは、実は子どもの成長にとってもプラスに働くことがわかっています。それを裏付けるある有名な実験があります。子どもたちに問題を解かせ、その解けたことを褒めたグループと、解けるまでがんばったことを褒めたグループに分けて検証したものです。すると、結果を褒められた子はその後難問にチャレンジしなくなる傾向が見られ、解けない問題は放り投げてやらなくなってしまいました。点数などの結果を褒められると、「自分は100点の子だ」というプライドが高くなるため、「80点取ったら自分じゃなくなる」と思ってやめてしまうのです。

いっぽう努力を褒められた子は、さらに難しい問題を解きたがる傾向が見られ、解けないと「持ち帰ってやりたい」とさらにがんばるスイッチが入りました。プロセスを褒められると、「自分は努力できる人だ」というセルフイメージを持てるため、解けない時も「解けるまでやればいいんだ」というマインドが生まれるのです。この両者の学ぶ姿勢の違いというのは、ものすごく大きな差を生み出します。だからこそ、娘さんががんばった10日間のプロセス・努力・行動を褒めてあげてください。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『がんばった10日間があるから評価できるポイントには事欠かないはず』
テストを受けそびれて不貞腐れた感じが伝わってくるということは、本人としても相当気持ちが入っていた証拠。10日間の振り返りを一緒にやり、その行動・がんばりを褒めてあげましょう。一生懸命だったということがわかるだけでも、本人の胸には充分に響くので、次のがんばりにも活かせるはずです。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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