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うそでしょ!? 私のマスカラを借りた義母の行動に、思わずあ然!/義母ダンジョンにハマっています。(1)

「質問はあとにして先に注文しようよ」
彼からの提案で尋問は一時中断した。しばらくしてケーキと紅茶が運ばれてくると今まで沈黙を守っていたお義父さんが口を開いた。
「秋山ちゃんさ、僕たち、本家なんだよ」
(ホンケ?)
「本家と分家の本家。今度家系図も見てもらおうと思ってるけど、こいつ(夫)○代目だから。もし今後結婚することになれば墓を守らないといけないし、跡継ぎの問題なんかも出てくるから。そういう覚悟がある?」
あるわけない。
そもそも結婚のあいさつに来たわけでもない。ついさっき初めて会ったばかりで、将来嫁になるかも分からない20歳の女にそんな覚悟を求めてこないでほしい。
この目の前にいる小太りの男は本当に私が信頼し愛情を向けた彼を育てた人間なのか。
困惑の表情で彼の方を見る。目が合った。無言で頷く彼。
やはりあいつも父親で間違いないらしい。
「そういう話はもっと先でいいから。今日はお互い顔を知ってもらう場なんだし、もっと楽しい話をしようよ」と彼が話題を変えてくれた。
「アキさん歌が上手いですよね。カラオケに行くとびっくりしちゃいます」
私が彼のいいところを切り出すと義母の目の奥が輝いた。
「そうでしょ! 小さい頃は合唱団に所属してその中でも一番上手かったの! 聖歌とかも一度聴いただけで本当に上手に歌えてね~夜寝る前に歌ってもらうと私の方が先に寝ちゃったりして(笑)。小さい頃からオーケストラを聴かせていたからかしら。秋山ちゃんは歌はどうなの?」
「私は音楽の成績そんなに良くなかったです(笑)」
「じゃあ生まれてくる子はアキちゃんに似ないと困るわね(笑)」
あ?
「母さん、でも秋ちゃんは料理が上手だよ。僕も家のことを少しできるようにしないと」
「アキちゃんのことだからすぐ上達するわよ。幼稚園の頃貝殻で作ったフォトフレーム、あれもすごく上手だったじゃない」
いつの時代の記憶掘り起こしてんだよ。

その後も義父母は自分たちとアキちゃんがいかに素晴らしい人間かを語り続け、私は運ばれてきたケーキに手をつけることもできず彼らの話を聞き続けた。
「あら、ケーキ召し上がってちょうだいね。あとマスカラ持ってる?」
終盤になってようやくケーキに手をつけた私。化粧直しでもするのかと思って自分の化粧ポーチに入っていたマスカラを貸した。
するとあろうことか義母はマスカラを持ったその手を頭の上にかかげ、自分の髪に塗り始めたのである。
「これ(マスカラ)白髪隠しに使えるのよ、知ってた? 便利でしょ~」
笑顔で白髪にマスカラを塗るお義母さん。それをただ呆然と見つめる私。私の心は折れた。
「それ、差し上げます……」
これが私と義母の出会い。
出会った時から彼らは純度100%のクソだった。
ここから私と義母との長い闘いが始まる。
著=秋山、イラスト=香川尚子/『義母ダンジョンにハマっています。』
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