人を惹きつける魅力的な存在、だけど悪気なく関わる人を不幸にする『怖いトモダチ』やまもとりえさんインタビュー

『怖いトモダチ』より

4月12日に発売されたミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』。岡部えつさんの小説をイラストレーター・漫画家のやまもとりえさんがコミカライズした作品で「人間の怖さを痛感する!」「続きが気になって一気読みした」と、大きな話題を呼んでいます。

人気エッセイスト・中井ルミンを中心に、様々な人の思惑と言い分が交錯する本作。人々が語るエピソードはあちこちで食い違い、読み進めるほどに誰が本当のことを言っているのかわからなくなっていく…。今回は、作者のやまもとりえさんに作品や登場人物についてお話を聞きました。

『怖いトモダチ』あらすじは…


『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

人気エッセイスト・中井ルミンが主宰するオンラインサロンの合言葉は「みんなで幸せになろう」。
どんな悩みにも寄り添ってくれるルミンは尊敬できて魅力的な存在で、サロンには彼女を慕う大勢のファンがいつも集まっていました。
ですが、そこには奇妙な違和感が…。

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より


ある時、ルミンは自分のブログに、中学時代の同級生のSちゃんとの思い出を綴っていました。
酪農家の娘だったSちゃんが、同級生から「牛の糞臭い」といじめられて不登校になったこと。そして、ルミンの発案でクラス全員にSちゃんのいいところをあげてもらい、手紙にまとめて渡した結果、学校に来るようになったこと。
しかし、そのブログをたまたま目にした元同級生はこう呟くのです。

「このブログ…うそばっかり。だって沙世ちゃんあの次の日、自殺未遂を起こしたのに…」

みんなの憧れ、カリスマエッセイスト・中井ルミンの”真実の顔”とは?

魅力的で無自覚なだけに厄介な存在…中井ルミンについて


『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

――自分に心酔するサロン会員のブログから文章をマネたり、婚約者のいる男性を奪ったり…。自分が有利になるように、着々と事実を捻じ曲げて我が道を突き進んでいく中井ルミン。率直にお尋ねしますが、中井ルミンという人物をどう思われますか?

やまもとりえさん:ルミンは魅力的なだけに、近くにいると厄介なのかもしれないなと思いました。ただ、原作者の岡部先生とのやりとりで「ルミン自身は悪いことをしてる自覚がない」と伺っていたので、あくまで純粋なルミンを描かせてもらいました。

――私たちの身近にも実際にいそうなタイプでもあり、ゾッとしました。やまもとさんご自身にも似たような経験はありますか?

やまもとりえさん:常に被害者でいたい方なら周りにいました。例えば、アドバイスを求められて「人それぞれだと思うけど、私だったからこうするかなぁ」という答えかたをしても、「私は嫌だったのにやまもとさんにやり方を押しつけられた。悲しい。」と他の人に言ってたり…とか、でもルミンとは少し違うタイプかもしれません。

――もしも今後、ルミンのような人に出会ったとしたら…やまもとさんならどうしますか?

やまもとりえさん:ほどよい距離をとらせていただきたい。でも、気づいてないだけで自分もルミン側だったらどうしようというのは描きながら考えました。無自覚というのが1番怖いですから。

「ルミンならこうするかな?」小説版とは異なる結末


『怖いトモダチ』より

『怖いトモダチ』より

――この作品は「自己愛性パーソナリティ障害」をモチーフにしているそうですが、この病気を描くにあたって勉強されたことや意識したことについて教えてください。

やまもとりえさん:編集さんから参考文献を送っていただいたのでそちらを読んだり、動画で説明しているものをいくつか観させてもらい、同じ障害でもいろんなタイプがいることを学びました。ルミンを悪者にしすぎないことは意識しましたが、出来ているかはわかりません…。

――特に印象に残っているシーンはありますか? その理由を教えてください。

やまもとりえさん:優美の回想シーンです。ルミンという人間を1番説明できているシーンかなと思ったので。

『怖いトモダチ』より

――物語の結末は小説版と大きく違いますが、どのような意図で描かれたのでしょうか?

やまもとりえさん:最初にお話をいただいたときに「結末を変えていただいて大丈夫です」とおっしゃっていたので、私なりに「ルミンならこうするかな?」と考えて描かせてもらいました。

新ジャンルにも挑戦したい!今後の活躍にも注目


『怖いトモダチ』より

――今後また小説のコミカライズに挑戦してみたいですか? どんな作品を描いてみたいと思いますか?

やまもとりえさん:また機会がありましたら、ホラーとかラブストーリーとか、描いたことのないものに挑戦してみたいです。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

やまもとりえさん:読んでくださるあなたのおかげで描かせてもらえています。本当に本当にありがとうございます。

***

読み込んでいくほどに中井ルミンの本当の“怖さ”が明らかになっていくミステリーコミックエッセイ。身の回りに彼女のような印象を受ける人がいたら、それは要注意人物かもしれません。

取材・文=宇都宮薫

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