
「夫に浮気された女の顔を見るのは楽しかったですか?」
問い詰めるかりんに対し、その女性は、復讐したい相手がいることをにおわせて去って行ってしまいました。
帰宅する車のなかで夫に聞いたところによると、あの女性の名前はせとか。職場結婚した夫が経理課にいるとのこと。せとかの意図が分からず困惑するかりんでしたが、ここを離れる私には関係ない、と気持ちを切り替えるのでした。
そしてついにかりんが東京に引っ越す日がやってきました。荷造りも終わり、義祖母やツムギとのお別れを済ませ、あとは運送会社が来るのを待つばかり。その後やってきた集荷のトラックに乗っていたのは、なんとあのオオガキくんでした。

「お幸せに」
代金の受け渡しの際にそうささやいた彼の後姿を見送って、かりんの涙は止まりませんでした。
京都駅まで見送りに来た夫。別れる間際に泣き始めた彼に、かりんは引導を渡します。

東京に帰ったきたかりん。夫の好きなロングヘアをばっさり切り、自分がもともと好きだった洋服を買い、旧友との再会を果たしました。今後の人生を、本当の自分で生きはじめたのです。
【ネタバレ】まさに因果応報…
ゆずきの実家では、ストレスを募らせたツムギがボヤさわぎを起こしていました。やがてその火は家全体に…。
その日スナックに出勤中だった義姉は、知らせを受けて実家に駆け付けます。そこで命からがら火から逃れたツムギを、義姉は必死に抱きしめました。

「無事で… よかった…」、絞りだすような声で言った義姉は、この日を境に、実家を出る決意をしました。これまでさんざん自由をしてきた父や、妻をないがしろにしてきた兄は捨てていくつもりです。
一方、ゆずき本人は、かりんとの離婚後、モモと籍を入れました。しかし差出人不明のメールにより、モモを妊娠させたことが原因で離婚したことや不倫現場の写真が暴露され、会社を辞めざるをえない状況に。

しかしそれをモモには言い出せず、暗い表情で帰宅するゆずきからは、香水の匂いがします。その香りに覚えはあるものの、どこでかいだのかは思いだせないモモ。
臨月になったモモは、近所に散歩に出かけます。すると、通りの向こう側に、元先輩社員のせとかがいるのが見えました。すると彼女に一台の車が近づきます。その車に乗っているのは、なんとゆずきでした。

ゆずきとせとかを乗せた車は、ホテルの中に吸い込まれるように入っていきます。その夜、ゆずきはモモの待つ家に帰ってきませんでした…。
翌日、ホテルから出ようとするゆずきの車を待ち伏せしていたモモは、ふたりを問い詰めます。するとせとかは「一緒の部屋に泊まった」と悪びれることもなく言うではありませんか。
「ゆずきくんと付き合う前 私の夫と付き合っていたわよね」

モモの過去の悪行を話しはじめたせとか。モモが優越感を感じるために、不倫相手の妻であるせとかに近づいたこと、そしてゆずきが会社をクビになったことも暴露しました。そして、あの差出人不明のメールは自分がやったものだとも…。
ショックと混乱で、固まることしかできないゆずきとモモをのこし、せとかは去っていきました。

その直後にモモは産気づき、赤ちゃんは無事に産まれました。この一家はどんな運命をたどることになるのでしょう。
***************
実話がふんだんに盛り込まれたセミフィクションである本作。隣人からの嫌がらせに夫の裏切りといったリアリティのあるエピソードの数々、そして怒涛の展開にひきこまれます。不倫夫をスパッと捨て、自分の人生そのものと向き合った主人公・かりんには拍手を送りたい気持ちに!
しかし、本当の意味で恐ろしかったのは「腐りゆく家族」が反復するかもしれないと感じさせるラスト。この不幸な連鎖はどうしたら断ち切れるのか…深く考えさせられます。
文=山上由利子