「日本のみなさん、おつかれ生です。」アサヒビールの「マルエフ」復活の裏にあった思いとは…?
暑さ厳しい今日この頃。よーく冷やしたビールをキューっと飲む瞬間はもう格別ですよね。様々なメーカーから様々なビールが販売されていますが、今回は「アサヒ生ビール」のお話です。
金色とアイボリーのどこか懐かしさを感じるデザインのアサヒビールの缶ビール、「アサヒ生ビール」通称「マルエフ」。「日本のみなさん、おつかれ生です。」のキャッチコピーのCMも印象的ですよね。今やアサヒスーパードライと並ぶアサヒビールを代表するビールとなっています。
じつはこの「マルエフ」、1986年に誕生した後、缶の製造が中止されていたのをご存知ですか? 一部飲食店での樽生ビールの提供は続けられたため、「幻のアサヒ」なんて呼ばれていたこともあるそうですが、2021年に缶ビールとして復活を遂げました。あまりの人気に一時商品の供給が追いつかなくなったことも。
また、全国各地を巡る移動式のイベントカー「マルエフカー」が開催する「出張マルエフ横丁」も大好評です。「マイルド注ぎ」「シャープ注ぎ」などの注ぎ方を選べる他、「マルエフ」と「黒生」混ぜた「ハーフ&ハーフ」なども楽しむことができるそう。
そこで、マルエフ復活の裏話やメーカーおすすめの飲み方をアサヒビール株式会社ビールマーケティング部担当部長の福間啓介さんにお聞きしました!
「マルエフ」ってどんなビール?
――まず最初にマルエフの特徴を教えてください。
福間さん:「マルエフは、アルコール度数はちょっと低めの4.5%、炭酸弱めでやわらかな口当たりと、麦のうまみを感じられる味わいを実現しています。こういった味わいの特徴を、“まろやかなうまみ”と表現しています」
――スーパードライとマルエフでは、味や商品のイメージがかなり違いますね。
福間さん:「味覚面では、『辛口』のスーパードライに対し、『まろやかなうまみ』が特徴のマルエフ。象徴的な飲用シーンとしては『「最高の渇きに、DRY。』のキャッチコピーで、気持ち高まる瞬間や達成感とともにお楽しみいただきたいスーパードライに対し、『おつかれ生です。』のキャッチコピーで、穏やかな気持ちでゆっくりとお楽しみいただきたいマルエフといったところでしょうか」
――「マルエフ」という商品名の由来は何ですか?
福間さん:「商品開発時に、『不死鳥のように復活したい』という想いから、社内呼称として『フェニックス』の頭文字を取り『マルエフ』と呼んでいたことが由来です。しかし、あとになってフェニックスの頭文字は『P』であることに気づき、幸運の不死鳥(Fortune Phoenix)の頭文字である、という由来にひっそりと変更しました(笑)」
――「おつかれ生です。」のキャッチコピーもぴったりですね。
福間さん:「ビール類を普段飲まれる方を対象に行った調査では、「『おつかれ生です。』というキャッチコピーを知ってますか」という質問に「知っている」と回答した方は90%弱でした。ただ、どのブランドのキャッチコピーかを知っている人は、実はまだ半分程度。キャッチコピーと商品はまだまだ結びついていないものの、認知度はとても上がっていると思います」
――マルエフの購買層について教えてください。また、どんな方に飲んでもらいたいですか?
福間さん:「『おつかれ生です。』のキャッチコピーに共感いただき、ビールを飲んでゆったりとした気分を味わいたい方にご支持いただいています。今後は、既存のビールユーザーはもちろんのこと、今まであまりビールに興味を持っていなかった方や若年層の皆さんにも、ビールへのエントリーとして飲んでいただけるブランドになっていきたいと思います」
「人と人とのつながり」の想いを込めて、コロナ禍に復活!
その誕生から復活までの道のり
――マルエフの歴史を教えてください。
福間さん:「マルエフが発売された1986年は、バブル期で景気は良かったものの、アサヒビールは業績の苦しかった時代でした。また、ビールの味はわからないと言われた時代に、消費者の味覚を信じて多くの消費者調査と試行錯誤を重ねた結果、『コクがあるのに、キレがある』という、全く新しい味が誕生しました。そしてアサヒビールを代表するブランドとして『アサヒ生ビール』の名前で売り出され、アサヒビールに飛躍的な復活をもたらしました。
その後、翌1987年にスーパードライが発売、さらなるヒット商品となったスーパードライに生産を集中するため、『アサヒ生ビール』の一般向けの缶は終売となります。一方で、こだわりを持ったお客様や飲食店様にご支持いただいて樽生のみ継続して販売し、飲食店でのみ楽しめる『幻のアサヒ』として、ファンの皆様から愛され続けました。
そして2021年9月、効率化が進み、コロナ禍も相まって人と人とのつながりが感じにくくなってきた日本の皆さんの心に再び灯をともし、ぬくもりのある日本をよみがえらせたい、という想いで、装い新たに缶での発売を復活しました」
――缶で復活したあとは一時、商品供給が追い付かないほどのヒットなりました。
福間さん:「本商品を缶で再発売するにあたり『日本に、ぬくもりを。』をパーパスに掲げ、『開発者の想いが詰まっており、飲食店で愛され続けたマルエフ』を通じて、『生ビールがもたらしてくれる人と人とのつながり』や『生ビールを取り巻く人情味ある空気感』などをお客様に訴求していきたい・感じていただきたい、と考えておりました。
発売当時はコロナ禍で、外出自粛・オンラインミーティングなどでまさに『人と人とのつながり』の希薄さが際立っていました。また、なかなか外に飲みに行けない状況で飲食店への渇望みたいなものもあって、世の中の事情と当社がこの商品に込めた想いが強く合致したことで、お客様の高いご支持をいただくことができたと考えています」
日本全国をマルエフカーが巡る!「出張マルエフ横丁」
――マルエフカーが日本各地を巡る「出張マルエフ横丁」が誕生したきっかけを教えてください。
福間さん:「『飲食店で愛され続けてきた、人と人とのつながりや人情味を感じられる生ビール』を体感いただくために、2022年に『マルエフ横丁』という名称で東京・大阪でポップアップイベントを実施しました。当時、外で飲食することから遠ざかっていたなかで、友人や同僚とビールを飲み交わして、本当にいい時間を過ごしていただいていると思いましたし、我々もぬくもりを感じることができました。
この体験を、日本全国のよりたくさんのお客様にお届けしたいという想いから、マルエフカーを活用し全国津々浦々をめぐる出張マルエフ横丁の展開を検討、実施に至りました」
――全国各地をマルエフカーで訪問されたなかで印象的な出来事があれば教えてください。
福間さん:「初めての試みで、スタートの地である長崎県は、実施したのが駅前など人通りの多い場所ではなかったこともあって、果たしてお客様に来ていただけるだろうかと大変不安になりました。しかし、いざ開店してみると、たくさんのお客様が出張マルエフ横丁をめがけてご来場いただき、大変安堵いたしました。
また、出張マルエフ横丁では、卓上に『おつかれ生です。』と記載したコースターを置いているのですが、お客様が自発的にそのコースターにご自身の想いや『おつかれ生です。』に連なるメッセージを記入してくださいました」
――そういった点でも「おつかれ生です。」のコピーが活きてきますね。
福間さん:「コースターを掲出したことで次の開催地でも同様に、ご来場のお客様がメッセージを書いてくださるという連鎖ができたことが、『人と人のつながり』を生み出した象徴的な出来事のようで感慨深く感じました。今では、想いをのせたコースターを投函いただくポストを会場に備えており、各地で心温まるメッセージをたくさん投函いただいています」
福間さんおすすめ!「マルエフ」を一番おいしく飲む方法は?
――公式サイトで注ぎ方や楽しみ方が紹介されています。ズバリ!おすすめの飲み方を教えてください。
福間さん:「マイルド注ぎがおすすめです。少し高いところから、泡立てるようにグラスに注いだら、泡のはじける音が静まるまで待ちます。ある程度ガスを飛ばすことで、より口当たりがやわらかくなり、マルエフのまろやかさが際立ちます。
また、同じブランドの『アサヒ生ビール黒生』と割る飲み方はおすすめです。代表的な割合としてマルエフ1:黒生1の『ハーフ&ハーフ』と、マルエフ2:黒生1の『ワンサード』を公式サイトには掲載していますが、ゆったり、ちびちびとグラスに入れて、ご自身の好きな割合を探しながら楽しんでいただくのもおもしろいですよ」
福間さんが描く将来の「マルエフ」像とは…?
――「マルエフ」を成長させるための次なる戦略と、今後の目標ついて教えてください。
福間さん:「出張マルエフ横丁や商品サンプリングなどを通じて、より多くのお客様のブランド体験を創出する『日本のみなさん、おつかれ生です。プロジェクト』を2023年下期よりスタートしています。本取り組みを通じて、より多くのお客様にこのブランドの『ぬくもりのある世界観』と『まろやかなうまみ』を体感いただくことで、支持していただけるお客様の数を増やしていきたいと考えています。
そして、『日本のみなさん、おつかれ生です。』のキャッチコピーの通り、ほっと一息つきたいときのパートナーに日本の皆さんが選んでくれるような、『日本の国民的定番ビール』に育成していきたいと思います」
私も大好きな「マルエフ」。「人と人とのつながり」をモットーにたくさんのあたたかい想いが込められていたのですね。福間さんの想いを聞いていると、そんなビールは今年パリオリンピックの観戦のお供にもぴったりだと思いました!「マルエフ」を手に日本選手団を応援したいと思います!
取材=浅野祐介、文=伊藤めぐみ、撮影=樋口涼
文=mm
Information
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