足が不自由な娘の障害年金を使い込む無職の父親。搾取と暴力に耐えかねて娘は夜逃げを決意

 「夜逃げ屋日記4」より

虐待やDV、ストーカーなどの被害者たちの夜逃げを遂行する特殊な引っ越し屋「夜逃げ屋」。
そこで実際に働いている宮野シンイチさんが体当たりで描く、衝撃のコミックエッセイ「夜逃げ屋日記」。最新刊の第4巻では、足の不自由な車椅子の依頼者が登場します。不自由な体でありながらも家族のもとを離れて夜逃げをしたいと考える彼女には、あまりにも切実すぎる理由があったのです…。

このエピソードをご紹介し、宮野さんに当時の状況についてお話を伺っていきます。

【マンガ】「夜逃げ屋日記4」のエピソードを読む

「夜逃げ屋日記4」あらすじ


 「夜逃げ屋日記4」より

今回の依頼者は25歳の女性・松下ホノカさん(仮名)。打ち合わせに車椅子で現れた彼女に、宮野さんは驚き、「家族から離れちゃダメでしょ…」と心の中でつぶやきます。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

しかし彼女の話によると、彼女が12歳で車椅子生活になったときに父親は蒸発。母親と二人暮らししていたものの、ホノカさんが20歳のときに母親が事故で亡くなります。その後ひとりで暮らしていたホノカさんのところへ、蒸発したはずの父親が帰ってきました。

 「夜逃げ屋日記4」より

無職の父親は身の回りのことをしてやると上がり込んできて当たり前のように居着いてしまい、ホノカさんの障害年金や給料、母親の遺産を使い込みはじめました。それどころかホノカさんを車椅子ごと床に倒して蹴るなどの暴力をふるい、「調子乗ってんじゃねえぞ」「もっと申し訳なさそうにしろ」などと言い出します。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

ホノカさんの障害年金の支給日に、父親が必ずお金をおろしに行くことを聞いた夜逃げ屋の社長は、そのタイミングで夜逃げを実行することにしました。振込先の口座を止めてお金を引き出せないようにして時間を稼ぎ、その短い時間の間に夜逃げを結構する計画でした。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

ATMでお金をおろせなくなり電話をかけてきた父親をホノカさんが引き止めている間に、社長や宮野さんたちはマンションの3階から荷物を搬出する作業を行っていました。しかし異変に気づいた父親が帰ってきてしまいます。エレベーターで鉢合わせしないように、ホノカさんと車椅子を担いでかけおりました。

 「夜逃げ屋日記4」より

車にホノカさんを乗せて逃げ出そうとしたその瞬間、父親のかけた電話でホノカさんの携帯が鳴ってしまい、逃げようとするところを父親に見つかってしまいました。しかし父親の罵声を遮るように、ホノカさんは父親にむかって「うっせえ黙れクズ!」「だいっ嫌いよ」と罵声を浴びせかえし、車に乗せられてその場を去るのでした…。

  「夜逃げ屋日記4」より


著者・宮野シンイチさんインタビュー


――依頼者のホノカさんは両足が不自由で車椅子の女性でしたが、最初に会った時の第一印象を教えてください。

宮野さん:
まず単純にびっくりしたのと同時に、漫画にも描いた通り、やっぱり「家族から離れて生きていけるのか」とすごく疑問に思いました。

――ホノカさんは母親を亡くし、無職の父親に障害年金や給料を使い込まれています。父親に経済的に搾取されている彼女の状況を聞いたときの心境を聞かせてください。

宮野さん:
障害年金だけではなく、給料も掠め取って自分の遊びに使っていたというのは、聞いた瞬間何を言ってるのかわからなくて…。怖いというより気持ち悪かったですね。

 「夜逃げ屋日記4」より

 「夜逃げ屋日記4」より

――この時の夜逃げは、父親が銀行にお金をおろしに行く間の短時間で遂行するという緊迫した状況でした。この時の夜逃げについて、最も焦った瞬間や、難しかった局面、またそのときの心境について教えて下さい。

宮野さん:
最も焦ったのは、どう考えても早めに帰宅されたのを確認した時です。
一回車から父親の姿を確認した時は心臓が止まるかと思いました。

――ホノカさんがこれまで自分を痛めつけてきた父親に向かって罵声を浴びせる場面が印象的でした。この時はどんな思いでホノカさんの言葉を聞いていましたか?

宮野さん:
上から父親が叫んできてめちゃくちゃびっくりしましたけど、ホノカさんがそれに負けずと言い返すのでさらにびっくりしました。

  「夜逃げ屋日記4」より

――ホノカさんと接する中で、もっとも印象に残った行動や言葉などがあれば教えてください。

宮野さん:
移転先の家具の配置にすごくこだわっていたのは印象的でした。車椅子での生活だと、やはりそこにすごく気を使うんだなと思いました。普段の夜逃げの依頼の時は、「あとは自分でやるから、適当に置いといて!」と言う方もたくさんいらっしゃるので。

――こちらのエピソードへのSNSの反響などはいかがでしたでしょうか? 読者のコメントなどで印象に残っているものがあれば教えて下さい

宮野さん:
車椅子の方の夜逃げと言うのは、読者の方もあまり想像していなかったようなので驚きの声が多かったです。でもやっぱり、当然ホノカさんの父親に対して皆さん嫌悪感を示されていましたし、これから頑張ってほしい、自分も頑張ろうと思えたというコメントもたくさんありましたね。


  *    *    *

たとえ自由に動かない体であっても、強い意思と行動力があれば、厳しい状況を打破することができる…。夜逃げ屋に助けを求め、父親に対して毅然と向き合ったホノカさんの行動は、痛快でありながらも深い余韻を残すエピソードです。


取材・文=レタスユキ

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