不登校の状況を整理して理解するのに有効な「てんびんの法則」/不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方(2)

不登校の児童は増え続け、令和5年度の文科省の調査によると全国で30万人を超えています。
元小学校教諭の福田遼さんは、憧れの教員となったものの「不登校の現状」に直面。その後、よりよい支援の形を模索するため教員を辞め、世界18カ国の教育現場を回りました。
その経験をもとに、不登校支援に特化した無料のオンラインフリースクール「コンコン」を設立。子どもたちが自分の進みたい方向を見つけ、一歩踏み出す自信を育めるように日々活動しています。
本記事では、福田さんが培ってきた知識と経験をもとに、子どもが自信を取り戻し、将来を前向きに生きていくためのヒントをご紹介します。
「学校に行ってほしい」と願う方、「いろいろ試しても再登校が難しい」と感じている方、登校をしぶる朝が増えて心配な方へ、不登校を新しい可能性へとつなげる視点をお伝えします。
※本記事は福田遼(著)の書籍『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』から一部抜粋・編集しました。
「てんびんの法則」で子どもの状況を見つめよう
まずは、お子さんが今どんな状況にあるのかを知る必要があります。 そこからネガティブな要素を取り除き、前向きな要素を増やして、すこしずつお子さんの背中を押していきましょう。
そこでおすすめなのが、臨床心理士の奥田健次先生が提唱されている 「てんびんの法則※」を使って考えることです。
てんびんの法則とは、「学校」と「家」という環境に注目し、それぞれをてんびんに見立てて考える方法です。学校にも家にも、良いところ・好きなところもあれば、嫌なところもあり、いくつもの要素が混在しています。
そのうえで、不登校というのは、基本的に「学校に行くよりも家にいたい」状態。つまり、家のほうがメリットが大きく、てんびんが家側に傾いている状態と言えます。
一例として、ある不登校の子の状態を下に示しました。

この子のように、てんびんが家に傾いた状態で、「学校に行かないとたいへんなことになるよ」と脅してみても、決して登校することはありません。「みんながんばっているんだから」となだめてみたり、「行けばゲームの課金してあげるよ」とモノで釣ったり、「お願いだから!」なんて懇願しても同じです。
なぜなら、てんびんのお皿のうえにある要素は変わっていないから。 学校には嫌なことや、苦手なことが多いけど、家ではたくさんのメリットが受けられる。だから学校に行くより家にいたいんですね。
不登校を乗り越えるためには、このてんびんを動かす必要があります。 どうしたら、てんびんが学校へ傾くのでしょうか?
たとえば、「算数ができない」というネガティブ要素に着目します。もしも、算数がすごく得意になったら、学校のネガティブ要素がひとつ消えますね。さらには、「授業が楽しい」「発表して評価される」といったポジティブな要素が学校のお皿に載ることになる。この増減で、てんびんが学校へ傾くかもしれません。
または、家のポジティブ要素を減らすやり方も考えられますね。家にあるテレビやゲームなどはやるべきことを達成したあとにできるようにしたり、家にいてもお母さんが外出している状態にするんです。そんな家側のアプローチだけで、てんびんが傾くこともありえます。
子どもが不登校になると、原因を突き止めようとする人が多いです。「なにかトラブルがあったんだろう」と。けれど、原因はひとつではないし、学校だけに原因があるとも限りません。
たとえば、インドア派の人の心の中にも「家が好きな理由」と「外に出るのが苦手な理由」が混在しているはずですよね。不登校も同じで、学校が嫌な理由も、家にいたい理由も、いくつもの要素が混在して、不登校という行動につながっているんです。
だから、まずはてんびんの法則で、客観的にお子さんの状況を整理してみましょう。お子さんの様子、性格、得意なことや苦手なこと、学校での境遇、家の中の環境……。じっくり観察して、お子さんのてんびんのお皿に載っているボールをひとつひとつ可視化していくことが大切です。
付け加えて言うと、自室に引きこもっている場合は、自室とリビングをてんびんにかけたり、別室登校がつづいている場合は、別室と教室をてんびんにかけるなど、この考え方はあらゆる場面で有効に活用できます。
※『メリットの法則』奥田健次著・集英社
著=福田遼/『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』
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