つくろいもので癒される vol.9-1「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ 画像(1/1) 山崎ナオコーラさんのエッセイを連載中! 今回はvol.9-1をお届けします

雑誌『レタスクラブ』で連載中の山崎ナオコーラさんのエッセイ「考えごとで家事を楽しむ」をレタスクラブニュースでも特別公開!

家事に仕事に子育てに大忙しの毎日。実体験に基づいた言葉で語られるからこその共感や、生活を楽しむためのヒントが隠されています。

vol.9「つくろいもので癒される」を4回に分けてお届け。今回は第1回目をお送りします。


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 ボタンが取れたり、ゴムがだるだるになったり、ポケットが剝がれかけたりする。服も小物も、使っていけばぼろぼろになる。

 本当は、靴下の穴なんかもつくろって、できるだけ長く履いていくのが良いのだろうけれど、私はそこまではしない。捨てて、新しく買ってしまう。「時間の方がもったいない」なんて思う。

 でも、子どもの服のアップリケが取れたり、自分のコートのボタンが取れたり、夫のエプロンのポケットが剝がれかけたりすれば、さすがに裁縫箱を出してくる。

 夫は家庭科の授業をサボっていたのだろうか、針仕事はからっきしのようだ。本人はポケットがベロンとなっていてもあまり気にならないタチらしく、独身の頃はおそらくひどい格好で、周囲の同僚やお客さんから「あの人の身なりは、ちょっと……」と思われていたのではないか。今更だが、家族として申し訳ない。夫は本屋で働いている。書店員というのは、わりと肉体労働らしくて、エプロンやズボンや靴の劣化が激しい。そして、ポケットに大量のボールペンやスリップ(本の在庫を管理している紙)を突っ込んで仕事しているみたいで、すぐにポケットがベロンとなる。料理は結婚後に覚えてもらったのだが、夫の性格を考えると裁縫を覚えてもらうのは難しいのでは、と、こちらの方は諦めてしまった。つくろいものはすべて私がおこなっている。

(続く)

文=山崎ナオコーラ イラスト=ちえちひろ