時短やエネルギーの節約にも。整理整頓の価値 モノを元に戻す技術(2)【連載】

#くらし   
片づけのメリットとは


インターネットなどから日々発信される情報に振り回され、いらないモノにも関わらず、整理整頓に、多くの時間を費やしている、現代を生きる女性たちへ。「シンプルライフ」の体現者で、ベストセラー作家のドミニック・ローホーさんが満を持して贈る、豊かな人生を手に入れるための片づけ術のすべて。

片づけをすることによるメリットから、片づけの準備に至るまでの段階を『モノを元に戻す技術 片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく』から全11回までお届けします。今回は第2回目です。

片づけのメリット


【片づけはエネルギーの節約】

“心を和ませ、あらゆる心配ごとや不安から心を解放する技術は、おそらく偉人たちの活力の秘訣の一つだろう。” ──J・A・ハドフィールド

たくさんの人が、毎日「時間がない」と愚痴をこぼします。そうした人たちは、部屋が散らかっていることが疲れや不満の原因の一つであることに気づいていないのです。さらに、その乱雑さが自分たちに、日に何十回も知らず知らずのうちに次のような有毒なメッセージを発していることもわかっていません。「君には片づけをする時間も気力もなかったよ。君の人生は忙しく、いつもやっつけ仕事をしているから、手に負えなくなっているんだよ。コントロールすることなんてできっこないよ」と。

散らかった空間で暮らしているといつも何かを探さなければならず、そのたびに、東洋の概念では時に「生きるために必要なエネルギー」とも言われる自分の「気」を少しずつ吸いとられるのです。それは時間のむだであり、お金のむだでもあります。すでに持っていることを忘れてモノをだぶって買ってしまったり、請求書をなくしてしまって支払うのを忘れたり、冷蔵庫がいっぱいで手の届きづらい奥の方に食品を追いやってしまい、結局、食材を腐らせてしまったりするからです。整理整頓にはたしかな価値があるのです!

【片づいた部屋にいると、よりバランスのとれた、ゆったりとした暮らしを楽しめる】

“私たちの社会は、あらゆる方法で欲求をかき立て、望んだり消費したりすることは生きることと同じだというほどまでに欲望を喚起する。” ──エリック・サブレ『Sagesse libertaire taoïste(道教の絶対自由主義の英知)』(未邦訳)

すべてのものが定位置にあり、部屋のさまざまな部分が仕事エリア、休息エリア、料理エリア、日曜大工エリアなどと巧みに分かれているとき、暮らしはバランスがとれているようです。そうした環境では、「時間を節約する」ためにいくつかのことを同時に行うことがなくなります。どれだけの人がテレビを見ながら料理をしたり、来客とおしゃべりをしながら食器を洗ったり、羊のもも肉を煮込みながら家計簿をつけたりしているでしょう? こうした活動の一つひとつは、本当はそれだけのためになされるべきです。

現代の科学技術のせいで、私たちはていねいに生きること、つまり何をなすにもそれぞれ一つに集中することを忘れてしまっています。非常に住みやすいのにどんどん珍しくなってきた伝統的な家(料理をするためのキッチン、食べるためのダイニング、眠るための寝室、くつろぐためのリビング)に住んでいる人にはわかると思いますが、このような場所で本来すべきことだけをやれば、心はゆったりとし、生きるエネルギーが湧いてきます。今日、ゆったりとした「一見、むだな」、しかしとても大切な時間を自分たちの精神的安定のために割くことがほとんどないのは残念なことです。

【片づけで日々がより楽になり、それが儀式になる】

“優柔不断は結局何にもならない。” ──格言

私たちの行動を妨げるのは疲労です。モノが山積みで散らかった部屋に住んでいると、マニキュアが剥がれているのに気づいたらすぐに除光液とコットンを探しに行ったり、バースデーカードを見つけるために引き出しをあさったりするといった日常のささいなことが、どれもうんざりすることのように感じられます。

反対に、今必要なモノを即座に見つけられるのはうれしいものです。すると部屋を片づけることが習慣化し、いわばそれは「儀式」のようになっていきます。そしてこの儀式がどれほど暮らしを楽にしてくれるか、私たちは知っているのです! 何をいつどこでどうやってするかをいつも考える不安な生活に終止符を打つ儀式は、暮らしをより軽やかに、より執着なく、より自由にしてくれます。儀式はまた、自分に自信を持つことにもつながります。儀式を実行に移すことで、私たちは自分がより「自分らしい」と感じ、気分がよくなります。それが喜びであれ義務であれ、儀式は私たちのために最良の形に部屋を整えてくれるので、自分自身やあらゆるものから自由になるのです。儀式のおかげで私たちは、誇りと個性を持って、いわばよりよく生きることができるのです。

【整理整頓は時間の節約】

“私たちはばかげていて、すべてを征服したがる。まるですべてのものを所有する時間があるかのように!” ──フリードリヒⅡ世『反マキャヴェリ論』

片づけが好きな人もいるのに、なぜ反対に片づけを毛嫌いしたり、ないがしろにしたり、片づけることはまったく時間のむだだと思ったりする人がいるのでしょうか? それは何よりも、片づけに時間を使うことは、すばらしい効果を生むということをおそらく理解していないからなのでしょう。片づけによってもたらされるメリットは、投資した時間をはるかに上回ります。必要なものをすぐに見つけられることで、明らかに時間の節約となり、ひそやかな満足感を味わうことができるようになります。

ひとたび部屋が整えられると、「片づけが大好き」になった人は、不要なものがなく空っぽで完璧に整った住まいが、どれほど安らぎを得られ、時間やエネルギーの節約になるかがわかるのです。自宅においてすべてが片づいていて、散らかりによって身体が束縛されることがなく、すべてのモノが喜びと満足感を持って使用されるとき、心は穏やかになります。心地よい部屋とは、気分がいいという事実すら忘れる部屋です。身体とまったく同じように、心もゆとりや安らぎ、秩序、そして喜びを必要としているのです。

著=ドミニック・ローホー、翻訳=笹根 由恵/「モノを元に戻す技術 片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく」(KADOKAWA)

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Information

モノを元に戻す技術 片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく


モノを元に戻す技術 片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく
フランス流モノに支配されない片づけメソッド。本書では、オーソドックスな片づけのテクニックに加え、箱やキャビネット、フック、カーテン等を最大限に活用する創意工夫の数々を提案します。一つひとつのモノを定位置に戻すと、結局は自分のための時間を手に入れることができるのです。

▼単行本情報はこちらから

著者:ドミニック・ローホー
著述家。フランスに生まれる。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリスのソールズベリーグラマースクール、アメリカのミズーリ州立大学、日本の仏教系大学で教鞭をとる。アメリカと日本でヨガを学び、禅の修行や墨絵の習得などをとおし、日本の精神文化への理解を深めてきた。

翻訳:笹根 由恵
フランス語通訳・翻訳家、フランス語・英語通訳案内士。オペラなどの歌劇からビジネス、各種スポーツの国際大会まで幅広い分野で通訳として従事。書籍の翻訳業務も行う。

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