雑誌『レタスクラブ』で連載中の山崎ナオコーラさんのエッセイ「考えごとで家事を楽しむ」をレタスクラブニュースでも特別公開!

家事に仕事に子育てに大忙しの毎日。実体験に基づいた言葉で語られるからこその共感や、生活を楽しむためのヒントが隠されています。

今回は、vol.21「子どもの爪切り」をお届けします。

子どもの爪切り vol.21「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ 画像(1/2) 山崎ナオコーラさんのエッセイを連載中! 今回はvol.21「子どもの爪切り」をお届けします

「名もなき家事」という考え方が、ここ数年、話題になっている。

 料理、洗濯、掃除、などのわかりやすい項目だけではなく、トイレットペーパーの交換だとか、ゴミの分別だとか、子どもとの会話だとかも、立派な「家事」であり、大きな手間がかかっている、そのことを家族間で認識し合い、シェアしよう、という考え方だ。

 その「名もなき家事」とされている項目が、とある記事でまとめられていたので、ぱらぱら見た。「そうか。これも、家事って言っていいのか」と改めて気づかされる項目が結構あった。

 中でも、一番驚いたのは、「子どもの爪切り」という項目だった。

 確かに、と膝を打った。子どもの爪切りには、時間も精神力も使っている。結構な「労働」かもしれない。

 赤ちゃんだったときは、ミニハサミみたいな爪切りで、ものすごく小さな手に付いている紙石鹸のように薄い爪を、そおっと切った。ちょっとでもずれると血が出てしまいそうで、毎回、ドキドキした。起きていると動き回って危ないから、寝ている間にこっそり切ったこともあった。他の家事や仕事もたくさんある中で、「爪が伸びていないかな?」「機嫌が良いかな?」「寝ている間に切れるかな?」と考えながら、切るタイミングを見つけていくのがなかなか難しい。生まれてすぐの赤ちゃんは、顔が傷だらけのことが多いのだが、あれは自分の爪で顔を引っ掻いている。まだ自分に手があることも、顔があることもわかっていないから、「引っ掻かないように気をつける」だとか、「引っ掻くと痛い」だとか、まったく思わないのだろう。赤ちゃん本人は気にしていない感じだが、傍目には頰に入った斜めの傷は「迫力のある顔だなあ」と気になってしまう。だから、こまめに切る。指の面積が少ないからだと思うのだが、週に三回くらいは切らないと「伸びた感じ」になった。

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