口をあけようとすると痛い、音がする、あかない・・・それ「顎関節症」かも
口をあけようとするとあごが痛い、音がする、口があかない、などで知られる顎関節症。 実はそんなに珍しい病気ではなく、トレーニングでほとんどの人が改善できるそうです。
■一生涯で2人に1人は経験する病気
口をあけようとするとあごが痛い、あごを動かすときに音がする、口が大きくあかない。このような症状があるとき、その多くは顎関節(がくかんせつ)症です。軽い症状まで含めるなら、一生涯に2人に1人は経験するといわれているほどで、珍しい病気ではありません。
「顎関節症は、あごの骨の関節を構成する骨、筋肉、靭帯(じんたい)といった構造のバランスが崩れることで生じます。自然に改善する人が多く、本当に治療が必要な人は5%ほどです。音がするだけで痛みが伴わないなら、様子を見ていてもいいでしょう」と木野孔司先生。
「原因はかみ合わせや歯ぎしりではないかと研究されてきましたが、1つの原因で説明することは難しく、現状では社会生活や人間関係におけるストレスや精神的な問題など、さまざまな原因が積み重なって、顎関節症を生じさせると考えられています」
ただし、ある癖があると顎関節症を引き起こす危険性が高まることが、木野先生らの研究で明らかになりました。「歯列接触癖(Tooth Contacting Habit)、略してTCHという習癖です。痛みを訴える患者さんの8割がこの癖を持っています。しかし、癖を直すことで顎関節症は早期に改善します」
平常時、人間の上下の歯は接触していません。唇を閉じていても上下の歯は触っておらず、会話や食物の咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)という動作をするときに瞬間的に触れるだけです。本来の上下の歯の接触時間は1日で20分ほど。なぜなら、触れたら離すという条件反射が人間には本来、携わっているからです。ところが、幼い頃から「口をポカンとあけない!」と注意されたり、勉強や仕事など緊張を強いられる事柄が多くなるにつれ、上下の歯を接触させることが多くなり、触れさせているほうが自然になってしまった人がいます。たとえ強くかんでいなくても、接触させただけで口を閉じる筋肉は働くので、接触時間が長ければ長いほど筋肉は働き続けて疲労します。また、同時に顎関節は押さえつけられることになるので、血流が悪くなり、感覚が敏感になって痛みを感じやすくなってしまうのです。
■顎関節症チェック
次のような症状や、当てはまることがあれば、顎関節症の可能性があります。
●口をあけようとすると痛い
●口が縦に大きく(指2本分以上)あかない
●あごを動かすと音がする
●唇を閉じているとき、上下の歯が接触しているほうがラク
■トレーニングでほとんどの人が改善できる
「TCHの癖がない人は、マウスピースを使用することで治りますが、癖の ある人は治りません。TCHを改善するトレーニングが必要になります」
トレーニングは、取り組めば100%成功するそうなので、あとに紹介するやり方を参考にぜひ始めてみてください。
「これまで一般的に顎関節治療として行なわれてきたことは、痛みがあれば鎮痛薬、かみ合わせが悪ければ歯を削って矯正したり、マウスピースを入れて症状が改善するのを待つという治療でした。しかし、顎関節症の症状が消えていないのに、症状解消の目的で矯正やかぶせ物治療を受けてはいけません。まずはTCHを疑って、改善することから始めてみましょう」
■TCH改善トレーニング
まずは上下の歯が触れていないことが自然であると認知することが大事です。
次に、部屋じゅうに「歯を離す」「リラックス」「力を抜こう」などと書いた紙をペタペタ貼ります(リボンやシールで代用してもOK)。そして、それを見た瞬間、フッと体の力を抜くアクションとともに、上下の歯を離します。これを続けていれば、平均して2~3カ月で治ります。
【東京ウォーカー/記事提供=レタスクラブ】
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Information
東京医科歯科大学准教授。1976年、東京医科歯科大学歯学部卒業。専門は顎関節口腔(くう)機能学。顎関節症治療の第一人者として名高い。「次世代の顎関節症治療を考える会」
イラスト/カモ 編集協力/岸田直子
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