Twitterフォロワー64万人『ゲイ風俗のもちぎさん』LGBT、毒親の呪縛からの解放、初恋の恩師との再会…今だから語れること

#くらし 

■母に包丁を向けられても虐待だとは思っていなかった


子ども時代を奪われたまま大人になってしまった少女のような母親だった

包丁を向けられても憎みきることができなかった

母親に包丁を向けられても実は虐待とまでは思っていなかった


――母親の優しい眼差しが脳裏をちらついて、包丁を向けられても憎みきることができなかったという話が悲しく印象的でした。そんな母親の呪縛からどうやって逃れることができたのでしょうか。

当時、母親に包丁を向けられても実は虐待とまでは思っていなかったんです。「毒親」なんて言葉もなかった時代ですからね。ただの親子喧嘩の延長くらいにしか捉えてなくて、呪縛なんて意識したことすらありませんでした。
大人になってから当時のことを思い返してみたり、毒親持ちの人と話したりして、「やっぱりあの環境はおかしかったんだな」とはじめて気付くことができたんです。気付いた頃には結果的に生き延びちゃってたので、自分はただ運がいいだけのサバイバーなんですよ。
もし当時から自分の母がいわゆる毒親だと気付いていたら、そのことで心がしんどくなることもあっただろうし、ふらっと家を出るという選択もできなかったかもしれないです。

――前回のインタビューでは、子供時代を奪われたまま大人になってしまった少女のような母親だったとおっしゃっていました。そんなふうに自分の母親のことを客観的に見ることができたのはなぜですか?

ふたつの距離をとったからです。ひとつめは物理的な距離。当時住んでいた団地は、玄関開けたら居間も寝室も丸見えになるような狭い空間で、常に母親が目の前にいる環境だったんです。そこから離れてひとり暮らししたら、「なんで実家では机でご飯を食べちゃあかんかったんやろう」とか、母親のおかしな点を冷静に考えられるようになりました。
ふたつめは心理的な距離。物理的な距離をとったのと同時に「ひどい親でも実の親なんだから孝行すべき」という気持ちをバッサリ捨てたんです。母親のことを客観的に書けるようになったのは、このふたつの距離を何年も離していたからだと思います。

■「作家になりました」と言える今なら会える。初恋の恩師と15年ぶりの再会


中学時代の恩師で初恋のK先生との再会


――作中で中学時代の恩師で初恋のK先生との再会がありました。なぜ今、会おうと思えたのでしょうか。

先生とは15年以上会っていなくて、もちぎとしての活動も明かしていませんでした。すでに定年したおじいちゃん先生に、自分はゲイであなたのことが好きでしたなんて内容の作品を見せて負担をかけてしまうわけにはいかないから。でも今回、小説を出せることが決まったことで、あたいの人生で避けて通れぬ人として先生に会ってみようと思ったんです。どんな本かは言えなくても、国語の先生である彼に「作家になりました」という報告ができるのなら、今のタイミングで会ってもいいんじゃないかなって。

――久しぶりに連絡して、先生はどんな反応でしたか?

電話で「会えますか?」と聞いたら、「全然行けるよ!」とあっさり約束を取り付けてくれたことが嬉しかったです。小説のゲラ(※校正紙)をちらっと見せたら、「やるやんけ!自分の授業を受けて小説家になるって考えてくれた子は他にいなかったわ!」ってすごく喜んでくれて。先生は15年も経っても自分やクラスメイトのことをはっきり覚えていて、「お前が一番どうなったかわからなくて心配だったわ」と言われました(笑)。

――その時にまた恋心が再熱したり…なんてことは?

それが全然なかったんですよ(笑)。当時は周りにゲイもいなかったし、年上男性への憧れで魅力的に見えてた部分もあるのかな。今となってはゲイ業界にどっぷりはまって目が肥えすぎちゃったみたい(笑)。先生は至って普通のお方でした。 

――最後に今後もちぎさんが発信していきたいことをお聞かせください。

これまで過去の話を書いてきたので、これからは30代になった今のもちぎがどういう生き方をしてるのか、少しずつ発信していけたらいいなと思います。
昔の作家さんって本屋さんくらいでしか名前を見る機会がなかったけど、今はSNSでたくさんのフォロワーさんと直接言葉を交わし合うことができる時代。ツイッターでいつも見てるもちぎの本だから読んでみようと思ってもらえるような、身近な存在として寄り添っていけたら嬉しいですね。

――最後に、「いつかは自分の店のゲイバーを持って、ツイッターのアイコンだけじゃない生のもちぎを出していけたらいいなとも思ってます」と語ってくれました。淡々とした語り口調だけど、いつもそばにいて話を聞いてくれそうな、やわらかな空気を纏うもちぎさん。そんなもちぎさんにこれからも注目していきます!



取材・文=宇都宮薫

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