時間は長さより濃さ!正の感情が時間を豊かに ゆるっと哲学(3)
ベルクソン
スケジュール帳を予定で埋めるほど「焦燥感」に駆られる理由
私たちは普段、1日を24時間に区切って、その中で、「この時間は○○をしよう」「この時間は△△しよう」とスケジュール帳を埋めるように、何かをすると思います。
時には、「アレもやらなくちゃ…これもやらなくちゃ…あっ! もうこんな時間」と時間に追われることもあると思います。
時間は誰にでも平等。
これは、一見当たり前のこととして捉えられています。凡人だろうが、天才だろうが、1日は等しく24時間です。しかし、私たちが普段感じている時間は、スケジュール帳や時計などいわば、「量」や「数値」に縛られた時間なのでしょうか? フランスの思想家アンリ・ベルクソンは、私たちが意識で感じる時間は、決して区切れるものではなく、流れるような「純粋持続」だと言います。
「純粋持続」とは、「意識の中にどんどん現れる感情や記憶が、お互いに溶け合って、流れていくような時間」を表します。そう言うと難しそうに聞こえますが、これは、私たちが普段、無意識に感じている時間の流れです。
たとえば、好きな曲を思い浮かべてみましょう。もし、その曲のことを知りたいと思って、その曲から一つの音を切り取っても、何も感じとれません。
一方、いろんな音が溶け合って、メロディーになると、私たちはその曲を「流れ」として感じることができます。この時、私たちは、音楽を「純粋持続」として感じている、と言えます。
この「純粋持続」では、時間はもはや「量」ではありません。それは、様々な「強度」を持つ「質」です。
たとえば、私たちは、何かに熱中した後、「濃い時間を過ごしたなぁ」と思うことがあります。ここにあるのは、その時間の質の強さ(濃さ)であって、決して量ではありません。たとえば同じ1時間を過ごしたとしても、その感じ方は人それぞれでしょう。
そういう意味で、「時間は不平等」とも言えるです。
没頭した時間=自由な時間
そして重要なことは、「純粋持続」の中で生きている限り、私たちはすでに「自由」だと、ベルクソンは言っていることです。
自由行為は流れた時間ではなく、流れる時間の中で行われるものである。したがって、自由とは一つの事実であり、確認される諸事実の中でも、これほど明瞭なものはない。
『時間と自由』
もし、「忙しくて時間がない」と思ったら、「純粋持続」のことを思い出してみてください。
忙しいと思うのは、時間を量として捉えていることが原因かもしれません。私たちが本来、感じる時間は、時計やスケジュールに縛られたものではありません。スケジュール帳をムリに予定で埋めようとする人ほど、「時間貧乏」になり、焦燥感に駆られがちになる理由は、ここにあります。
最後に、ベルクソンのこの言葉を紹介しましょう。
自由に行動するということは、自己を取り戻すことであり、純粋持続のなかに身を置き直すことなのである。
「たくさんの時間」ではなく、「濃い時間」を過ごすように心がけましょう。
「本当にやるべきこと」「本当にやりたいこと」は、その延長線上にあるかもしれません。
アンリ・ベルクソン (Henri-Louis Bergson) 1859ー1941
フランスの哲学者。具体的な生は、創造的な進化の活動だとし、「生の哲学」を提唱した。著者には、時間について考察した『時間と自由』や、「イマージュ」という概念を提起した『物質と記憶』などがある。
著=ただっち、監修=小川仁志/「不安を力に変える ゆるっと哲学」(ぱる出版)
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書籍情報
『不安を力に変える ゆるっと哲学』
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