【#令和サバイブ】介護が終わった私たちから介護未経験者のあなたへ、今伝えたいこと

#くらし   
「その時」に慌てなくて済むように

誰もが直面する、親の「老いと介護」。
今の時代だからこそ考えたい、親の老いと介護との向き合い方をお伝えしてきた本連載。最終回の今回は、介護経験者のブロガーお二人に、介護を終えたいま思うこと、そして介護未経験者へ伝えたいことを伺いました。

なとみみわ
50代前半のイラストレーター。義母の「ばあさん」(2018年、88歳で他界)の介護エピソードを中心としたブログ「あっけらかん(現・あっけらかん〜第2章〜)」管理人。

山田あしゅら
50代後半。義父・太郎を2019年(享年90歳)、義母・はな子を2020年(享年95歳)にそれぞれ見送り、現在は夫と二人暮らし。義父母の介護の奮闘を綴ったブログ「13番さんのあなー介護家庭の日常(現・13番さんのつぼ)」管理人。


歩けない?認知症? 介護はある日突然やってくる

なとみ:我が家の介護は突然始まりました。義母が長期入院した後に、もう一人暮らしは無理ということでそのまま同居することになったんです。一緒に住んでしばらくして義母が歩けなくなってしまったときは、「いよいよ来たかー!!」と思いましたね。一日中付きっきりで支えながら病院に連れて行ったりして本当に大変でした。

山田:うちの場合はもともと義両親と30年同居していました。最初に義母の様子がおかしいと思ったのが、通っていたお稽古の教室からバスを乗り間違えて自宅に帰ってこれなくなってしまったこと。それから認知症の症状が徐々に出始めてじわじわと介護がはじまっていった感じです。

なとみ:30年は長いなぁ〜。うちは月に1回会う程度だったから、お互いにどんな人なのかちゃんとはわからないまま、勢いで一緒に住むことになったんです。もっと自分の親みたいに甘えられる関係性を作っておけば、介護が始まってもお互いに気をつかわなくて済んだのかなって思ったりします。

なとみみわさんなとみみわさんは、お互い気を使っていたことについて、「実の子のように甘えておけば」と振り返ります

山田:長く同居していると、それはそれで嫌なところも全部見えちゃうからなかなか難しいですけどね(笑)。私も最初は「私がおばあちゃんの面倒みるの?」ってすごく腰が引けていました。でも相手は生きてる人間なので、ご飯も食べれば排便もするし、一緒に暮らしている家族としてはそれをほっておくことはできないんですよね。結局、好きも嫌いも関係なくやらざるを得ないのが介護なんだと思います。

介護って情報戦。ネットのつながりに救われた

なとみ:突然介護が必要と言われても、初めはどうしたらいいのか何もわからなかったです。義母と同居するために引っ越ししたら、まずは地域包括支援センターに行って、とにかくわからないことは全部相談しました。

山田:やっぱり介護は家族だけじゃできないんですよね。地域包括支援センターとかケアマネージャーさんとか、助けになってくれる窓口はたくさんあります。ただ、よく「介護は情報戦」と言われるんですけど、自分で積極的に情報を取りに行かないと、肝心なことは誰も教えてくれなかったりするんですよ。たとえば私の住んでいる自治体ではおむつ券が発行されているんですが、自分で調べて申請しないと自動的にはもらえません。とても助かったのが、自宅のトイレを和式から洋式に改修する際、自治体独自の補助制度が活用出来たこと。これも市で開催していた講座に出た時に、たまたま補助金の話が出て知ったんです。どこにどういう情報が落ちているかわかりませんが、とにかく自治体のホームページなどはしっかり見ておいたほうがいいですね。

山田あしゅらさん自分で積極的に情報を取りに行かないと、肝心なことは誰も教えてくれなかった、という山田あしゅらさん

なとみ:やばい…私、結構見落としてたことあるかも…(笑)

山田:介護してるとそれだけで手一杯になっちゃうから、なかなか自分から進んで情報にアクセスするのって難しいですよね。

なとみ:そうなんですよね。私は介護ブログのコメント欄がとても役に立ちました。たとえば杖の話をすると「うちはこうしたよ!」とかたくさんの介護当事者からの情報が集まるんですよ。

山田:ブログの存在は大きいですよね。情報が集まるのはもちろん、ご近所さんには言えないようなこともブログでスッキリ吐き出せて、心のよりどころになっていました。

なとみ:うちの姉が母と同居している時、自分勝手な母に対して「腹が立ってしょうがない」と怒っていたんです。その時に「だったらそれをブログに書いてみなよ」と勧めました。なんで自分は怒っているんだろうって文章に落とし込むことで、頭の中が整理されて気持ちが落ち着いてくるんです。それに何が起こってもネタになると思えば、母のことも楽しく見守ることができるよって(笑)。

山田:ブログは家族の回覧板的な役割も果たせます。うちの主人は最初、介護に全くノータッチで、何かというと仕事だと言って逃げていたんです。でもストレートに文句を言っても揉めるだけなので、夫にはブログを通して介護の現状を知ってもらいました。夫は会社でこっそり私のブログを読んでいて、思うところがあったのか、最終的にはとても協力的になってくれました。

なとみ:ブログはハードルが高くても、今はSNSでも気軽に発信できますしね。孤独になりがちな介護もネットを使えば繋がれる相手がいるよというのはお伝えしておきたいですね。

介護が始まるその前に。夫婦、きょうだい、家族で話しておくべきこと

なとみ:介護の役割分担について、夫とは何度も喧嘩しました。これまで家のことを何もしてこなかった夫にいきなり「これやって」「あれやって」と言っても全然動けないんですよ。夫婦でどんな子育てをしてきたかも介護にも影響してくるから、今、子育て中の世代には夫婦の協力体制を整えておいてほしいと声を大にして言いたいですね。

山田:うちの主人も子どものおむつなんて一度も替えたことなかったです。でも今は昔よりずっと子育てに積極的に関わる男性が増えていますよね。息子夫婦を見ていてもびっくりしちゃうくらい。だから今の若い世代の人たちのほうが介護も協力しあってうまくできるのかもしれないって思います。

なとみ:そうそう。若い人は考え方も柔軟なので、親の介護のことも少しずつ話しておくといいですね。あと、親の介護をするにあたっては、夫婦だけじゃなく、きょうだいとの関係性も重要ですよね。きょうだいで同じ熱量を持って親の介護にあたるのはすごく難しい。

山田:主人に弟がいるんですが、ほとんど関わりがないんです。子どもが小さい頃は一緒に旅行に行ったりもしたけど、介護が始まってからは全く意思の疎通ができなくなってしまいました。本当は介護が始まる前に兄弟で腹を割った話ができたらよかったのになと思います。

なとみ:そうですね。まだ元気なのに、そんな先のことを考えるなんて縁起が悪いとかって言うじゃないですか。すごく大切なことなのに。親自身とも介護が必要になったらどうしたいのか話しておくべきですよね。なかなかそういうことを話すタイミングってないかもしれませんが…。いつがいいんでしょうね。

山田::今でしょ。今夜にでも!明日どうなるかなんて誰にもわからないですもんね。夫婦、きょうだい、家族とうまくすり合わせてやっていくことが、介護をスムーズにまわすポイントでしょうね。


近い未来に訪れる介護のために、夫婦と、家族と、日ごろからコミュニケーションをとりましょう

全5回の記事を通し、近い未来に訪れる親の介護問題について考えてきました。
レタスクラブユーザー413人(23歳以上既婚女性)のアンケートでは、介護未経験者266人のうち「親と老後について話し合いをしたことがない」人は約7割。介護護未経験者できょうだいがいる245人のうち、「親の介護についてきょうだいと話し合ったことがない」人も約7割。そして介護未経験260人のうち「互いの両親に介護が必要になったときの対応が夫婦で固まっている」のは、1割にも満たないという結果に。

話したくてもなかなか話し合いえない状況について、専門家は次のように語っています。

介護者サポートネットワークセンター・アラジンのスタッフ・森川恵子さんは、「親の希望が分からないまま延命治療などの判断をすることは、子にはつらいこと。親の現在の友人関係や近所とのつながりなど、身近なことから少しずつ話して」と言います。

介護者メンタルケア協会の橋中今日子さんは、介護の役割分担について「離れているきょうだいなら情報収集をしたりオムツなどかさばるものを宅配で届ける。夫婦なら各種の手続きや家事など得意なことでサポートを。できることはたくさんあります」と。そして、きょうだいや夫婦は「介護中の痛みを分け合える存在になれる」と勇気づけてくれました。

介護が始まってからでは、ゆっくり向き合って考える時間も心のゆとりもありません。介護を一人で抱え込まないためにも、家族のよりよい未来のためにも、話をする勇気が大切だとわかります。親やきょうだい、夫婦間で、今から少しずつでも話しあってみませんか?

取材・文/宇都宮薫 ほなみかおり
【レタスクラブ(WEB)編集部】

◇「#令和サバイブ」
この記事はレタスクラブとYahoo!ニュースの共同連携企画です。
家族と介護をテーマに令和の時代をどうサバイブするか考えます。今は仕事や子育てで手一杯。でも、着実にやってくる親の老い。それに対して私たちはどう向き合うべきでしょうか。自分の少し先の未来や家族について考えるヒントを、全5回の連載でお伝えします。


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