グローバル化が招く感染拡大/岡田晴恵先生の「家族と自分を感染症から守るには」(4)

#くらし   
感染拡大も地球規模に

『家族と自分を感染症から守る本』4回【全11回】


ニュースで毎日目にする「新型コロナ」の文字。パンデミックによって、感染症は身近な病気なのだと改めて意識した人は多いのではないでしょうか。

でも、感染症は新型コロナウイルスだけではありません。
家庭でよく起こる様々な感染症について、感染症研究の専門家である岡田晴恵先生が、イラストと図解でわかりやすく解説した『予防と対策がよくわかる 家族と自分を感染症から守る本』。本書から、知ってるようで知らない「そもそも感染症って何?」や、今さら人に聞けない「日常生活で気をつけることは?」といった基本的知識をご紹介します。

症状や対処法を知って日頃からできることを実践し、大切な家族と自分自身を守っていきたいですね。

※本作品は著/岡田晴恵、監修/小林弘幸の書籍『予防と対策がよくわかる 家族と自分を感染症から守る本』から一部抜粋・編集しました

グローバル化と感染症

人・物・情報等が国境を越えて移動しやすくなることをグローバル化といいます。それは病原体や感染症も移動しやすくなるということでもあります。

1.感染拡大も地球規模に

さまざまな恩恵をもたらすグローバル化ですが、その負の面のひとつに感染症の拡大が速くなることがあげられます。今まで人があまり入らなかったような密林まで開拓・開発され、そこで発生した新しい病原体の感染症が、あっという間に世界中に広まってしまう時代が21世紀です。

グローバルな視点で感染症のリスクについて考えてみると、20世紀の蚊が運ぶ感染症から、21世紀はコウモリ由来の感染症の流行へと変遷してきています。マラリアやデング熱などの蚊によって媒介される感染症から、SARS・エボラ出血熱・新型コロナウイルス感染症などのコウモリ由来の感染症に脅威が拡がってきているようにも見えます。

感染拡大も地球規模に


2.一例としての狂犬病

日本には2021年7月現在報告はありませんが、海外では多くの国で存在する狂犬病について見てみましょう。病原体は狂犬病ウイルスで、イヌだけでなくヒトを含むすべての哺乳類が感染します。アジアでは主にイヌなど、ヨーロッパではキツネなど、南米ではコウモリなどさまざまな哺乳類から感染の危険性があります。

発症した場合、極度の興奮や幻覚、水を飲む際や風にあたった際のけいれんなどの症状を示し、致死率はほぼ100%という恐ろしい病気です。治療法はありませんが、ワクチン接種による予防が可能であり、噛まれた後でもワクチンによって発症を防げる可能性があります。

日本では1950年に狂犬病予防法が制定され、予防接種や野犬の抑留などの結果、わずか7年で狂犬病は撲滅されました。しかし、海外に渡航したり、医療の脆弱な地域に滞在したりする場合は、ぜひ知って予防したい感染症です。狂犬病発生地域ではむやみに動物に触れてはいけません。万が一噛まれてしまったり、なめられたり、ひっかかれたりした場合は傷口を石鹸と流水で15分以上よく洗い流し、ただちに現地の医療機関を受診しましょう。

著者プロフィール

著/岡田晴恵

著者/岡田 晴恵
白鷗大学教育学部教授。共立薬科大学大学院修士課程修了、順天堂大学大学院医学研究科博士課程中退。アレクサンダー・フォン・フンボルト奨励研究員としてドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所に留学、国立感染症研究所研究員、経団連21世紀政策研究所 シニア・アソシエイトなどを歴任、現職に至る。

 監修/小林弘幸

監修/小林 弘幸
順天堂大学医学部教授、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学大学院医学研究科(小児外科)博士課程修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科学講師・助教授を歴任、現職に至る。自律神経研究の第一人者としてプロスポーツ選手・アーティスト・文化人へのコンディショニング・パフォーマンス向上指導にかかわる。

著=岡田晴恵、監修=小林弘幸/『予防と対策がよくわかる 家族と自分を感染症から守る本』(KADOKAWA)

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