ワイン入りの割下でさっぱりと!大人味の「究極の牛丼」【「最高の」料理の作り方】(4)

#食   
究極の牛丼

『最高のおにぎりの作り方』4回【全4回】


レシピどおりにお料理を作ると、しっかりおいしくなりますよね。
しかし、「なぜ」おいしくなるのか? 深く考えることって、実はあんまりないかもしれません。

それを科学的にアプローチし、家庭料理をおいしくするコツを提案するのは、noteで人気の料理家・樋口直哉さんです。

スーパーで手に入る食材を使い、家庭のキッチンで合理性を追求し、最短距離でおいしさにたどりつく…樋口さんはこれを目標に、きちんとおいしいのに簡単で、理由がはっきりしているからおいしくできるテクニックを紹介しています。

今回は、なぜこの工程が必要なのか、どうしておいしくなるのかを科学的に分析し、説明をお送りしながら、おうちで真似できる調理の方法をお教えします!

【最高の作り方の目指すところ】

肉がぱさつかず甘すぎない大人の味

ワイン入りの割下でさっぱりとした味に

◆材料(2人前)
黒毛和牛(切り落とし)  250g
玉ねぎ 1/2個( 5mm厚のくし切り)
〈割下〉 
 みりん 150cc
 白ワイン 50cc
 醬油 50cc
ご飯 どんぶり2杯分
温泉卵 2個
海苔 1/2枚(手でもみほぐす)
青ネギ 適量(小口切り)

◆工程
1 ワイン入りの割下をつくる。小鍋にみりん、白ワイン、醬油を入れて強火にかける。沸騰したら弱火に落とし30秒間煮て、火を止める。

ワイン入りの割下をつくる。小鍋にみりん、白ワイン、醬油を入れて強火にかける。


2 1の割下100ccと玉ねぎを鍋に入れ中火にかけ、沸騰したら弱火に落とす。

1の割下100ccと玉ねぎを鍋に入れ中火にかけ、沸騰したら弱火に落とす。


3 別の鍋に残りの割下150ccを入れ、中火にかける。鍋底からふつふつと泡が浮いてきたら、牛肉を1枚ずつ広げ入れる。しゃぶしゃぶの要領でさっと火を入れたら、玉ねぎを煮ている2の鍋に移す。

別の鍋に残りの割下150ccを入れ、中火にかける。


4 すべての肉が2の鍋に入ったら火を止めて、全体を混ぜ合わせる。熱々のご飯の上にのせ、温泉卵、揉み海苔、青ネギを散らす。

すべての肉が2の鍋に入ったら火を止めて、全体を混ぜ合わせる。


【おいしさの根拠】

ワイン入りの割下でさっぱりとした味に


今では日本の国民食と言える牛丼。戦前の牛丼は内臓や牛すじ、小間肉などの安価な部位の肉を煮込んだものをご飯にかけたものでしたが、戦後になると現在のような「すき焼き型」に変化します。東京ローカルのストリートフードだった牛丼はチェーン店の広がりによって、日本中どこでも食べられるようになりました。

安価な牛丼は外食したほうが経済的なので、自分でつくるなら究極の牛丼といきましょう。究極の牛丼に使う肉は黒毛和牛の切り落としを選びました。すき焼きに使うような上等な部位です。

さきにもふれたとおり、黒毛和種は日本独特の品種。筋繊維のあいだに脂肪がマーブル状に入っている=霜降りが特徴で、加熱するとその脂が溶けるので、とろけるようなやわらかな食感になります。霜降りは長所ですが、脂っぽさという短所にも繋がります。また、脂が多くなると味もそれだけ濃くしなければいけません。そこでこの作り方では150ccの割下で加熱することで、余分な脂を落とす方法を採用しています。つまり、玉ねぎと牛肉を分けて加熱するのです。

鍋底からふつふつと泡が立ちはじめたら割下の温度が85℃くらいになった合図なので、このタイミングで肉を加熱していきます。肉を加熱するのに適した温度は60℃前後。もしも、沸騰した状態(100℃)で加熱すれば、中まで火が通ったときには外側が加熱しすぎた状態になり、パサパサになってしまいます。かといって温度を低くしすぎると調理時間が余分にかかり、脂も落ちてくれません。

85℃のところに冷たい肉を入れると80℃くらいになります。この温度が仕上がりの食感と調理時間のバランスがとれるベストな温度。80℃以下で加熱することで和牛独特の香りの元であるラクトン類という香気成分を最も引き出すこともできます。

一方の玉ねぎのほうはくつくつと煮込みます。あんまりかたいのも困りますが、あまり煮すぎるとクタクタになってしまうので、それより前に加熱を止めることが重要です。

さて、この牛丼。割下に秘密があります。割下に普通用いる日本酒の代わりに白ワインを使っているのです。白ワインを入れることで酸味が加わり、すっきりした味に仕上がります。

じつはあの吉野家の牛丼も白ワインベースの発酵調味料で味付け(そこにしょうがが入るのが吉野家の特徴)されています。このレシピはそこからヒントをもらいました。白ワインを赤ワインに代えても、違った風味を楽しめます。

炊きたてのご飯に載せて、玉ねぎの甘みが溶けた割下を適量かけます。温泉卵と手でもんで細かくした海苔、青ネギの小口切りを載せれば完成。丼ものは味のついていないご飯とちょっと濃い目の具材のバランスがすべてです。あ、あとご飯をかために炊いておくのも忘れずに。

※本記事は樋口直哉著の書籍『最高のおにぎりの作り方』から一部抜粋・編集しました
作=樋口直哉

この記事に共感したら

おすすめ読みもの(PR)