どこに相談したらいい? ヤングケアラー問題に対して私たちができること

家族のケアを行っている18歳未満の子どもが周囲にいるか聞いたところ、4.2%の人が「いる」と回答。また、ヤングケアラーの支援について、どんなことが必要だと思うか尋ねると、以下のような声が上がりました。
「困った時にどんな手段でどのように解決したらいいのかわからないと思うので、『ここに相談したらこんな解決策があるよ』と広く提示しておいてほしいです」
「ケアが必要な方への支援をするサービスが必要。また、現在ヤングケアラーとなっている子どもたちを助けられるよう教師、保健師など家庭と繋がる機会のある専門職が、家庭内の実情を知ることが大切」
「まずは当事者自身が『自分はヤングケアラーだ』と自覚する必要がある。ヤングケアラーの中には自分の状況を客観的に見られない子もいるので、まずは、当事者の話をきくところから始めなければならない」
「学校との連携です。子どもは同級生には知られたくなくても、先生には相談できると思うから。先生の負担にはなるけど、一番早く介入できるのは学校だと思う」
「環境にもよると思いますが、直接訴えられない人も居ると思うので匿名相談ができたりするといいなと感じます」
「金銭面での援助が欲しい。ヘルパー支援を受けていた時期がありますが、申請が大変。自治体の窓口が不親切」
「国として支援や相談窓口を広げないといけないと思います。情報を持っていなくてSOSが出せない子供たちを助けるシステムを確立しなくてはいけない」
とくに多かったのが、「困ったときにいつでも相談できる窓口があるといい」という声でした。
家から離れていった兄と姉。誰にも頼ることができない孤独
美齊津康弘さんは小学5年生の頃、48歳で若年性認知症を発症した母親をケアする「ヤングケアラー」でした。
両親に甘やかされ育った末っ子の美齊津さんは、「忙しい父、そして思春期で口数の少なかった兄という家庭の中で母との時間が一番多く、一番好きでした」と語ります。
家庭はどちらかというと裕福で、年に1回は家族旅行へ。誕生日やクリスマスには欲しいものを買ってもらえていたという美齊津さん。


しかし母の認知症発症以降、より忙しく働く父と、自分の夢を叶えるため東京の大学に行ってしまう兄、時々お母さんを預かると言いながらも子育てに追われて帰って来ることができない姉。誰にも頼れない美齊津さんは気持ちのやり場をなくしていきました。
周囲の大人が支援につなげて。ヤングケアラーに特化した相談窓口も
ーーヤングケアラーだった頃、どんなことを辛いと感じていましたか?
美齊津さん「周囲から孤立してしまったことです。誰にも悩みを話せず、自分の中でその悩みを増幅させてしまうことで 、非常にネガティブな人生観や社会観を持ってしまいました。
私の中でヤングケアラーのイメージというのがありまして、それは、地面に掘られた深い穴の底で膝を抱えてうずくまっている子どもです。 どこにも逃げ場はなく、でも人に知られるのが怖くて、穴から出ようとも、声をあげて助けを求めようともしない。そんなイメージです。そして世間の人たちは普段は地面に穴が開いていることにも気がついていません。
私たちができることは、まず下を向いてその穴の存在に気づき、そしてその穴を覗き込む人を一人でも多く増やすことだと思います。そうすれば気づいてもらえる子どもが増えます。そして気付いた人は、大人のネットワークを使って支援につなげていくことも大切です」
支援につなげていくことが大切だとお話ししてくださった美齊津さん。そこで、一般社団法人日本ケアラー連盟理事であり、立教大学コミュニティ福祉学部で教員を務める田中悠美子先生に、ヤングケアラー問題に対して周囲の大人ができることを聞きました。
田中先生「ヤングケアラーは自ら助けを求めることを躊躇する傾向があるので、周囲の大人が気づいてあげる必要があります。例えば、学校のある時間にいつもスーパーで買い物をしているとか、洋服が汚れている、痩せてきたなどもサインの一つ。なかなか難しいとは思いますが、顔見知りの子どもにそういった状況があれば気にかけてあげてほしいです。地域の相談員である民生委員さんに相談してみるのもいいでしょう。
同時に、学校や自治体と協力して、ケア役割を抜け出していくにはどうしたらいいのか具体的に話し合える場を作っていかないといけません。そういった社会の仕組みづくりが急務であると言えます」
――ヤングケアラーについてどんな制度や相談窓口があるのでしょうか。
田中先生「ヤングケアラーについての相談窓口をまとめたサイトを厚生労働省が公開しています。ヤングケアラーを支援する制度はまだまだ少ないのが現状ですが、自治体独自でヤングケアラーに特化した相談窓口を設けているところもあります。埼玉県入間市では今年の7月1日に日本初となるヤングケアラー支援条例が施行されました。栃木県那須塩原市では、中高生が相談しやすいようにLINEを活用して24時間相談を受け付けています。そのように自治体によって支援の仕組みが作られると、窓口が明確になり相談もしやすくなってくると思います」
今はまだ局地的とはいえ着実に増えてきているというヤングケアラーの支援制度。私たち一人一人が自分ごととして意識することで、社会全体が変わっていくかもしれません。
取材・文=宇都宮薫
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