「苦手を克服した」美談にはしたくない。生ピーマンに挑戦した子どもと笑い合った時間/大人になってもできないことだらけです(5)

去年と今年を比べて、先月と今月を比べて、昨日と今日を比べて、子どもができるようになったことは、きっとたくさんある。
その分、サボるようになったとか片付けをしなくなったとか、やらなくなったこともきっとある。そのたびに、一喜一憂する。
「成長というよりも、変化しているだけなんですよね」と同僚は言った。
昨日と比べてしまうけれど、日々の姿がその子の姿で、それは成長でもなく後退でもない。ただ、移り変わっているだけなのだと。
僕はどこかで、子どもの育ちは右肩上がりで、多少の浮き沈みがあったとしても、伸びていくもの。そんな風に思っていたのかもしれない。
できるようになることも、できなくなることもある。その変化の中で、そのときのその子が生きやすくなる方法を、その都度見つけていけたら。それは、見栄えがしなくて不安になるかもしれないけれど、そうやってとどまることなく心配ごとが見えているほうが、いいのかもしれない。
子どものしんどさに気づけなくなるよりは、もしかしたらそのほうがいいのかもしれない、なんて思う。

余談ですが
手巻き寿司の正解ってなんだろう。
シンプルに刺身だけを巻くのもいいし、胡瓜(きゅうり)や大根を添えて巻くのも飽きない。なにも考えずに目についたものをのせて、巻ききれず溢れそうになったものにかぶりつくのも、何味かわからないけれど美味しい。大葉なんか入れると最高だ。
そういえば、僕は子どもの頃から、シソ(青ジソのいわゆる大葉)が嫌いだった。独特の香りが苦手で、素麺つゆに間違えて入れて勢いよくすすってしまい、勢いよく吐き出したことがある。
シソはシソでも、ばあちゃんが作る赤ジソのジュースだけ飲めた。原液を水で薄めて飲むんだけれど、きれいな薄い紫色でシソ独特の香りがしない。
大人になっても嫌いだったんだけれど、いつからか食べられるようになっていて、気づいたら好物になっていた。今では素麺にも手巻き寿司にも欠かせない。
僕はシソのことを好きになってよかったって思うけど、だからと言ってシソが苦手な人に勧めたりはきっとしない。
苦手なものは、苦手なままでいい。もし、いつかそれを好きになったなら、それは「克服した」のではなくて、ただ「嫌い」が「好き」に変わっただけなんだろうなって思う。
苦手なままなら、それは成長していないのではなくて、ただ、そのままなだけ。
克服するのではなくて、面白そうだから試してみる、そんな感じで楽しめるのなら、嫌いなものも試してみようかなって思えるのかもしれない。
例えばやったことのない組み合わせで手巻き寿司にしてみて、いろんな味を試してみるように、あんまり美味しくなくても食べられるようにならなくても、それでもいいかって思えるような気がする。

著=きしもと たかひろ/『大人になってもできないことだらけです』(KADOKAWA)
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