NHKネタドリ!「望まぬ孤独」特集で紹介。夫の休職で心のバランスを崩し、孤独に陥った妻のマンガ『夫婦で心を病みました』

#くらし   
  『夫婦で心を病みました』より

本日NHKの首都圏局で放送された「首都圏情報ネタドリ!」、ご覧になりましたか?
『“まさか私が・・・” 「望まぬ孤独」はすぐそばに』というテーマで、さまざまな状況の中で孤独に陥った人々を紹介していました。

この番組の冒頭で紹介されたのは、漫画家・彩原ゆずさん。番組でも抜粋して紹介されていたコミックエッセイ『夫婦で心を病みました』は、仕事に疲れ双極性障害を発症してしまった夫と、彼を支えようとするうちに心のバランスを崩してしまった妻の物語です。
番組を見逃した方のために、詳しいあらすじをご紹介しましょう。

『夫婦で心を病みました』あらすじ


 『夫婦で心を病みました』より

真面目で優しい会社員の夫・ユウタさんと、ふたりの小さい子どもと4人で暮らすゆずさん。妊娠・出産で仕事を辞めたゆずさんは、フリーのイラストレーターとして働いていました。

 『夫婦で心を病みました』より

ユウタさんは遅い時間に帰ってきてまだ家で仕事をしていたり、休みの日にも上司から電話がかかってきて対応を迫られるなど、仕事が忙しいようでした。上司が変わってから仕事の愚痴が増えたり、夜眠れなくなったりして、目に見えて痩せていきました。ゆずさんが無理に病院に活かせると、ユウタさんは「うつ病」と診察されました。そして、医者の勧めで3ヶ月間休職することになります。

 『夫婦で心を病みました』より

ゆずさんは「夫を支えなきゃ」という思いから、鬱に関することやリラックス方法について検索して、「うつに効くマッサージ」や「うつに効く食べ物」などを手当たり次第試すようになっていきます。やがてユウタさんにも「そっとしておいてほしい」「プレッシャーになりそう」とやんわり制止されます。

 『夫婦で心を病みました』より

ユウタさんが休職して2ヶ月くらいたった頃から、ゆずさんの身体にも異変が起こります。カンジダを患ったり、ひどい肌荒れになったり。さらに、ストレスから自分の身体をたたいたり、ひどい外耳炎になるまで綿棒で強く耳かきをしたり……など、自傷行為に近い状態に陥っていました。

  『夫婦で心を病みました』より

夫は休職から復帰してから、買い物の頻度が増え、少しずつ金遣いが荒くなっていきました。最初は「物欲が出てきたのは回復の兆し」と思って多目にみていたゆずさんでしたが、膨らんでいくカードの請求額に耐えかねてユウタさんに指摘すると、彼は不機嫌になってしまいました。その頃から次第にユウタさんは物にあたるようになり、ふたりの仲は険悪になっていきます。

 『夫婦で心を病みました』より

そんなある日、家族で出かけた外食先で支払いのためにユウタさんの財布を借りたゆずさんは、財布の中に風俗店のポイントカードを見つけてしまいます。ワンオペ育児に苦労していたあいだに夫が風俗に行ってたことを知ったゆずさんは、子どもたちが寝たあとにユウタさんを問い詰めました。ユウタさんは素直に認めて謝罪したものの、ゆずさんの気持ちはおさまりませんでした。

 『夫婦で心を病みました』より

 『夫婦で心を病みました』より

そんなある日、ささいなきっかけで口論になり、夫はついにゆずさんに手を上げます。「消えろ!」と何度も殴られたゆずさんは、大きなアザを作って病院で診察を受けます。いよいよ心のバランスを崩し始めたゆずさんは、突然怒りの感情に襲われて夫のシャツをはさみで切り刻んだり、何でもないときに突然涙が出てきたり……そして、子どもの前で笑顔を作ることもできなくなっていきました。

 『夫婦で心を病みました』より

ある日ギリギリまで追い詰められていたゆずさんは、ベランダから下を覗き込んでいたところを、子どもに引き止められます。泣きじゃくる子どもを前に我に返ったゆずさんは、いよいよ保健所の相談窓口に電話して、助けを求めたのでした。

 『夫婦で心を病みました』より

保健所で相談したことをきっかけに、夫は双極性障害ではないかと精神科医の医師に告げられます。そして夫婦でメンタルクリニックを受診して、薬を変更して経過を見ることになりました。
しかしそんなある日、ゆずさんは夫のカバンにマンション経営の契約書を見つけます。

 『夫婦で心を病みました』より

躁状態になった夫は家族のためと副業を考え始め、そんなときに見つけたマンションの不動産投資に手を出そうとしていたのでした。子どもの習い事や家族旅行のため……と夢と希望を語るユウタさんでしたが、ゆずさんはリスクが大きすぎると泣いてユウタさんを制止。4千万円のマンション購入はなんとか止められたものの、躁状態であることを理由に医師には1年間の休職を勧められました。

  『夫婦で心を病みました』より

モノにあたって壊してしまうユウタさんと、ぶつけられない鬱憤を自分に向けて身体を傷つけてしまうゆずさん。ふたりはぶつかり合いながら荒波のような日々を過ごし、それでも相手を支えようと、一歩ずつ前に進む努力を重ねるのでした……。

家族が心の病を抱えた時、一人で抱えこまないでほしい


この作品にこめた思いを、著者の彩原ゆずさんは次のように語ります。

彩原ゆずさん
「夫がうつ病と診断され、人が変わったようになった時、私は金銭的にも精神的にも『自分さえ我慢すればいい』と思い込み、どんどん気持ちが病んでいきました。そんな経験から、家族が心の病を抱えた時に一人で抱えこまないでほしいと伝えたくてこの作品を描きました。
そしてのちに夫は双極性障害だとわかるのですが、私たち夫婦の場合は病気を知ることによって道が開けていきました。ですので、自身や家族の病気を知ること、医師に普段の状態をしっかり話すことを大切にしていただきたいとも思っています」

 『夫婦で心を病みました』より


また、同じように心の不調や悩みを抱えながら生きている方に、彩原さんはこんなメッセージを送ります。

彩原ゆずさん「私は当時誰かに自分の状況を話すことが難しく、恥ずかしさもあったりしてなかなかまわりに相談できずにいました。ただ医師や誰かに話すことが状況を改善させるきっかけになるかもしれないので、一人で抱え込まずに相談してほしいです。
あまりにも苦しいと自分のために何かしようという考えも出てこないかもしれないけれど、誰かに頼ること、助けを呼ぶこと、専門的な場所に相談することを選んでほしいと心から思います」

心の病は誰の身にも起こりうるもの。他人事だと思っていても、いつ自分自身や家族の誰かが心のバランスを崩すかわかりません。そんなときはひとりで抱え込まずに、身近な専門機関に相談することが大切です。医師の診察やカウンセリングを受け、問題と少しずつ向き合うことが、解決への第一歩となるでしょう。

※本記事は2023年2月掲載の取材記事を再構成し、編集したものです。

取材=宇都宮 薫/文=レタスユキ

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