不足分をおぎなうか、不要なものを出すか
「補・瀉・平」のツボの押し方
ツボ押しのとき、覚えておいてほしいのが「補(ほ)」「瀉(しゃ)」「平(へい)」という3つの押し方です。本記事でも、各ツボのところにこの3つのどれかを併記しています。
東洋医学(中医学)における診断方法には「虚実」という考え方があります。ざっくりいうと、「虚」は心身に必要なものが足りていない状態で、「実」は心身に余分なものがたまっている状態をさします。
ツボ押しや鍼治療をおこなうとき、私(中神)は相談にいらしたかたの不調の原因が「虚なのか、実なのか」をみきわめ、それにあわせて押し方(さし方)を決めています。虚の場合は足りていないものを満たすために「補す」必要があり、実の場合は余分なものを流すために「瀉す」のです。
<補>
足りないものがあり、それをおぎないたいときの押し方です。不足している分をおぎない、満たすためには、痛くする必要はありません。やさしく押すことで、足りないところをじっくりと満たしてください。トントンとやさしくたたいてもよいでしょう。
<瀉>
余分なものがたまっているときの押し方です。詰まりを流し、取りのぞくイメージなので、強めにしっかりと押すのがポイントです。「痛気持ちいい」をめざしましょう。指の腹では押しにくいときは、爪やペン先などを利用してもOKです。
<平>
補と瀉の中間が「平」です。これはそのツボが本来もっている機能を回復させたいときの押し方で、おぎなうでも流すでもなく、もとにもどすのが目的。中くらいの強さでしっかりと押しますが、痛いほど強くしないようにしましょう。
ストレスが出やすい胃腸の不調 おなかのハリ
イライラしたり、もんもんとしたり胃腸とストレスは強くつながっている
ストレスをかかえてイライラしたり、もんもんとしたりということが続くと、自律神経のバランスが乱れ、胃腸の働きが悪くなっておなかが張ってしまいます。この状態を東洋医学では気のめぐりがとどこおった「気滞(きたい)」と考えます。
そんなときに使うのが、期門(きもん)と太衝(たいしょう)のツボ。以前、おなかのハリに苦しむ患者さんがいらして、この2つのツボに鍼を打ったら、5分後にはトイレに駆けこみました。施術後、なんとおなかのでっぱりが半分のサイズに!
なお、ストレス以外の原因でおなかが張ってしまうこともあります。げっぷやおならなどのガスが出てもおなかが楽にならない場合は、空腹や豆・いも類の食べすぎのほか、早食いの可能性も。後者の場合は一口食べるごとに箸を置くくせをつけましょう。
Let's ツボ押し
【太衝】押し方:瀉
ストレス緩和の代表的なツボです。肝臓の経絡(気や血の通り道)にあるツボで、気のめぐりをよくして、ストレスによって乱れた自律神経をととのえます。足の親指と人さし指の骨の間をなで上げていくと、2本の骨が交わる手前で自然と止まる位置があるのでそこを押しましょう。
【期門】押し方:瀉
人体には365個ものツボがあります。期門は「一期(一周)の終わり(門)」を意味する365個めのツボで、自律神経をととのえ、胃腸の働きをスムーズにします。みぞおちの一番上から指4本分外側、乳首の下に位置します。肋骨の骨と骨の隙間を、親指の爪半分くらいが刺さるまで押してください。
Let's 養生
かんきつ類の香りでストレスを発散させましょう
おなかのハリの主な原因はストレスなので、ストレス発散が大切です。ストレス原因のことばかり考えてしまって、発散できないときは、よい香りをかぎましょう。かんきつ類がおすすめですが、リラックスできる香りであればなんでもOK。
また、気をめぐらせる食材である、えんどう豆やキャベツ、春菊、玉ねぎ、パクチー、パパイヤ、かんきつ類、マッシュルーム、ジャスミン茶、バラの花、きんもくせいの花もおすすめです。温めるか、常温でいただきましょう。
なお、屈伸をするとガスが抜けやすくなるので、スクワットの習慣もとり入れてください。
著=櫻井大典、中神洋和/『自律神経もととのう 漢方ツボ押し大全』