暖かい海と冷たい海では魚の見た目も違う? カラフル&地味な理由がちゃんとあるんです/すごすぎる海の生物の図鑑(2)
人間から見ると不思議がいっぱいな水の生き物たち。大きな海の秘密、教えます!
多様でユニークな生態が面白い、水の中を生きる生物。思わずびっくりしてしまうような生存戦略の数々は、非常に興味深く、子どもはもちろん大人の知的好奇心も満たしてくれるはずです。
水の世界のトリビアをぜひお楽しみください!
※本記事は鈴木香里武著の書籍『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』から一部抜粋・編集しました。
暖かい海の魚はカラフルで、冷たい海の魚は地味!?
赤や黄色、青など色鮮やかな魚を見ると「沖縄あたりにいそう」と考えますよね。逆に北海道の海の幸といえば、ホッケやサケなど体の色が地味な魚を思い浮かべるでしょう。この多くの人が持っているイメージ、理由を探ろうとすると実はとても複雑で奥が深いのです。
まずは透明度について考えてみましょう。暖かい海は水が澄んでいますが、冷たい海は栄養分が豊富でプランクトンも多く、水が濁りがち。透明度の高い環境では色は大切な情報ですが、濁った場所では色を身につけてもあまり意味がありません。
次に背景について。南国の海と言えば色とりどりのサンゴ礁。背景がカラフルな環境では、自分もカラフルになった方が周りに溶け込むことができて、地味な姿をしているよりかえって目立たなくなります。
さらに生物多様性も影響しています。サンゴ礁の海は魚の種類が多いため、その分敵も多いもの。目立つ警戒色で毒を持つアピールをすることも生き残る知恵なのです。
暖かい海
透明度が高く、太陽の光が強く差し込むため、照らされる魚たちの色彩が際立ちます。サンゴ礁や海藻類が広がり、背景もカラフルになりがち。
冷たい海
冷たい海には栄養分やそれを餌にするプランクトンが多く、濁りやすくなります。その分太陽の光も届きにくくなり、背景にも鮮やかな色はあまりない。
寒い地域の海が濁る仕組み
暖かい水は上へ、冷たい水は下へ移動する性質がある。海面で冷やされた水が沈み、底の方の水が上がってくる時に、栄養分が巻き上げられる。
試してみよう
水槽の壁に沿って、それぞれ色をつけたお湯と冷たい水をそっと注ぎ入れてみよう。お湯は上、冷たい水は下へと分かれる様子が見えるはず!
豆知識
寒い地域では海面が冷やされて水が上下に入れ変わり、沈殿している栄養分が巻き上げられて水が濁ります。さらにそれを餌にしてプランクトンも増えて濁りが増す。決して汚いということではありません。海が豊かな証拠です。
【著者プロフィール】
鈴木 香里武(すずき かりぶ)
幼少期から魚に親しみ、専門家との交流や様々な体験を通して魚の知識を蓄える。学習院大学大学院で観賞魚の癒し効果を研究した後、現在は北里大学大学院にて稚魚の生活史を研究。海好きコミュニティ「海あそび塾」の塾長を務め、岸壁幼魚採集家として漁港に現れる稚・幼魚を観察する。メディア・イベント出演、執筆、資料提供等の発信活動をする傍ら、水族館のイベント・展示企画等、魚の見せ方に関するプロデュースも行う。2022年7月、静岡県に幼魚水族館をオープン、館長を務める。著書に『海でギリギリ生き残ったらこうなりました。進化のふしぎがいっぱい!海のいきもの図鑑』、『海でギリギリあきらめない生きざま。知恵と工夫で生き残れ!海のいきもの図鑑』(KADOKAWA)など多数。
著=鈴木香里武/『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』
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