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レシピを暗記する vol.11「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ
雑誌『レタスクラブ』で連載中の山崎ナオコーラさんのエッセイ「考えごとで家事を楽しむ」をレタスクラブニュースでも特別公開!
家事に仕事に子育てに大忙しの毎日。実体験に基づいた言葉で語られるからこその共感や、生活を楽しむためのヒントが隠されています。
今回は、vol.11「レシピを暗記する」をお届けします。

前回、レシピを「読む」ことについて書いたが、読書は落ち着いて行いたいものだ。
もともと読書が好きな私は、文字を追うことが苦ではない。毎日、寝転んだり座ったりして、小説やエッセイを楽しんでいる。だが、料理の工程の中では寝転ぶことも座ることもできない。火を点けたままだったり、包丁を片手に持っていたりする危険な状態で、ちまちまと文字を拾う。立ち仕事の上、手が汚れていて、ゆっくりと本と向かい合える環境ではない。
私は、テンパってしまう。
でも、書店には料理本がたくさん並んでいるし、ブログやインスタグラムを覗くと世間の多くの人がレシピを参考に素敵な料理を作っているから、みんなは、作業しながら、きちんと読めているのに違いない。
私も、若い頃は、真面目に読もうと思っていた。
だが、「読もう」とすると、失敗も起きた。
ひとり暮らしをしていた頃、お客さんが来ることになり、ちょっとしたおもてなしをしよう、と料理本を購入した。スーパーで材料を揃え、台所で途中まで作り上げたあと、突然、「ここでオーブンに入れます」という文章に出くわした。思わず、「えっ」と声が出た。私の家にはオーブンがなかった。
何を作ろうとしていたのか、もうよく覚えていないのだが、何か肉料理で、勝手に「フライパンで焼いてできあがり」と思い込んでいた。レシピの文章を「読書と同じように、最初の行から順番に追って、一度だけ読めばいい」と捉えていた私は、「買い物に行くときに(材料)の文章を読み、①の工程をするときに①の文章を読み、①ができあがったら②の文章を読み……」という風に料理本を読み進めれば良いとたかをくくっていた。
Information
1978年福岡県生まれ。埼玉県育ち。2004年『人のセックスを笑うな』で作家デビュー。エッセイ集に『指先からソーダ』『かわいい夫』『母ではなくて、親になる』などがある。目標は「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。初めての絵本『かわいいおとうさん』(絵ささめやゆき、こぐま社)も刊行。
山崎ナオコーラさんのTwitter
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