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図鑑読み vol.22「考えごとで家事を楽しむ」 山崎ナオコーラのエッセイ
この頃、私の家にいる子どもが読みたがるのは、図鑑だ。ちょっと前までは、乗り物図鑑が大好きだったが、だんだんと宇宙の図鑑や、昔の生き物の図鑑に興味が移ってきた。
とくにカンブリア紀の生き物に注目している。恐竜が登場するより前の時代に爆発的に進化した、海の生き物たちだ。
恐竜好きの子は多いと思うが、私の家の子はまだそこまで行っておらず、図鑑の最初の方に載っている、この初期の生き物のページをゆっくりとめくっている。
モンスターのように不思議な形をしているものばっかりだ。不気味なような、可愛いような……。
三歳児に細かい説明を読んであげたところで理解できないだろうし、小さい文字まで読み上げるのは疲れるので、簡単な特徴と名前だけを伝え、適当な会話をする。子どもは、名前を復唱して覚えたり、想像図(写真や資料がほとんどないのでイラストなのだ)の鮮やかな色を楽しんだりしている。
アノマロカリスやハルキゲニアやオパビニア、オットイア、ネクトカリスなど、私もいつの間にか覚えてしまった。生活や人生になんの役にも立たないこれらの知識だが、ぼんやりと三歳児に合わせているだけだと時間がもったいないように感じられるから、子どもがゆっくりとページを見ている間に、私は小さな文字まで熟読する。
書店に行くと、カンブリア紀に関する本が結構ある。流行っているのだろうか? 大人向けの本が多いが、研究書というより遊びっぽい本がほとんどだ。この変な世界をもっと究めてみたいな、という気持ちになってきた。
仕事の最中に普段の自分なら興味を持てない知識が自然と増えることがあるが、それと同じように、家事を行う中で自分の興味から外れた知識が増えることもある。どうせなら知識を増やしながら家事がしたい。

文=山崎ナオコーラ イラスト=ちえちひろ
Information
3歳児の親。作家。筆名はコーラが好きだから。書店員の夫と、3人家族で、東京の田舎のほうで細々と暮らす。家事は苦手。でも、せっかくだから、家事をしながらついでに考えごとをして、「仕事と同じくらいプラスになっている」と思いたい。
山崎ナオコーラさんのTwitter
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