「産まない女性」やLGBTが人類生存の可能性を広げる!? 男女のミゾを科学する(3)

#くらし   
脳の性差は、必ずしも身体の性差と一致するわけではない


「ちゃんと言ったのに!」

「悩みを相談したのに冷たい!」

夫と話すとイライラするのは、男女間で脳の使い方に差があるからだった!?

ベストセラー『妻のトリセツ』で話題の人工知能研究者・黒川伊保子さんが、夫婦間で発生しがちな「男女のミゾ」の発生機序をやさしく紐解く『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)。

夫婦間、家族間、友人同士や恋人同士、あるいは職場の同僚間でも、今日から使える対話のルールが多数紹介されています。

21世紀随一のコミュニケーションの教科書から、一部抜粋したものを全8回でお届けします。今回は第3回目です。

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【画像を見る】男女のミゾを科学する


第三の脳


ただし、脳の性差は、必ずしも身体の性差と一致するわけではない。少数派ながら、男性の身体に、女性脳的感性を選択する脳が搭載されている場合もある。

それは、マジョリティの男性とも女性とも違う第三の脳であり、太古の昔から一定数生まれてきている。だとするならば、それもまた、人類の戦略の一つだと言えるのではないだろうか。マジョリティとは違う脳が一定数混じることで、人類は、その生存可能性を広げてきたはずである。

本連載では、マジョリティの男女間で起こるコミュニケーション・ストレスを論じるが、マイノリティの感性を排除しているわけではない。

むしろ、マイノリティの方たちは、その感性を強く使っていたりする。私のゲイの友人たちは、私なんかよりずっと女性脳的な使い方をする。あくまでも「脳の性差」で読んでいただくと、LGBTの方や、そのパートナーにも参考にしていただけるはずである。

ちなみに、男性が女性脳的感性の使い方をする(共感し、危機回避能力が高い)からと言って、必ずしも性的嗜好が反転するわけじゃない。

男らしく生きながら、繊細なプロセス解析力を持ち、直感的な判断がうまくできるタイプもこれに含まれる。

産まない女性は、未完成などではない


「産まない女性」についても一言。

「子どもを産んで、女は一人前」のような言い方をする人がいるが、それは違う。

たしかに、妊娠・出産・授乳によって、女性の脳は、ホルモンの劇的な変化に見舞われて位相を変え、うまくいけば、繊細さとタフさを兼ね備えることになる。さらに、子どもに、自分の資源(時間、意識、手間)のすべてを捧げるために、かなり偏ったものの見方をするようになる。大切なものへの共感力を極限まで上げるのだ。この能力がなければ、子どもは育て上げられない。この能力は、仕事においては、顧客や市場への共感力として、効を奏することも多い。

しかし、産まない女性の時間だって止まっているわけじゃない。脳には、出産子育て以外の経験が降り積もっていく。その経験が、彼女たちを繊細にしてタフにしていく。

産まない女性は、公平さを保ったまま成熟していく。女性が生まれつき持っている母性の機能を、周囲に照らすように公平に使えるのである。多くの組織で、産まない女性たちが、組織を束ねる要になったりしている。昔から、世界中の宗教が生まない女性を確保してきたのには(シスター、尼僧、巫女(みこ)など)、きっと理由がある。

女性脳型の感性の使い方の典型例として、子育て中の女性を例に挙げることもあるが、それは、「使い方が振り切った例」として便利だからだ。けっして、産まない女性を排除しているわけではないことを、ここで述べておきたい。

著=黒川伊保子/「コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する」(PHP研究所)

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『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』
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