祖母の死、出産、子育て、自分の病気…10年で変わった「持たない暮らし」人生
家の中にいらないものは「なんにもない」を目指して、日々試行錯誤中のゆるりまいです。
私の日常を描いた「わたしのウチには、なんにもない。」の第1作目が出てことしの2月で10年が経ちました。
ゆるりまいとして世に出てから10年が経ったということです。
10年……10年か……。色々あったようななかったような。10年の間に、祖母が亡くなり、息子を産み、書籍のドラマ化があったり、劇症型溶連菌感染症の特異版に罹ったり…。
10年の半分以上は子育てをしている感じではありますが、それでも細々ながらゆるりまいを続けられているのは、ひとえにこうやって今この文を読んでくださっている皆さまのお陰です。ありがとうございます。
ノリノリで殺気立っていたあの頃
過去の家の写真をザッと見返してみると、10年前の私は、持たない暮らし人生の中で一番脂が乗っていた時期かもしれません。
とにかく敵は物。汚家に親でも殺されたのか?ってくらい物を憎んでいた気がします。
とにかく物を減らしたくて殺気立っていました。家族よごめん!
まだギリギリ「ミニマリスト」という言葉が世間に浸透する前だったので、よく変わり者扱いされていたように思います。
上質な物探しの旅に向かう
その後、上質な物を集めたがるターンに入りました。
汚家時代、「とりあえず」で買った日用品を愛着も持たずに使い、消費する生活だった私は、「上質な物を買い、それを大事に使う」喜びを知りました。家の中のものを入れ替えていって、お気に入りのものに囲まれる暮らしを実現していったこと。それは私のQOLを格段に上げてくれました。
同時にたくさんの学びもありました。吟味して買い替えたものたちの大半は今でもまだ現役ですが、残念ながらさよならしたものもあります。上質だからといって、私達家族の暮らしに合うかどうかは別でした。一生物と思って買っても、そうにはならないものもたくさんある。一生物は、一生使ってみないと分からないものだと、身に沁みて感じました。
ままならないこともあると知る
子どもが生まれて、また更に私の中で変化がありました。子育てという未知の領域に足を踏み入れ、思い通りにはならない暮らしを知りました。
それまでは夫、母、私という大人しかいなかった我が家。しかも夫や母は優しいので「家事のことは任せた〜」といって私の好き勝手にやらせてくれていました。けれど子どもは違う。片付けても片付けても散らかすし、物はどんどん増えていくし、今まで存分にできていた掃除や片付けの時間もまちまちになるし、なるほどこれが子育てをするということか!と、よく顔面にカウンターパンチをくらったものです。
それでも最初の頃は負けてたまるかと奮起して、物を増やさないよう頑張ったり、掃除の手を抜かなかったり、今思うとよくやれたなぁと思うくらい必死になって完璧を目指していましたが、結果、続きませんでした。
少しずつ手を抜いていくようになり、いつのまにか「物はあっても、家が多少汚れていても死にはしない」と思うようになりました。
持たない暮らしを志す母親のもとに生まれたからといって、息子自身にその暮らしを押し付けることは絶対にしたくなったので、正直息子のおもちゃはてんこ盛りですが、それも面白いなと思っています。
突然の病であたらめて気づいたこと
そんないい感じで緩んだネジがビリッと締まる出来事もありました。
2021年、高熱と共に右肩から腕にかけて激痛が走り、最終的に救急車で高度救命救急センターに搬送、即手術ということがありました。劇症型溶連菌感染症でした。従来のものより少し特異で、手術当初は「右腕切断か死か」の二択だったようです。
懸命な治療のおかげでなんとか一命を取り留め右腕も無事残り、しばらくは麻痺が残る状態でしたが、今では若干の後遺症があるくらいで超絶元気です。
その時、私が感じたのは「人間いつ死ぬか本当に分からないんだなぁ」ということ。東日本大震災でも痛感したことでしたが、それ以上に死は身近にあると身をもって経験しました。
麻痺が残る状態での我が家での暮らしは、健康だった時には分からなかった不便さが浮き彫りになりました。それを改善するのもまた楽しかったのですが、全ては健康であってこそ。いつ何があるか分からないから、残された人のためにもある程度、物は整理しておこうと身が引き締まりました。
以前の家と今の家、どっちが好き?
10年前と比べると今の我が家は少し物が増えました。籠もおもちゃもいっぱい。でも前の家も今の家もどちらも好きです。
あの尖っていた頃の家をもう一度再現するにはなかなか難しいだろうなと思うと、あの殺風景さに憧れる気持ちはありますが、今の家にしかない良さもあります。
これから先、また暮らしがどういう変化をするのかは分かりませんが、
・必要のない物は絶対持たない
・お気に入りの物だけを持つ
・家族みんなの居心地の良い家にする
これだけは変わりません。これまでもこれからも、このモットーだけは持ち続けていくつもりです。
これからも、ペンネームに違わずゆるりと自分のペースで何かを描き続けていければいいなと思っていますので、今後とも宜しくお願い致します!
作=ゆるりまい
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ゆるりまい
仙台市在住。漫画家、イラストレーター。夫、母、息子の人間3人 +... もっと見る