「親ハラスメント」に悩み続けて…。リアル毒親体験を描いた『母がしんどい』田房永子さんの生き方

#くらし   

母親が自分の宿題をやってしまう、突然決められる習い事、喧嘩したら職場に抗議の電話…。

これ全て、ある母親と娘との実話。

コミックエッセイ「母がしんどい」は“毒親”に育てられた娘が苦しみ抜いた末に自立し、自分なりの幸せをつかむまでを軽快なタッチで描いたもので、さまざまな反響を呼んでいます。

今回、著者の田房永子さんにお話をお聞きしました。

その言葉は、母親との関係に苦しむ全ての女性へのメッセージです。

「親に従ういい子」に見せておいて、自分の人生はあきらめていませんでした


――『母がしんどい』には、お母様のほかに、お父様も登場しています。田房さんから見て、お2人はどんな方ですか?

「子どもの頃は、母のことは情緒が豊かで愛情深い人、父は寡黙な人だと思っていました。両親と付き合うのが困難になった29歳の時は、それまでの印象とまったく別のものになり、ひどい人たちだと感じるようになりました。そこから親と距離を置いて10年以上経ち、自分の人生を両親に振り回されない自信がついてからの2人の印象は、自分とは違う時代を生きた人たち、という感じです」

出典『母がしんどい』


――自分なりにご両親と闘って、自信を持たれたんですね。小さいころの田房さんは、今、改めて思い返すと、どんなお子さんでしたか?

「『おかしい』『なにこれ?』『どういうこと?』と思ったら、大人に質問したり、しつこくそのことを覚えている子どもだったと思います。だいたいのことは『大人になればわかる!と言われていたので、『大人になってこれがどういうことだったのか知りたい』とノートにメモしているような子どもでした。小学校の先生からは露骨に嫌われていましたね。小さいころから絵を描くことが好きで、小学校5年生の時には漫画家になると決めていました」

出典『母がしんどい』


出典『母がしんどい』


――著書にはお母様のさまざまなエピソードが描かれていますが、いつごろから「うちのお母さん、変わってるかも…?」と思い始めたのでしょうか?

「小・中学の時も母の理不尽には怒りを感じてましたが、基本的に母が正しいと思っていたんです。でも、高校に入っても毎日のように母が罵ってきたりするので、高2のある日、『本当にこいつはおかしい』と心の中の呼び名が『こいつ』になった瞬間がありました」

毎日のように母に罵られて…。高2のある日『本当にこいつはおかしい』と心の中の呼び名が『こいつ』になった瞬間があった、と田房さん。


出典『母がしんどい』


――実の母親を『こいつ』とは、普通の子どもはなかなか思わないですよね。お母様はある日突然、ピアノなどやバレエなどの習い事に通わせたかと思ったら、意思も確認せずいきなりやめさせたり、私立中学受験なども独断で決めていました。かなり振り回されたと思うのですが、どのように感じていましたか? 

「私は、黙って親に従うタイプではありませんでした。『嫌だ』と思ったら泣いてわめいて大絶叫し、自分の要望を母に懇願する子どもでした。でも、母はその上をいっているので、結局は母の思いどおりになります。

親が子どもを思いどおりにするのは、脅したり泣き落としたりすればいいのでとても簡単です。例えば『学校のみんなに言う』とか『じゃあ出て行け』とか。親にそこまで言われたら子どもは逆らえません。子ども側としては命や人生と引き換えに親の言いなりになる、という感覚なのです。だけど親は『説得できた』『子どもは納得した』と思うことができます。親というものは、子どもにとってすべての権力を所有する支配者なので、権力をそういう風に使うこともできるんです。だけど私は、母にそういうことを繰り返されているうちに母を内心バカにするようになりました。本当は『あきらめ』て母に従っているのですが、母からは『従って』いるように見える。そして私としては自分の人生についてはまったく『あきらめ』ていない。母を『こいつ』と思うことは一見よくないことに思えるけど、そうすることで当時の私はいろいろなバランスをとっていたんだと思います。」

出典『母がしんどい』


出典『母がしんどい』


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著:田房永子
母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA中経)を2012年に刊行し、ベストセラーに。主な著書に『呪詛抜きダイエット』(大和書房)、『それでも親子でいなきゃいけないの?』(秋田書店)などがある。

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