「家族の介護に追われて学校は休みがち。クラブ活動もできなかった」ヤングケアラーの学業・進路への影響とは

#くらし   
 耳栓して勉強するように


家族の介護や家事を日常的に担っている18歳未満の子どもたち「ヤングケアラー」。自分の時間を持つことが難しいため学業に影響が出たり、家族のケアをしなければならない重圧から希望の進路を断念するケースもあるといいます。
レタスクラブでは、『48歳で認知症になった母』の原作者である美齊津康弘さんのお話を元にアンケートを実施。レタスクラブユーザー190人(23歳以上、既婚女性) の中から、18歳未満のとき介護や子育てなど家族のケアをしていた経験のある人に、学業や進路、周囲との関係にどのような影響があったか聞きました。

元ヤングケアラーたちの告白。学業や進路への影響とは


元ヤングケアラーだったという人たちに、学業や進路、周囲との関係にどのような影響があったか尋ねてみると…

「当時はヤングケアラーだという自覚もなかったけど、今振り返ればあれはそうだったんだなと思います。学校の成績は下がりました。部活にも入りませんでした。進学はあきらめました。とにかく毎日が楽しくなかったのを覚えています」

「高校に入学したが、学力に影響が出て金銭的にも大変になり中退した」

「食事、洗濯、お弁当作り等々、日々の生活の全てのことをやっていて、学校は休みがち。クラブ活動もできない。友達とも遊ばず、疲れた生活でした」

「周囲に話すことができず、家族で対応しており、生活に困窮して疲弊していた」

「部活に参加することが出来ないことが多く、部活の子から仲間外れにされたことがある」

学業が疎かになった、友達と遊んだり部活に参加することができなかった、生活に困窮していた…等々の声が。それでも家族を助けたいという思いから、親にも嫌だと言えなかったという意見もありました。

どんな思いで勉強していたか…何も知らない友人たちには話せない


美齊津康弘さんは小学5年生の頃、48歳で若年性認知症を発症した母親をケアする「ヤングケアラー」でした。
ある日、母が鏡に向かってブツブツ話をしているところを目撃した小学生の美齊津さん。独り言は次第に大きくなり「あなたが悪いんでしょ!」「バカなこと言わないで!」とエスカレート。
状況がわからない美齊津さんは「お母さん…?」と話しかけたのですが、振り向いた顔は「まるで他人を見るような目」だったそうです。

母への暴言が止まらない


認知症発症以降は、家の近所を徘徊する母を毎度連れ戻しに行くのが美齊津さんの役割でした。しかし認知症の母は反発し、大きな声で叫び出します。そんな母の姿を見るのが辛く、病気のせいと分かっていても母への暴言を止めることができません。

 勉強していれば現実を忘れられる

 どんな思いで勉強しているか


美齊津さんはひたすら勉強に打ち込みました。母の独り言が聞こえないように耳栓をして集中さえしていれば、現実を忘れられるから。成績は上がっていきましたが、どんな思いで勉強しているかなんて、誰にも話すことはできませんでした。

子どもに子どもらしい時間を。自分のために使える時間を確保することが大切


家にいる時はひたすら勉強


――お母さんのケアをしながらの学生生活で、学業、進路への影響はありましたか?

美齊津さん「私が中学生の頃、母の症状が進行したため父の実家に引っ越しました。幸い私の場合は、同居する叔母が家事を担ってくれたため、学校に通ったり自宅で勉強する時間を持つことができ、学業に大きな支障は出ませんでした。
しかし、世の中には、子どもがいないと生活が成り立たない家庭もあります。そのような家庭では必然的に子どもが勉強する時間を確保できず、将来の進学や就職の機会も減ってしまいます。また、ヤングケアラーの子どもたちは自信や自尊心を失っていることが多く、そのことが更に進学や就職に悪影響をもたらすことがあります」

――「子どもがいないと生活が成り立たない家庭」については公的な支援の介入が必要だと思いますか?

美齊津さん「そうですね。子どもに子どもらしい時間を、自分のために使える時間を少しでも確保してあげる為の支援は必要だと思います。介入する際には公的な立場の方が、家庭というプライベートの中に介入しやすいと思いますが、その場合、支援が入ることによって家族間の微妙なバランスが崩れないように充分配慮する必要があると思います。また当事者の子どもにもしっかりと説明して、大人だけで決めてしまわない事も大切だと思います」

学業や進路に大きな影響を及ぼすことがあるヤングケアラーの問題点。悩みを抱えるヤングケアラーたちを支援機関につなげる取り組みを一層進めていく必要があるようです。

取材・文=宇都宮薫

この記事に共感したら

おすすめ読みもの(PR)