──いまでは韓国エンタメには欠かせない存在の古家さんですが、¨韓国エンタメの案内人¨になったきっかけは何だったのでしょうか?
古家さん :「韓国から帰国後、ラジオDJとして北海道や大阪で活動していたのですが、さまざま事情から大学院に入り改めてジャーナリズムを勉強をしようと考えていました。
ちょうどその頃『KARA』と『少女時代』が日本に上陸。K-POP人気が高まっていきました。いきなりそんな状況になってしまい、K-POPに詳しい人が必要となって、あちこちから取材のオーダーが来るようになったんです。
するとメディアが話題にし始め、知識のある方はたくさんいましたが、喋りの仕事をしながらその領域に精通している人は当時少なかったこともあって、僕にさまざまな依頼が来るようになったんです」
──古家さんのお話を聞いていると、随所に人とのつながりを感じます。仕事のチャンスの掴み方などあるのでしょうか?
古家さん :「確かに全部人とのつながりですね。
仕事は、基本は来るもの拒まず、です。今は忙しくなってきてしまったこともあってタイミング的に難しいこともあるのですが。
そもそも地方にいたこともあって、大阪や東京などから仕事がくること自体に感謝の気持ちが強いのかもしれません。地方にいるとなかなか出るのが難しいですから。
大阪や東京から仕事が来るようになって、チャンスを与えてもらってありがたいと思う中で、今では考えられませんが、交通費込みのギャランティで仕事を受けていました。だから、交通費を引いたら残りわずかということも。とにかくいただいた仕事はギャラは関係なく全部受けていましたね」
──古家さんから「求めてくれるなら全力で」という部分が見えるように思います。そのときの思いが今の仕事につながっていくのでしょうか?
古家さん:「多分そうだと思うんです。あのときがないと、今の自分にはなっていないと思います。
そこで培った人脈が広がって、今の仕事につながっています。僕は同じことを未だにやり続けていますが、一緒に現場で仕事をしていた人たちが次々とみんな偉い人になっちゃって(笑)」
──古家さんの仕事への姿勢が評価されているからこその人脈だと思います。ファンの方が「古家さんがMCのイベントはハズレがない」と言っているのを聞いて、納得しかありませんでした。
古家さん:「自分がファンミに参加するとして、高いチケット代を支払って、さらに地方から来るのだとしたら交通費もかかります。それで『なんか面白くなかったね』となるのは1番嫌だし、しかもスターの人たちも素敵な時間を作りたくて日本に来てくれている。回す人間がうまくなかったことで面白くなかったと思われるのは嫌なんです。その想いは常に意識的にどこかにありますね。
台本を見た瞬間に正直『おいおい…!』と思うときもあります…。僕は一ファンとしてその内容では許せない。だけど、台本自体はどうしようもできない。そんなときは、そのどうしようもできない中で、ギリギリ自分ができることを探します」
──今、ご自身をファンとおっしゃっていましたが、古家さんはファンが求めることをよくわかっていると評判です。なぜファン目線を持ち続けることができるのでしょうか?
古家さん:「ドラマ見る、音楽を聞くなど、常にコンテンツに接しているからではないでしょうか。
あとは、若い人たちとコミュニケーションを取る時間をなるべく持つようにしていますね。
学校で講演や授業を行い、そこで学生たちの声を聞くと、『なるほどな』『今の子たちはこういう風に感じているんだな』ということがわかってきます。
あとは、細かい話ですけど、イベントで質問をしにファンの近くに行く、会場を練り歩くときがあるんですよ。ステージに戻るときに同じ道をそのまま戻れば問題はないのですが、でもそこで、『すいません、あっち回りませんか?一通り』と聞くと、韓国のスターのみなさんは『もちろんですよ』とぐるっと回ってくれます。そうすると多くのファンの方の横を通ることになります。スターが近くを通れば、うれしいですよね。
本当に小さいことの積み重ねで、それは台本にはないことなんです」
──ちょっとしたやりとりの中に、実はファンの方への細やかな気遣いがあったのですね。
古家さん :「先日のNiziUのファンミーティングはKアリーナ横浜だったのですが、会場が広いので客席の高さが思った以上にあるんですね。だから僕は、必要以上に上の階の人たちに話しかけます。もちろんご本人たちも気にしてくれているんですが、イベントに集中してもらうために、彼女たちが1回話しかけたら、僕はその2、3倍話しかけて、遠い席の人であってもステージ上の皆は同じようによく見ているよっていうシグナルを送るようにしています。これってファンの皆さんにとって大きな安心と、イベントに参加しているという実感につながりますよね?
それも別に台本に書いてあることではないんです。だけど、そういう気配りは、普段からさまざまな場面でさまざまな人とコミュニケーションを取っていると、『どういうことをするとみなさんが平等に楽しんでもらえるのか』を考えるようになってきます」
──日常生活を本当に大事にされているということが伝わってきます。現在までのさまざまな積み重ねが古家さんを作っているのですね。
古家さん :「全部、点が線につながっていくというか、 1つのことだけで何かができるというわけじゃないと思います」
──最後に、K-POPファンの方や韓国エンタメ好きの方に向けてメッセージをお願いします。
古家さん :「韓国のエンタメには日本のエンタメにないものがあるから惹かれるとみなさんよくおっしゃいます。確かにそれはそうなのですが、僕は共通点も非常に多いと思っています。ただ、その表現の仕方が違うのだと。
お互い違うけれども、互いに惹かれるものがあって、惹かれるものがあるからこそ近くに感じられる、そう少しでも思ってもらえたらいいな、と思って『BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち』を書きました。
価値観、文化、習慣…それらの違いを乗り越えて通じるものがあるからこそ、お互い惹かれ合っていると思うんですよね。だから、その違いを認め共通点を知るというきっかけになってほしいなと思っています」
アーティストとファン、そして韓国と日本の懸け橋となっている古家正亨さん。これからの活躍も本当に楽しみです!
【プロフィール】
古家 正亨(ふるや まさゆき)
1974年生まれ、北海道出身。ラジオDJ、韓国大衆文化ジャーナリスト、そしてK-POPや韓国流俳優のイベントMCとして絶大な人気を誇る。韓国公営放送においてもレギュラー番組持つなど、韓国でも活躍。2009年には、日本におけるK-POP普及に貢献したとして韓国政府より「韓国政府褒章文化体育観光部長官褒章」を授与。2011年から江原道観光広報大使を務める。妻は韓国人シンガーソングライターのホミンさん。近著『BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち』 も好評!
2024年8月26日(月)には自身のファンミーティング「古家x藤原ファンフェスタ スペシャルゲスト超特急カイ」 を飛行船シアター (東京都)にて開催!
文=伊藤延枝