「更年期」は男性にもある⁉ 不調を乗り切るために夫婦にとって必要な2つのこと【「私の生理のしまい方」作者インタビュー】
イラストレーター・原あいみさんによる『私の生理のしまい方』は、40代からの女性の不調について、実際の大人女性へのインタビューをまとめた更年期世代のリアル体験記。
40歳をすぎると、女性は閉経に向かって心身のバランスが不安定になると言われる時期ですが、実は、男性にも「更年期」のような症状があるってご存じでしたか?
最近いつもだるそうで、家事・育児分担の約束も守らなくなっていた夫に対し、はじめはイライラをぶつけてしまっていたというのは、メーカー勤務のゆうこさん。
ですが、あるできごとをきっかけに、夫の「男性更年期」について理解を深めることになります。このエピソードについて、作者の原さんにお話を伺いました。
【ゆうこさんのケース】「更年期」で苦しいのは妻だけじゃなかった⁉
47歳のゆうこさんは、結婚前に子宮頸がんを患ったことがあります。幸い早期発見できたため、手術で症状は安定。その後は結婚と不妊治療を経て、妊娠・出産しました。
その子が小学1年生になったある夜のこと、ゆうこさんのイライラが大爆発!
その矛先は50歳の夫です。約束していたことをしてくれなかった夫に対し不満を吐き出したゆうこさんは、いったん冷静になるために自宅を出たのです。
「これが更年期なのかも…」
そう思いながら帰宅したゆうこさんに対し、夫は家事育児を任せきりだったことを謝ってくれました。
もともと夫とは、若くはない者同士、お互いを気遣いながら生活できていたのです。
そこで彼女は、この日の感情の暴発は自分が更年期だからかもしれないと思い、医療機関で相談してみることに。
かかりつけ医での検診でホルモン数値を計測したゆうこさんは、どうやら更年期の入り口にいるようです。判明した結果を夫と共有することで、自分も夫も納得することができました。
しかし原因が分かったからといって、ゆうこさんの日々のイライラがなくなるわけではありません。
この日の怒りの発端は、息子のお風呂担当のはずの夫が、食後すぐにソファで寝てしまったこと。
たまらず家を飛び出しコンビニに立ち寄ったたゆうこさんは、そこで見かけた雑誌から目が離せなくなってしまいます。
それは「男性更年期」に関する記事でした。そしてその症状は、読めば読むほど夫の状況に当てはまっているような…。
夫も自分と同じように苦しんでいるのかもしれない、そう思ったゆうこさんには、夫に対しやみくもに感情をぶつけてしまった自分を反省する気持ちが芽生えました。
男性にも更年期のような症状があることを、夫に伝えようと思いついた彼女は、この前の雑誌を買って夫に読んでもらうことに。
後日夫は、みずから「更年期外来」を受診し、通院を続けることで症状も改善してきたようです。
こうしてゆうこさんと夫は、お互いの症状や困りごとを話し合えるようになっていきました。
「夫にはストレートに受診をすすめました」作者インタビュー
――男性にも「更年期」のような症状がある(※)ということは、一般的にはまだそこまで知られていないと思います。このことについて、今回の取材を通して感じたことをお聞かせください。
(※)医学的には「LOH(ロー)症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれます。
原さん
「本の制作中、実はうちの夫も同じようにとても疲れやすくなっていまして、取材だと思って更年期外来に行ってみて!とストレートに受診を勧めたところ、素直に行ってくれました。調子がよかったり、悪かったりと波があるように見えますが、私がこの本を作ったことで、夫自身も『男性更年期』関連の情報に敏感になってくれて、自分で情報収集をしてくれているのでいい効果があったなと思っています。
私自身、もう少し若かったころは夫との家事分担などでイライラすることもありましたが、最近はとにかくお互い無理をしない、できる方ががんばる、やってくれたら感謝…というようにつねに双方いたわりモードになっていますね(笑)」
――疲れやすくなったりイライラしたり…といったこの世代によくある症状は、女性に限らず、男性もなる可能性があるんですね。その理解を深めるために、どんなことが必要だと思いますか?
原さん
「著名な方が経験談を発信してくださったり、本や記事、テレビやWEBメディアなど色々な形で情報発信がなされるのもありがたいと思います。でも、一番大事なのは、家族、友人、同僚など、隣にいる人と、不調とか、不安とかについて日常的に話すことかなと思います」
――作中のゆうこさんご夫婦は、ふたりで「更年期」に向き合いました。そういった症状を夫婦で乗り越えるために必要なことは何だと思われますか?
原さん
「正しい知識と会話。それに尽きると思います」
***
夫の体調の変化について、夫婦で話し合ったゆうこさん。そのことが、ふたりの関係性にもいい変化をもたらしたようです。作者である原さんの言うとおり、知識と会話の重要性を教えてくれるエピソードですね。
当事者世代の女性にも、そのパートナーの方にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。
取材・文=山上由利子
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