
3,000m級の山々が連なる富山県は、その面積の約67%を森林が占める緑豊かな場所。この山と森がはぐくんだミネラル豊富な水が、河川へと流れ出ています。富山県は“水がおいしい”と評判ですが、ちゃんと理由があるのですね!

そしてこの水と広い大地で育てられているのが、富山県のブランド豚です。
日本全国に400以上あるといわれるブランド豚ですが、富山県で生産されているブランド豚は総称して「とやまポーク」とよばれています。
県内各地にあるブランド豚肉の産地
とやまポークは6銘柄あり、それぞれが竹酢(ちくさく)や飼料用米を配合した飼料を給与するなど、産地ならではの工夫や生産者独自のアイデアが加えられているそうです。

竹酢は、竹を蒸し焼きにしたときに出る蒸気を冷却してできる液体のことで、殺菌や消毒作用があるとして、古くから日本の生活に取り入れられてきました。
竹酢を飼料に加えることで、豚肉特有の臭みが少なくなり、調理してもアクが出にくくなるんだとか。
そして、富山ポークは県内各地で生産されています。

黒部名水ポーク(黒部市)
ミネラルを豊富に含んだ黒部川の水を飲ませ、竹酢を混ぜた飼料を食べさせることで、うま味成分がほかの豚肉より多く、柔らかくてジューシーになります。
立山ポーク(魚津市)
立山連峰・剱岳から流れ出る天然水で育てられた立山ポーク。しまりがよく、うま味が凝縮した豚肉です。
メルヘンポーク(小矢部市)
名水の郷・富山県小矢部市の良質でおいしい水と、竹酢液・ヨモギ・漢方(ハーブ)などを混ぜたオリジナルのエサで育てられた豚肉です。
たかはたポーク(砺波市)
肉の臭みが少なくさっぱりした脂身の味わいが特徴。独自配合したエサに、大豆やトウモロコシの粉のほか、地元で栽培された米の「てんたかく」を加えることによって、肉の柔らかさやうま味を生み出しているそう。
このほか、おわらクリーンポーク(富山市)と滝寺マーブルポーク(南砺市)があります。
豚肉のおいしさが味わえるおもてなしレシピ
年末年始はなにかと人が集まる機会が多い時期。いつもよりちょっとだけ時間をかけて、豪華に見えるメニューを作ってみませんか? 今回はおもてなしの際にも喜ばれる、豚肉本来のおいしさが堪能できるレシピをご紹介します。
【レシピ1】豚の角煮

お箸でちぎれる豚の角煮はお店でしか食べられないと思っていませんか? 少し時間と手間はかかりますが、5段階に分けて煮込むことで、ほろっとやわらかな角煮を作ることができるんです。煮たあとに粗熱がとれるまでおくことで、肉が煮汁を含み、ジューシーでやわらかくなりますよ。
豚の角煮
材料(作りやすい分量・3〜4人分)
豚バラかたまり肉(350〜400gのもの)…2本
ゆで卵…3〜4個
しょうがの薄切り…4〜5枚
酒…1カップ
しょうゆ…大さじ3
みりん…大さじ4
砂糖…大さじ2
作り方
1.鍋に豚肉とたっぷりの水を入れて火にかける。湯が煮立ち始めて豚肉の表面が白くなり、アクがまとまってきたら、ざるにあけて湯を捨てる。豚肉をさっと水で洗う。

【Point】豚肉は汚れやアクを除くために、初めにゆでこぼす。こうすると臭みが消え、煮るときにアクを取る必要もない。
2.鍋をきれいにして豚肉を入れ、かぶるくらいの水(約6カップ)を入れて火にかける。煮立ったら弱火にし(フツフツする程度)、オーブン用ペーパーで落としぶたをして約90分、竹串がスーッと通るくらいになるまでゆでる。火から下ろし、落としぶたをしたままさめるまでおく(粗熱がとれたら冷蔵庫に入れて一晩おくとよい)。表面に脂が白く固まったら取り除く。

【Point】固まった脂を取り除くことで、しつこさが抑えられ、豚肉のうまみが生きた上品な味わいの角煮に仕上がる。
3.豚肉とゆで汁に分け、豚肉は4cm角くらいに切って鍋に入れる。酒と、豚肉がひたるくらいのゆで汁(約1と1/2カップ)、しょうがを加えて火にかける。煮立ったら弱火にし、オーブン用ペーパーで落としぶたをして約30分煮る。
4.しょうゆ、みりんを加え、オーブン用ペーパーで落としぶたをし、弱火のまま約20分煮る。
5.砂糖と殻をむいたゆで卵を加え、オーブン用ぺーパーで落としぶたをして弱火のまま約10分煮る。落としぶたをはずし、スプーンで煮汁をかけながら、約10分煮る。火を止め、再び落としぶたをして粗熱がとれるまでおく。
【レシピ2】サムギョプサル

専用の調理器具を使わずフライパンでできるサムギョプサルのレシピです。本格的な韓国料理の味が堪能できますよ。サムジャンだれは、市販のものを使ってもOK。
サムギョプサル
材料(2~3人分)
豚バラかたまり肉…400g
白菜キムチ…100g
にんにくの薄切り…1片分
長ねぎのピリ辛あえ
・長ねぎのせん切り…1/2本分
・酢小さじ…1と1/2
・砂糖、しょうゆ…各小さじ1/2
・塩、粉とうがらし…各少々
リーフレタス…6枚
えごまの葉…12枚
ごまだれ
・ごま油…大さじ2
・塩…小さじ1/3
・こしょう…少々
サムジャンだれ
・みそ…大さじ1
・コチュジャン…小さじ1と1/2
・おろししょうが、おろしにんにく…各小さじ1/2
・白すりごま…小さじ1
・ごま油…小さじ1/4
作り方
1.キムチは食べやすい大きさに切る。豚肉は1.5cm厚さに切る。肉の繊維に沿った向きに切ることで、食べたときに肉がやわらかく感じられる。ペーパータオルで、豚肉の水けをしっかり拭き取る。
2.油をひかずにフライパンを温め、豚肉を並べ入れ、キムチとにんにくも入れて弱めの中火で約4分焼く。途中、脂と肉汁が肉から出たら、フライパンをかたむけてキムチとにんにくのほうに流して炒める。ペーパータオルでフライパンの余分な脂を拭き、豚肉の上下を返して2分〜2分30秒焼く。
3.豚肉がこんがりと焼けたら火を止め、トングなどで豚肉をつかみ、キッチンばさみで2cm幅に切り、キムチ、にんにくとともに器に盛る。長ねぎのピリ辛あえ、ごまだれ、サムジャンだれの材料をそれぞれ混ぜて添える。リーフレタスやえごまも別の器に盛って添える。野菜に豚肉をのせ、長ねぎのピリ辛あえや焼いたキムチやにんにく、好みのたれをのせたり、つけたりして、包んで食べる。
【レシピ3】やわらかポークソテー

フライパンで焼くだけ、とあなどるなかれ! 小麦粉をまぶした豚肉がふっくら、やわらかなポークソテーは、これだけで食卓の主役になれる存在感です。
やわらかポークソテー
材料(2人分)
豚ロースとんカツ用肉…2枚
クレソン…適量
・塩、粗びき黒こしょう、小麦粉、サラダ油、バター、しょうゆ
作り方
1.豚肉は包丁の背でたたきのばし、脂と赤身の間の筋に数本切り目を入れ、手で元の大きさに戻す。塩、こしょう各少々をふり、小麦粉を薄くまぶす。
2.フライパンに油大さじ1/2を熱し、1を盛りつけるときに上になる面を下にして入れ、焼く。こんがりと焼き色がつき、上面のまわり1cmくらいが白くなったら上下を返し、1〜2分焼いて器に盛る。
3.フライパンをペーパータオルで拭き、バター10gを溶かし、しょうゆ大さじ1を入れて煮立て、2にかける。クレソンを添える。
豚肉には、その時期にしか食べられないという意味での旬はありません。でも季節によって脂の量に変化があり、冬は脂がのったおいしい豚肉が食べられるとされています
さらに豚肉は、疲労回復・スタミナのビタミンとも呼ばれるビタミンB1の含有量があらゆる食品の中でトップクラス。糖質をエネルギーに変えるのに欠かせない成分でもあるので、豚肉をご飯のお供にするのは理にかなっているとも言えるでしょう。
疲れがたまりやすいこの季節、豚肉をたくさん食べて元気に乗り切りたいですね。
文=山上由利子